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狭い世界の外側と俺たち〜華南〜
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今。
むつ…。
奏一さんに全部話すって言った?
全部って……ゼンブって、全部?
修二と付き合ってるってこと?
セックスしてるってこと?
流石にそれはまずくないか?
華南「全部って、俺達が付き合ってる事?」
言葉を一度飲み込んで、冷静に返すと、むつは湯船を真剣に見つめたまま、落ち着いた様子で話し出す。
むつ「…俺が修二を好きだって事。もし、激怒されて修二に近づくなって言われたら、その時は、お前が修二をそばで支えてやって」
華南「は?!ふざけんな!」
突然投げ出したみたいに言われて、思わず風呂場に響き渡る大声が出た。
むつが、ギロっと睨んで来た。
むつ「話を聞け!」
華南「いや、でも!」
むつの瞳は真剣で、考えて考えての話だっていうのは伝わった、でも…
むつ「修二を百目鬼から守りたいだろ?」
華南「ぅ…それは」
むつ「谷崎から聞いた。華南が俺と修二が連れ込まれたホテルに行ったって。百目鬼をぶっとばすつもりだったろ?」
むつの言葉に口をつぐむ。昨日、修二とむつをマキのマンションに迎えに行く前に、ホテルに行っていたが百目鬼はおらず、代わりに谷崎に見つかった。
むつ「俺も一昨日お前が修二のとこに行ってる間に行ってきたが、ものけの空だった。奏一さんに電話して聞いたら、あのホテルは俺と修二を連れ込むためにその日だけ借りた場所で、奴の宿泊先じゃなかった。それと、奴はあの後すぐ別件でトラブルがあって街から出てったそうだ」
華南「別件のトラブルって…」
むつ「お前を追ってたチンピラのグループが警察に捕まったが、数人逃げたらしい。百目鬼はその逮捕に協力してたらしい」
警察に協力!?あいつヤクザじゃないのか!?あんな強面だし、てっきり…いや…警察と繋がってるヤクザもいるか?
むつ「奏一さんも谷崎も詳しく教えてくれない、俺が百目鬼の件と関係ないから、危ないからで門前払いの蚊帳の外だ!修二の安全がかかってることなんだぞ!俺はバイト決めちまってて、全部投げ出したら、修二は怒るだろうし。でも、このままですませられるか?百目鬼が諦めた保証も無く、経過は奏一さんところで止まってて、何もわからない。俺、〝また〟修二を守れなかったら、自分のを許せねぇよ!百目鬼の野郎と決着を付けてやる」
百目鬼…。
これが、あんたが怒らせた男だ。
華南「でも、それで奏一さんに話して、激怒されて縁を切れって追い出されたら、誰が修二を支えてやる?」
むつ「だから、それを華南に…」
華南「駄目だろ!俺には修二の〝曇った目〟ってやつが分からない。それに、修二を根っこで支えてるのはお前だ!お前がいなくなったら、修二は絶対泣くぞ!」
むつ「いなくなったりしない!俺は絶対説得する。でも、それには時間がかかるし、これ以上情報が入ってこなきゃ、修二を守れない!華南は、修二に何かあったら、あいつが俺たちに言ってくれると思うか?」
そ、それは…。
むつ「百目鬼じゃなかったとしても、奏一さんにバレた時とか、何かヤバイ事が起こった時、真っ先に俺たちに相談してくれると思うか?思わないだろ?だから、お前も1人でホテル行ったり、谷崎に事情を聞こうとした」
確かに、関係を隠している今、谷崎に線引きされ、それ以上聞くなと言われた。
奏一さんが学校に乗り込んできた日も、その前も、むつに言わない事で百目鬼の車に乗ったり。全て、何かを隠そうとする行為が、事態を悪くしている…。
むつ「俺、馬鹿だから、こんなことしか思いつかねぇー。修二を守りたいなら、奏一さんの存在は無視できない。俺、もう奏一さんに会う時間もらう予定」
華南「ぇええ!?」
あまりの展開にザバッと湯船から立ち上がる。
むつは、もともと隠し事に向かない。
修二の秘密を共に黙って抱えようとした保守的な俺と違う。
秘密にせずさらけ出して前に進む方を選ぶ。
でも、今までむつはずっとそうしてきた、そうやって修二を守ってきた。
だからけして、暴走やその場の感情ではないだろう。
しかし、内容が重い。
兄として父のように修二を育ててる奏一さんに、自分の知り合いのしかも男が弟を犯し、守れなかったとショックは計り知れない。
俺たちの話をしたら、また男に手篭めにされてると思われてもおかしくない…、だって、俺たちの始まりを正直に話したら、完全にアウトだろ!?
華南「もう、何か言っちまったのか?」
むつ「まだ。百目鬼と修二の件で話があるとしか言ってない」
呆然と立ち尽くす。
むつの言い分も十分分かる。
でも、奏一さんと修二の関係まで険悪になってしまわないだろうか?
華南「奏一さんと修二の仲が危なくならないか?」
むつ「それは無い」
きっぱり言い切ったむつは湯船から立ち上がり、真っ直ぐ俺を見た。
むつ「あの人は、性癖くらいで偏見持つような小ちゃい人じゃない」
華南「……」
奏一さんは、偉大だ。朱雀を引退した今も、一声で多くの人間が動くほど慕われている。
むつ「…あったまり過ぎたな、傷に良くないから出ようか?」
俺の額を気にしてくれたむつは、湯船から出るように俺の腕を引く。
華南「…むつ、俺が百目鬼のこと知ってたのを気にしてるなら、あれは違う。俺が話さないならむつに百目鬼との関係をバラすって言ったんだ。修二はお前を好きだから、好き過ぎてお前に言えなかったんだ。そばにいて欲しいから…。お前が修二のそばから離れるなんて、修二の中にはあり得ない話だ」
むつ「……離れる気は無い。…少しでも緩めたら、修二は絶対戻ってこない。」
むつの真剣な声に、一番大事なことは見えていると分かり。
引かれてる腕を掴んでむつを抱き込んだ。
華南「むつ、俺も2人を離す気も緩める気もないから…一緒に考えよう」
俺は渦巻く思考をいったん呑み込むみ、腕の中で頷いたむつと、一緒に風呂から出た。
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