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番外編⑩泡になって消える狂愛に口づけを
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...
温かな腕に抱かれて…
優しく頭を撫でられ
その手に擦り寄るように頬を寄せた…
その手はあやすように頬を撫でてくれた
目が覚めたら、マキは広いベッドに全裸で寝ていた。隣には誰もいない…。
露骨すぎるピンクの照明、ここはラブホテルでさっき出来事が夢じゃない事が分かり。夢見心地の幸せな余韻に頬が火照って枕に顔をうずめた。
自分…何やってんだ…
拭いてもらったんだろう、綺麗になってる体は、体中、甘い痺れが残っている。
百目鬼さんの唇…腕…背中…熱い眼差し…
そして…ケモノのように貪ってきた彼の雄雄しいもの…
あの惚れ薬は、いっ時の夢がみれたり、見せてあげたり出来る…
だが、かつて、惚れ薬を飲んだ者同士でセックスしたことなどマキにはない。あれはいわば、両想いのシミレーションだ。
あまりに甘く、あまりに切なくて、心の中は記憶や快感が生々しく残っている。
ドキドキして、もし、起きた時に彼の顔が目の前にあったら、…もし、優しく名前を呼ばれたなら、…想像しただけで胸がドキドキして、好きになってしまいそうだ…。
だって、彼と両想いになったら、あんな風に愛されて、自分がどんな風に彼を愛するのか知ってしまった…。
『俺に溺れろ…』
『マキ、お前を奪うぞ』
『マキ、俺のものになれ』
顔から火が出るような殺し文句だ…
あの低い声であんな風に囁かれて、瞳は愛に飢えてて…、抱きしめてあげたくなる。
思い出すだけで心臓がぎゅぅぅッてなって手足バタバタしちゃう!
かっこいい!可愛い!
可愛い!かっこいい!
ハッ!!
ヤバイ!!もともと可愛いって思ってたからかなりヤラレてる…。惚れ薬恐るべし!
泉が恋人作れって言ったけど…
想像以上でした…
両想いって凄い…
駄目だ…シャワー浴びてこよう…このままじゃマズイ…
百目鬼さんは、修二が好きだし
このままじゃ…
ードキン!
シャワーを浴びようとして顔を上げたら、ベッドのヘリに座り、スーツに着替えてタバコを吸ってる百目鬼の背中を見つけて、心臓が跳ねた。
ヤバイ!ときめいた!
しまった…まだ抜けきってないのかも!
百目鬼「………体は平気か?」
優しい声…
あれ?薬は切れてるはず…
マキ「何ともないよ、一回しかしてないじゃん♪」
あんな強烈なの何度もシたらマジで溺れちゃう。
百目鬼「……お前はいつもこんなことしてるのか…」
それは…冷め切った声だった…
その声を聞いて、全てを悟ったマキは、舞い上がってしまっていたものが地に落ちる。
百目鬼「……シャワー、一人で入れるか?」
背中は、こちらを振り向かない。
百目鬼「悪いが、夕飯は一緒に食えない」
その背中が、彼の複雑な胸中を語っている。
百目鬼「………」
ああ、なんて優しい男だろう…、惚れ薬を飲ませた僕をふざけんなと罵って出て行けばいいのに、彼は、貪るように抱いた僕の体が心配で見捨てて出て行くこともできない。
彼の心は、99%の修二を好きな気持ちと、1%の罪悪感。
僕を好きだと言っていた彼の気持ちは…
もう消えてなくなった。
消えたんだ…
マキ「ふふ♪、百目鬼さんやっさし〜♪僕の体は平気平気♪、百目鬼さんがすっごくほぐしてくれたから、全然大丈夫だったし、激しかったけど愛を感じたよ♪、百目鬼さん両想いの相手とだったら優しく抱けるよ、シミレーションできたでしょ?」
百目鬼「…」
振り向かない背中を見ないように体を起こす。
マキ「百目鬼さんは、相手の感情が見え過ぎちゃうんだね、だから、自分に気持ちが無いとついつい意地悪して求めてもらおうとしちゃうんだね、でも両想いの相手なら意地悪しなくても大丈夫♪、ね♪」
百目鬼「…」
ベッドから降り、お風呂場に向かって歩き、扉の前で立ち止まった。
マキ「百目鬼さんの良さは、絶対伝わるから、次に好きになる人を大切にすればいいよ。それまでは、電話くれればいつでも練習相手になるからさ♪」
顔は見ない…
今見たら…
百目鬼「…」
お互い、背を向けたまま、百目鬼がタバコを吸って吐く音だけが響く。
マキ「シャワーしてる間に帰りなよ♪」
百目鬼「送っていく!」
マキ「あは♪心配しすぎ、僕は、まだ足りないくらいで、今から今晩の枕探しに行くくらい元気だから気にしないで♪」
百目鬼「…」
マキ「それとも、もう一晩愛し合ってみる?僕の体気に入った?修二が好きでも僕とセックス出来たでしょ♪」
振り向きながら、にっこり笑う。
百目鬼は修二の名前に激しく反応して、マキを睨みつける。
百目鬼「…チッ」
そのまま苦々しく舌打ちし、立ち上がり、足早に出て行く。
マキ「またね♪百目鬼さん♪」
ーバタン!!
扉が乱暴に閉ざされ、
マキは壁にもたれかかった。
マキ「………バイバイ」
マキは、シャワーには入らず、服のポケットから携帯を取り出し、電話をかける。
相手は、長いコールのすえに受話器を取った。
泉『マキ?…デート中では?』
マキ「えへへ、泉く〜ん、迎えに来てぇ♪」
泉『…どこにいるんです?』
マキ「えへへ、ラブホテル♪」
泉『……。』
マキ「うんとね、名前はオアシスって名前でぇー、近くに大きい道路があってぇー」
泉『…』
マキ「結構大きいラブホテルだからすぐわかるよ?」
泉『…』
マキ「あれ?…泉、怒ってる?ごめ〜ん忙しいならいい…」
泉『…あなた…バカなんですか?』
マキ「ごめんごめん、怒っちゃ嫌♪」
泉『バカでしょ、…ヘラヘラ笑いながら
泣くな…』
マキ「…あは…はは…ぇへ…泉くん…透視できたっけ?…」
携帯を握りしめ、微笑んだ顔は、涙でいっぱいだった。
溢れて溢れて、とめどなく流れる涙は、激しい痛みで胸を締め付ける。
マキ「あははぁ、失敗しちゃった…テヘ♪」
泉「すぐ行きますから、大人しくしてなさい!」
マキ「はぁ〜い♪いつもありがとう♪」
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ードカッ!!!
百目鬼は、車の中でハンドルを殴りつけた。
百目鬼「くそッ!!……」
突然割り込んできた感情に戸惑いを隠せない。強烈な幸福感の記憶だけが残り、あとは消えてしまった。
それまで自分を支配していた修二を渇望して軋む感情が戻ってきた。
修二が好きだ、修二とああなりたかった。
修二と…
まだ、マキを抱きしめた時の柔らかな感触と満たされた記憶が残ってる。
『僕に、神さんを下さい…』
あのマキはもういない。
マキを想う激情は消えた。
今あるのは修二への気持ち…
マキへの気持ちは消えた
はずなのに……
『僕の体気に入った?修二が好きでも僕とセックス出来たでしょ♪』
ードカッ!
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百目鬼の吸っていた煙草の匂いが部屋に充満している。
涙が溢れて…
止まらない
消えろ……
早く消えろ…
消えるなら、早く…
『マキ…好きだ…』
感触が消えない…
甘い声が囁く…
目頭が熱い…
胸が痛い…
おかしいな…
ふふ、止まんない…
百目鬼さん…
ぅ…
じん…さ…
ツッッ…ーーーーーーーーーー!!!!!!
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