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俺たちの始まり〜修二〜
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聞いても大丈夫かな?
視線の下がったマキの、伏せ目がちな目元、長いまつ毛が女の子みたいに綺麗で、儚く見える。
その瞳が動いて僕を見上げる。目と鼻の先で見るマキの黒い瞳には、コンタクトの薄い輪っかが見えた。それぐらいの至近距離。
綺麗な顔、色白の肌、こんな美人なマキが失恋…、あんな思いって、…ノンケに惚れて振られた?やっぱり男同士だから?難しい…のかな?それもと…
考えても、難解なマキの過去など予想できるわけもない…
それに〝また〟って?今のことだよね?
僕はまず、過去について聞いてみた。
修二「あんなって何があったの?」
マキ「…何がって…、普通だよ、恋して、失恋した…普通だよ…」
線引きされた?踏み込み過ぎ?
でも、聞かれたくないなら、もっと徹底的な言葉を使うだろう。
そう思って様子を見た。
修二「なんか、布団でこんな話し、修学旅行みたいだね。僕はあの時話しに参加できなかったな」
恋愛トークの定番を引き合いに出して、マキの様子を伺う。
マキは、瞳を瞬いた後、クスクス笑った。
マキ「フフッ、僕も参加できなかった」
マキが乗ってきたので、もう一歩踏み込む。
修二「僕は、告白とかこの年までしたことないんだけど。失恋ってマキが告白したの?」
こんなエロいことばかりするマキは、初めての恋で、もっと慣れなくて戸惑ったりしたのかな?マキの好きな人ってどんな人だろう?
マキ「ふふッ、告白はしてない。凄く好きだったから…、あの時は、しがみつくのがやっとで…、マグロだったね…、だから…ダメだったのかも」
修二「何それ」
甘酸っぱい回答かと思いきや、〝マグロ〟なんてセックスの話じゃん…
マキ「仕方ないよ、付き合ってなかった、カキっこの延長だったんだ…。僕で練習して、本命と付き合ったよ」
修二「は!?」
マキ「シッ。むつが起きちゃうよ」
マキに口を押さえられ、むつを見る。
静かな寝息を立て、熟睡中。
僕は小声で言った。
修二「だって、酷い」
マキ「ふふっ、ごめん、間違った言い方した。その人は悪くない。僕が言ったんだ、『練習してみる?』って。僕は修二と違って欲を取った。…気持ちを伝えてダメになるより、体だけでもって…」
修二「…違わないよ。僕も、むつに欲まみれだった…。マキのそれはいつだったの?」
マキ「……小4かな?」
修二「え¨!……、精通してなくない?」
マキ「ふふッ、してない。相手が年上だったからね」
知れば知るほど色々聞きたいことが出てくるけど、きっとあれこれ聞くべきじゃない。
マキ「僕は、好きだった。凄く…」
しみじみ言ったマキは、視線を天井に向けた。カーテンの隙間から漏れる光が、空中に浮いてる誇りをキラキラ光ってるように見せる。
マキ「片思いを知るとさ、片思いしてる人が分かるんだ。…それが自分の好きな人ならなおさら…。好きな人の辛い顔、見たくなかった。だから、幸せになって欲しかった…」
マキの瞳が悲しそうに揺れてる。
今言ってることが真実かは怪しい。
本当は、そんなにあっさりした話しじゃないんじゃないだろうか?
でも、マキの言ったことが本当だとしても、体だけなんて、辛いに決まってる。僕なら耐えられない。
修二「…だから、くっつけちゃうの?」
マキ「…フフッ、万事解決だろ?」
クスクス笑うマキには、またあのヘラヘラした笑みが戻ってしまった。
マキが、片思いの人をくっつけて回るのはここからきてる?
修二「…マキは、それでよかったの?」
マキ「僕…、略奪愛は好きじゃない。それから、同情されるのは嫌い。可哀想だと思われるのはもっと嫌い」
突然飛び出したマキの否定的な言葉。
少し驚いた。
それに言葉の繋がりがおかしい。略奪愛だとすると、もしかして、マキとその人が関係する前に、その人は別の誰かと付き合ってた?もしくは、相手と両思いだとマキは知っていた?
僕が考えてると、その考えを見透かして制するように、マキは少し冷めた目で見上げた。
マキ「修二は自分のことを話してくれた、だから話した。…こんなこと、自分の口から話したのは、修二が初めてだよ…」
「自分の口から」って事は、他にも知ってる人がいて、その人には自分から言ったんじゃないって事?それって泉さん?先生?
マキ「…恋をして、片思いが辛くて、失恋した、誰でも経験することだろ?」
マキが恋して、マキが誘ったみたいに言ったけど…本当は違う?自分の過去が酷いからって、マキも酷い目にあったかもなんて、僕の勘ぐりすぎ?
マキ「片思いは辛い、だから健気に片思いしてる人を見ると協力したくなっちゃう。可能性があるならなおさら…、君たちとかね。僕からしたら、修二が切なげなの丸分かりだし、華南は欲が出まくり、だから勿体無いなって」
話を逸らされた。
でも、ここまできたら、大事なところを聞かないと。
修二「……さっき話しの始めに〝また〟って言ったよね。またって事は、今好きな人がいるんだよね」
マキ「…」
核心に触れた途端マキが黙った。
天井を見ている横顔が強張ってる。
でも、…拒絶はない。
修二「誰かに片思いしてる人を、好きになっちゃったんだね…。あのネックレスは、その人から貰ったものか、その人の持ってたもの…、だよね?」
しかも、肉体関係がある…。
マキから聞いたことと、僕が感じていたことを繋ぎ合わせてでた答え。
きっと間違ってない。
マキ「……それも、終わったよ」
修二「終わった?だからネックレスを外したの?」
マキ「…ううん、本当に壊れたの。でも、丁度よかったんだよ、その人は、もうすぐ幸せになる」
修二「好きな人とくっつくから?」
マキ「ふふ、今回はちょっと違う、その人は失恋した。だから、新しい恋をするところ」
修二「え?…」
新しい恋をするところ?ってことは、フリーじゃないの?なんでマキは諦めるの?
天井を見ていたマキが、僕の方を見た。僕の疑問だらけの瞳に、クスリと笑って言った。
マキ「その人は、僕のことは嫌いだよ。僕みたいなビッチは好きじゃない、もっと可愛い純粋な子が好きなんだ」
修二「…そう、言われたの?」
マキ「ううん、優しいから、そんなこと言わない。でも、分かるよ、好きな人の好みくらい」
修二「……本人から聞かなきゃ本当の事なんて分からないじゃない。マキは可愛いよ、すっごく可愛い、でもさ、マキはさ、本音を隠すでしょ?、マキは、隠してる時より、素直になってる方が可愛いよ。凄く可愛いし、美人だし、その人もマキを好きになると思うよ、むつも言ってたじゃん。素直になれって。ヘラヘラ誤魔化すから誤解されてるんだよ。隠さなかったら、絶対嫌いになんかならない。マキは人の気持ちが分かる優しい心を持ってるじゃん、僕はマキのおかげでむつと華南と付き合えた」
マキはキョンとして瞳を大きくした。
何かを考えてる瞳が揺れて、右に左に揺れて下がっていく。
修二「今のままじゃ、いつまでたっても彼氏出来ないじゃん。その人も振り向いてくれないよ。マキの望む辛くない両思いも、毎日のエッチも、好きだと言ったり言ってもらうことも、いつまでも出来ないよ」
マキ「…エッチは毎日出来るもん」
子供みたいに口籠る。
本命がダメだからって、他でエッチしまくってる時点で、またまだ引きずって諦められてないじゃん…。
修二「マキ…。諦められてないじゃん。マキは、その人のこと、好きなんでしょ?その人に振られた訳じゃない、片思いのままじゃん。僕の片思いは12年かかったけど、実ったよ?マキのおかげで」
マキ「…僕は、待てないよ。可能性も無い。好きな人が、他の人を好きになるのも見たくないし、その人が片思いで辛いのも見てられない、だから…」
修二「マキは、1度も本気でぶつかってない、いつも引き返せる距離で止まって、相手にヘラヘラ笑ってみせる、僕には素直になれって調教してきたくせに」
マキ「ッ、修二は、目の前の幸せを信じなさすぎる」
修二「マキは、目の前のもの見えてると思い込んでる」
マキ「………」
僕に言い返されて、マキはぽかっと口を開けた。
修二「下手に相手のこと分かるからって、相手の気持ちを聞いたわけでもないのに、決めつけて、自分の気持ちも誤魔化して、そんなこと続けても、苦しいだけだよ。後悔しまくりじゃん。〝失恋した〟〝嫌われてる〟から諦めるってんなら、ちゃんと失恋してくれば?」
マキ「…他人事だと思って言うね」
修二「違う。〝後悔して前に進めない〟ってマキの顔に書いてある」
マキ「…は…」
修二「なんだっけ?『大好きだからずっと側にいて下さい』だっけ?僕は死ぬほど怖かった、あんな重い言葉を言わされたんだよ?僕が言わされた言葉は他にもある。どれも僕が必死に隠した言葉だ。諦めるなら、告白くらいして来なよ、調教師様」
マキ「…は、ふはっ、フフフフ」
修二「ちゃんと失恋したら、後悔して泣きそうな顔しなくて済むし、〝僕たち〟が慰めてあげるよ。うまくいったならその人に飛び込めばいい」
マキ「フククッ、修二にそんなこと言われるとは思わなかった。クハハッ」
修二「マキに鍛えられたんだよ」
マキ「ふふ、慰めついでに次の相手も一緒に探してくれる?」
修二「いいよ、どんな人が好み?」
マキ「ふふ、僕と毎日してくれる絶倫さん」
修二「早速可愛くないよマキ」
マキ「ふふ♪ごめん」
マキが、僕の胸に顔を埋めて、ぎゅっと抱き着いてきた。
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