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番外編12ひと夜咲く純白の花の願い
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翌朝6時。
日の入り前の時間に、マキは駅前に来ていた。
人がほとんどいないうちにキーホルダーを探した。
道路、植え込み、物陰、物や塀の上。
どこを探してもキーホルダーは見つからない。
駅前は、4日後に訪れるXmasの装飾が施されていて、街は飾り立てられていた。
空が白み、朝日が見えてくる。
7時が近くなると人通りが増えはじめ、マキは、キーホルダーを探すのを諦めて、百目鬼の事務所に戻った。
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午前8時ごろ、百目鬼が寝室から出てきた。
マキ「おはよう、百目鬼さん」
百目鬼「なんだ、起きてたのか」
僕は、眠れなかった…
百目鬼はシャワーを浴び、スッキリして、台所に立った。
台所からはすぐに甘い匂いがしてきて、台所を覗くと。百目鬼が朝ごはんを作っていた。
大きな体がフライパン持って料理している。
なんとも興味深い光景だ。
マキは、ジッと眺めていたら、大きな欠伸が出た。
百目鬼「デカイ欠伸だな、寝れなかったのか?」
マキ「だって、百目鬼さん一緒に寝てくれないんだもん」
百目鬼「…お前は誰にでもそんなこと言ってベッドに連れ込んでるだろうが、俺はお断りだ…」
冷たい低い声。
反論は出来ない。
昔はそうだったから。
眠らせて貰えるなら誰とでも寝た。
先生と出会ってそういうの辞めたって言ったって、経験人数が変わるわけじゃない。
病気の恐ろしさや危険性を教え込まれ、今は決まった相手としかしないって言っても、そこに愛がある訳じゃないから、そういうの嫌悪する人もいる。
散々セックスしてきて、やっと心が追いついて、セックスってどうゆうとか気付いたところで、〝ビッチ〟の自分を変えることは出来ない。
今更恋したって、心は初めてのことだらけに戸惑って淡い気持ちがあっても、肉欲を知った体は火照るのを止められない。
ビッチが純情ぶりやがってって言われても、反論できない。
心が二度目の恋に焦がれても。
体は3桁の経験に溺れてる。
ただ、世の中、好きな人に初めてを捧げられ、好きな人とだけするばかりじゃない。
性に対する知識がちゃんとつく前に、性欲を覚える子供がいる。オナニーやセックスがどうゆうものなのか知らずに、気持ちいいからする子、無理やりそうゆうのを強要される子。
兄弟がいるから早く知ったとか、イタズラされたとか、自分の経験は、自分にとっての普通のことになる。世の中の普通とズレていたとしても、それが間違いだと知るのは、だいぶ後だ。
僕にとっての普通は、世の中では爛れた汚い経験だ。
それが僕にとっての普通。
性に目覚めたのは小4、精通も恋も知らずにオナニーを覚えた。それが恋に変わった時、初めてをその人にあげたけど…、男同士が悪いことだと知ったのはそのあと。
恋の仕方も、セックスの意味も知らずに、全部経験して、僕の普通は、普通じゃないと知ったのは、彼が彼女と上手くいった時。
それまでは、2人だけの秘密だと、喜んでた。彼の部屋で2人きり、触れ合い、キスしてセックスして、それが普通の幸せだと思ってた。彼に好きな人がいても、振り向いてもらえると信じてた。
普通に恋してると思ってた…。
世の中の普通は、個人の普通とは限らない。
『マキ、そうゆうのを一緒に考えてあげる仕事をしないか?悩んでる子には導き手となって、軽んじてる子にはお仕置きして教え込む。そうゆうお手伝いをしないか?』
そう言った先生の言葉で、僕は誰彼構わず寝るのを辞めた。
特殊な性の悩みを抱えてる子を、ちゃんと真っ直ぐ歩けるようにする仕事。
そのうち恋の相談に乗ったり、相手とくっつけてあげたりしてるうちに、僕の予約は埋まった。メイちゃんもその1人。
僕は早すぎた経験をそうやって生かすことで、体の疼きが自然と減った。
今は、少しはまともになってきたと思う…けど。
僕がどんなに、真っ直ぐ歩いてるつもりでも。世の中からしたら、普通とは程遠いだろう。
純情な修二のような子を好きな百目鬼さんからしたら、僕の事は魔性の遊び人みたいに見えるんだろう。
それは仕方のないことだ…。けど…悲しい。
そういうの受け入れられないって人はいる。
百目鬼さんには、僕のこと理解できないだろう…。
考え方が違う…。仕方のないことだ。
差別して意地悪したりしないだけ、理解がある方だ。
経験人数が多いいと、世の中はそれを遊び人って言う。
全部が全部そうとは限らない…
イタズラから脅されてセックスのを覚えた子を、ヤリチンとかヤリマンとか言う?
それは違う。
不本意で覚えこまされたこと。
それを恐怖に感じる子もいれば、快楽に溺れる子もいる。
でも、どんなに頑張っても、体は元には戻らない、経験は無くならない。
僕は、相手が好きだった。
性を知るには早過ぎたけど、その快楽に溺れた。
セックスの意味を知った今、ヤリまくってる…。だから、今となってはただの〝ビッチ〟だ。
過去は別としても、今がこんなんじゃ言い訳は無い。僕は、快楽に溺れてる。人肌が恋しい…。
でも、ちゃんと知識があったら、こんな結果にはならなかった…、と思う。
言い訳だと言われるかも知れない。
でも、せめて…、性を知る前に、恋がしたかった…。
こんな淫乱に目をつけられて…百目鬼さんも迷惑だよね…。
でも、あんなに優しくされたことなくて、あんなに誰かを好きだと狂愛した人見るの初めてで、羨ましいと思ってしまった。
百目鬼さんにとっては迷惑な話しだろう。
でも、あと少しだけ、百目鬼さんが元気になるように協力するし、交換条件だもんね。後6日だもんね。
マキ「今作ってるのって、なーに?」
百目鬼「フレンチトーストだ、知らないのか?」
マキ「コンビニのと違う」
百目鬼「これが本物だ」
瞳を瞬いて、ジッと見つめる。
初めて生を見た。
黄色いパンがツヤツヤキラキラして見えた。
百目鬼「喉に詰まらせないで食えよ」
コップに注いだ牛乳をそばに置かれた。
…本当に面倒見良すぎ…。
ドキドキするからやめてほしい。
フォークに刺してかじったら少し熱かった。
マキ「はふ、…ん、んーーー!!」
熱いけど、口に入れた瞬間甘みが広がる。何コレ!コンビニのと全然違う!
マキ「んー。ほっぺた落ちう…」
マキは思わずほっぺたを押さえて、とろけそうな幸せなそうな顔で笑顔になる。
百目鬼「…、本当に甘いの好きだな…」
そう言って、少し口角が上がった百目鬼も、フレンチトーストを口にした。
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杏子「おはようございます」
檸檬「おはよーございまーす!」
9時半になり、事務所には社員の杏子と檸檬が出勤してきた。
百目鬼「矢田は?」
杏子「…私たちより先に出たんですが…」
宇治原杏子(うじはらあんず)
黒髪ボブにメガネで長身の彼女は、とても仕事ができそうなパリッとした印象の女性。
檸檬「なんだよ、またトラブル?矢田ちゃん1時間近く早く出たよ」
宇治原檸檬(うじはられもん)
茶髪に少しウエーブをかけた、今時男子の青年。明るく、印象的には軽そうに見えるが、器用なしっかり者だ。
檸檬「ってか、百目鬼さん、そちらの美人さんどなた?」
百目鬼「は?」
百目鬼が振り返ると、事務所と自宅を繋ぐ内階段の扉の前に、女装してるマキがミケを膝に乗せ座っていた。
百目鬼「おい、降りてくるな」
マキ「暇なんだもん♪」
マキが喋ると、杏子と檸檬が目を見開く。
檸檬「えッ!?男?」
マキ「初めまして、マキです」
マキは檸檬を眺めて、あの人がメイちゃんの想い人かな?と観察中。
百目鬼は、どっと疲れたように項垂れて頭を抱え、事の成り行きを2人に説明した。
2人は百目鬼さんがゲイだと知っていて、矢田に秘密なのも承諾している。
檸檬「ふーん。変な奴」
百目鬼「一週間だから、お前らも協力してくれ、こいつは女だって矢田に思わせたい」
檸檬「まぁ、それは簡単だと思うぜ、だって喋んなかったら、わかんなかったもん」
杏子「ええ」
マキ「一週間よろしくお願いします♪」
「よろしく」って軽く返してきた2人。
その時、外で子供の泣き叫ぶ声が聞こえた。
百目鬼が窓から外を見る。
百目鬼「あの馬鹿」
どうやら原因は矢田のようだった。
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