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番外編14ひと夜咲く純白の花の願い
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ードン!
大きな音がして屋根が軋んだ。
マキは、猫を抱いたまま尻餅をつき、斜めになって勢いでズルリと滑る。
右足が屋根から溢れた状態で止まった。
ギシギシと軋んだ屋根は、今にも抜けそうだ。
心臓がバクバクと派手に鳴っている。
ビッ、ビックリしたぁー…。
落ちかけたマキは、冷や汗をが滲む。
檸檬「おい!無事か!?」
下からマキを心配する檸檬の声が飛んできた。下からではマキの足しか見えず、マキが無事か姿が確認できない。
マキはそっと起き上がり、屋根から顔をのぞかせ手を振った。
マキ「ゴメンなさ〜い、滑っちゃったぁ♪」
檸檬「ビックリさせんなよ!」
檸檬が怒鳴ってる。しかし、百目鬼の姿が見えなかった。
あれ?百目鬼さんがいない…。
すると、怖くて低い声が、マキの真下から聞こえてきた。
百目鬼「おい、降りろ」
あっ、もしかして受け止めてくれようとしたのかな?
トクン…、小さく胸が鳴る。
しかし…、百目鬼の怒りの眼光は鋭くマキを見上げてる。
あは〜♪完全にご立腹だよ。超怖いんですけどぉ。めちゃめちゃ睨んでるよ…。
マキは和ませるつもりでへらっと笑う。
マキ「あはっ、ゴメンなさい。大丈夫だから、そこどいて下さい」
百目鬼「黙れクソ野郎、そのまま降りてこい、俺が受け止めてやる。俺以外のとこに足ついたら折檻してやるから覚悟しろ」
ヤクザ並みの睨みに、マキは、渋々百目鬼の指示に従い、そのまま猫を片手で抱いて、屋根にぶら下がり、百目鬼にキャッチしてもらった。
マキが百目鬼の腕の中に収まると、百目鬼はギロッとマキを睨みつけた。
百目鬼「アホ!」
マキ「…へへッ、失敗しちゃった♪」
百目鬼の腕の中でペロッと舌を出しておどけると、百目鬼に一層怖い顔で睨まれた。
檸檬「流石、百目鬼さん」
琢磨「カッコイイ」
琢磨の猫のコロは、無事保護された。
若干の衰弱はあったが、足の怪我もたいしたことなく済んだ。
別れ際、琢磨は百目鬼をカッコイイ鬼だとはしゃいでいた。
そして、何故か、あの時の僕が足を滑らせたんじゃないと、百目鬼さんにはバレていたみたいで。百目鬼さんの怒りは、晩ご飯に現れました。
本日のご飯はレバニラ炒め、ひじきの煮物、ほうれん草の味噌汁。
マキ「百目鬼さんて、なんでも作れるんだね♪」
百目鬼「ひじきの煮物は買ってきたもんだ」
僕が貧血になったからってこの献立、百目鬼さん本当に面倒見良すぎ。
よく考えたら、僕は昨日眠れなかったし、その前は、お昼寝合わせても3時間くらい、その前も夜更かししてたから、単純に寝不足。
申し訳なく思いつつ、目の前のホコホコの料理に、グゥーってお腹が鳴った。
百目鬼さんが席に着くのを待って、一緒に手を合わせる。
マキ「いただきます」
百目鬼「いただきます」
ん〜♪レバニラ美味い♪
マキ「百目鬼さんて、コックのバイトでもしてたの?」
百目鬼「…実家が定食屋だった」
僕の予想では「なんでもいいだろう」って返されると思ってたけど…ちゃんと答えてくれた。もしかして他の質問も答えてくれる?
マキ「百目鬼さんて、兄弟いっぱいいる?」
百目鬼「ああ、7人いる」
マキ「やっぱり♪超面倒見いいもんね」
百目鬼「ああ、甥っ子と姪っ子もいるぞ、だからお前みたいな〝幼児〟の扱いは慣れてる」
マキ「バブゥー」
ふはッ。甥っ子と姪っ子?百目鬼さんが幼児に囲まれてる姿とか斬新。
そのイカツイ顔で泣かしたり、その大きな手で子供の頭を撫でたりするんだろうな…
ふふふ。
また一つ、百目鬼さんの新しい一面が見れた。
そして、夕食が終わると百目鬼はまたマキをお風呂に入れて洗い、出てきて頭を拭き、ドライヤーで髪を乾かしてる。マキは気持ちよさそうに目を瞑りその大きな手を堪能した。
百目鬼さん、こんなに優しいのに、両思いにならないなんて…勿体無いな…。
修二はどうして百目鬼さんを好きにならなかったのかな?むつが好きだって言っても、ずっとずっと片思いだったんだよ?
まぁ、修二の純粋な心には、初っ端の強姦が効いたんだろうな…。出だしさえ間違わなきゃ、今頃修二と付き合えてたかもしれないのに………。
いや、無理か…修二の頑固さは筋金入りだろうし、たとえ強姦が無く、僕と出会ってなかったとしても、高三になって華南がむつを好きだと自覚するのは時間の問題だっただろう。そしたら、自然と歯車が動き出してたろうし…。
百目鬼さんとの再会で、どのみち過去がむつと華南にバレてたろう…。
結局どう転んでも、百目鬼さんは修二とは結ばれなかったんだな…
恋心って難しいよな…。
みんな幸せにはならない。
忘れたつもりでも、簡単に再熱する。
百目鬼さんが修二と再会して諦めきれない気持ちに火がついたように…。
百目鬼さん、早く好きな人捕まえちゃえばいいのに。そしたら、どんな相手でも僕が調教してあげるのに…。
だって昼間の百目鬼さんは凄く魅力的だし、夜の猛獣モードさえ制御出来れば、きっと、幸せに……
幸せに…なれる。
マキ「今日は雪哉さん来る?」
百目鬼「今日は断った」
マキ「えー、ケーキ楽しみだったのにぃ…」
マキがしょぼんとすると、何故か睨まれた。
せっかく2人をくっつけようと思ったのに。
マキは、寝るために、昨日と同じようにソファーに横になり、毛布にくるまっていた。
ガチャっと音がして、お風呂から上がった百目鬼がリビングに入ってきた。
百目鬼「おい」
ぶっきらぼうに呼ばれて顔を上げる、パジャマ姿の百目鬼さんが目に入った。
百目鬼「眠れないのか?」
マキ「あは♪ぜーんぜん♪」
おちゃらけて言うと、百目鬼はマキを睨みつける。
百目鬼「腕枕じゃないと寝れないのか?」
その怒り混じりの真剣な百目鬼の瞳。
おちゃらけていたマキはへらっと笑う。
マキ「せめて隣で添い寝させてくれれば寝れるんだけど…」
百目鬼「…ったく…色狂いが…」
うん、そのとおり。
マキはおかしそうに笑う。
マキ「…あは、大人しくソファーで寝るからぁ、怒らないでよぉ…」
ヘラヘラ笑うマキに百目鬼の眉間のシワが濃くなった。
百目鬼「ハァー…」
大きなため息は、呆れたように吐き出され。
百目鬼はマキをジロッと睨む。
百目鬼「……………来い」
大きな手が、マキの腕を掴んでソファーからグイッと引き起こした。
え?
何?
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