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番外編24ひと夜咲く純白の花の願い
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深夜23時。
百目鬼さんの熱が39度5分を超えた。
相当苦しいようで話しかけても反応が悪い。
僕は堪り兼ねて先生に電話した。先生はすぐに車で来てくれるって言ってくれた。
検査の結果インフルエンザで、薬もだしてくれたので、直ぐに飲ませた。
先生は檸檬さんも見てくれて、檸檬さんもインフルエンザだった。
僕は明日帰る予定だけど、みんなが心配で…
檸檬さんと矢田さんのところには杏子さんがいるから今の所安心なんだけど。
百目鬼さんにはいない。
百目鬼さんを1人置いては行けなかった。
先生に残りたいとお願いしたら少し渋い顔。
先生は毎年、年末年始に田舎の母親のところに帰る。僕も連れてってもらってたんだけど、僕がここに残ると、先生は1人で田舎に行ってしまう。百目鬼さんが元気になって僕が帰ることになっても、家には先生がいない。寮に帰れば1人じゃないけど、同室のつよしも頼りになる泉も帰省している。
それでも残るのか先生に聞かれた。
マキ「…残りたい」
僕の答えに、先生は仕方ないと言いたげな表情で笑う。
年末に入ってた僕の仕事の予約を、年始にずらしてもらうよう、お客と交渉してくれ、無駄遣いしない約束で、預けていたカードを貰った。
先生はまだ明日は自宅にいるから困ったら呼びなさいと言って帰っていった。
外は、雪が降り始めていた。
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クリスマスの朝。
雪はチラチラ降っていて、積もり始めていた。
百目鬼さんは熱が下がらず、苦しそうで。
杏子さんに連絡したら、檸檬さんも高熱が酷い。矢田さんは熱があるのに元気らしい…。
25日は百目鬼事務所は臨時休業。
パーティーも中止。
とんだクリスマスになった。
昨日百目鬼さんには、先生が来たなら帰れって苦しそうに言われたけど、「まだ、痣消えてないもんね」と、粘った。
先生も、マキをしばらく置いてくから、看病してもらいなさいよ、って百目鬼さんに言ってくれ、百目鬼さんは動けないので反論の余地はなかった。
朝も昼もレトルトのおかゆを食べさせたけど、半分も食べない。
高熱で関節が痛むらしく、ずっと唸ってて痛々しかった。
僕にできるのは、レトルトのおかゆを食べさせ、薬を飲ませ、汗を拭いてあげて側にいる事だけ。
料理…、修二に習っておけばよかったなぁ。
そろそろ夕食のおかゆを作ろうと、寝室を離れた時だ。
ーピンポーン♪
とても頼もしいチャイムが鳴った。
玄関に駆けつけ、ドアを開けるとそこには、走ってきたのか額に汗が滲む雪哉さんがいた。
雪哉「お待たせー」
マキ「雪哉さん!待ってました♪」
昨日。雪哉さんに、百目鬼さんがインフルエンザの疑いがあると伝えた。
ケーキ屋で働く雪哉さんは25日までとても忙しい。そんなの雪哉さんに移しては悪い。
雪哉さんはインフルエンザの予防を受けていて、26日が休みだから25日の仕事終わりから来てくれると約束してた。
雪哉さんは百目鬼さんのお粥と、僕の晩御飯をパッと魔法のように可憐に作る。
百目鬼さんの大きい具材の男の料理って感じのご飯と違い、雪哉さんのは柔らかな家庭的な感じがする。
こんな風に料理出来たら、いざと言う時胃袋を掴めるんだろうな…。
今後の為にも修二になんか習おうかな?
僕がリビングでご飯が食べ終わったのと同じタイミングで、雪哉さんが百目鬼さんのいる寝室から出てきた。
お粥の入っていた器は空っぽになってた。
雪哉「マキ様昨日は大変だったね。ケーキ持ってきたから、後でデザートに食べよう。今晩は俺が居るから、神の事は任せて休んでて」
柔らかく微笑む雪哉さん。
こんな風に百目鬼さんのこと親身になるのだから好意的ではあると思う。
ただ、恋い焦がれる感じでは無いように思う。雪哉さんは、百目鬼さんをどう思ってるんだろう?
マキ「あの…雪哉さんは百目鬼さんと付き合わないんですか?」
雪哉「へ!?」
ストレートな質問に、持っていたお盆がシンクに転げ落ちる。
雪哉「え?ぁ…それってマキ様から見て俺たちが付き合った方が良いとお告げ的な?」
マキ「ん〜、単純な疑問?見た感じ知り合って長そうだし、だいぶお互いのこと良く分かってますよね?」
雪哉「まぁ…長いかな…、お互い売れ残ったら貰って上げても良いって話しはお酒の席ではあるけど…」
マキ「けど?」
雪哉「俺はそれなりのマゾでね、虐められて興奮するの、ちょっと度がいってるから中々相手に恵まれなくてね。ダメなんだよね、優しい人を好きになっちゃうから、その人からしたら、好きなのに虐めるのって理解できないみたい。性的不一致?
神と知り合った時顔はタイプじゃないけど、良いなって思ったんだけど、神は、サドなのにサドでありたくない人だから…。前はそれでも制御効かなくていい関係だったけど、去年あたりからSEXのやり方変わったんだよね。…変わろうと頑張ってた…。俺的には残念だけど、神にとってはいい事だよね。多分、原因はアレだろうけど…。神は、忘れられない人が居るし…」
……修二のこと…
まだ整理が付かないんだ…
雪哉「神は、何も言わないから、詳しくは知らないけど。自分をいい方向に変えるような人との出会いは素敵だよね」
…。
マキ「雪哉さんは百目鬼さんが好き?」
雪哉「ん〜、好きって言うか…大事な人?」
大事な…人…
雪哉「お互い辛い時期を知ってるし、エッチもしてるし、馬も合うし、人としては大好きだし。幸せになってほしいって思ってる。将来売れ残って、気持ちもお互いを見れるようになるなら、その時付き合っても良いかなって…。それくらいは好きだな。だから、今は無いかな?10年後?」
マキ「雪哉さんは、とても素敵な方だから、10年もいらないんじゃないですか?」
雪哉「ぇえ!マキ様の方が素敵ですよ!何十人もの人がそう思ってますよ。」
マキ「そんなことないですよ、雪哉さんなら、直ぐに幸せになれますよ」
雪哉「ぎゃっ!マキ様にそんな事言われたら、幸せになり過ぎてしまいそう!」
料理上手で。
お菓子の甘い匂い。
癒し系の優しいし彼。
そんな風に人を癒せる人間になりたかった。
雪哉さんのように…
メイちゃんのように…
修二みたいに、純粋な人間に…なりたかった…。
僕には、一生かかってもそんな美しい人間になれない。
みんな早く幸せになってほしい。
みんなみんな幸せになれるなら…
いつか…
百目鬼さんは雪哉さんの事どう思ってるのかな?
まだ、修二を忘れられないのかな?
その日の夜。
僕はソファーで横になる。
雪哉さんと百目鬼さんの2人っきりの寝室に背を向けて、長い長い夜に、力一杯瞼を閉じて息を殺した。
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