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番外編52ひと夜咲く純白の花の願い
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俺と帰る?!
帰るって、もしかして解散って意味じゃなくて、百目鬼さんの家にってこと?!
よく見ると、百目鬼さんは更衣室にあるはずの僕の荷物と着替えを持ってる。
は?!意味わかんない!!
僕のこと避けてたじゃん!!
百目鬼さんは僕の返事も聞かずに強引に引っ張るから、爪が腕に食い込んで痛い。
マキ「痛ッ!痛いよ百目鬼さん!」
百目鬼「うっさい黙れ!」
抵抗する僕に、全く聞く耳を持たない。
賢史さんは賢史さんで、百目鬼さんの行動に驚いたのか唖然と眺めて完全に毒気を削がれてた。
ほら!賢史さん!しっかりしてよ!今でしょ!今仕掛ける時でしょ!「そいつは誰にでも股開く淫乱野郎だ!」とか「こいつさっきまでホテルでヤリまくった」とか、今言う所でしょ?賢史さんてば!!
僕の心の声は賢史さんに届いていた。
しかし、賢史さんには百目鬼さんの行動が理解できず、さらには散々酷いことをした自分に、僕が〝なんとかしろ!〟的な視線を向けてくるのも意味が分からないって開いた口が塞がらない。
僕はお店の中を引き摺られるように歩かされ、入り口で菫ママとすれ違う、助けを求めるように目で訴えたが、菫ママはニコニコしながら言った。
菫「神ちゃんちょっと酔ったみたいだからマキちゃんが介抱してあげてね」
マキ「はぇ?や、無理!僕帰る!」
菫「夜の女の子の一人歩きは〝めっ〟よ、危ないわ」
僕は男だ!!
マキ「いや!タクシー拾うし!」
僕の抵抗では、百目鬼さんの力の前で全く意味がないくらい、その力の差は歴然で。百目鬼さんは酔った低い低い声で僕を叱る。
百目鬼「家に服が置いてあるだろ!」
マキ「そんなの捨ててよ!」
百目鬼「うっさい!自分でやれ!とにかく病み上がりの俺を走り回らせたんだ、責任取れ!」
はぁあ?!それズルくない!?それ言われたら僕はどうすればいいの?!
避けてたの百目鬼さんじゃん!
意味わかんない意味わかんないよ!!
マキ「百目鬼さん酔ってるでしょ!!」
百目鬼「酔ってねぇ!!」
それ!酔ってる人の言い訳だから!!
もぉー!絶対酔ってるよ!!明日覚えてないパターンだよ!!僕を連れて帰って後悔するの百目鬼さんだから!!
マキ「分かった!分かったから手を離して!痛いよ百目鬼さん!」
百目鬼「うっさい!離すわけねぇだろ黙ってついて来い!」
マキ「は?痛っ!痛いから!百目鬼さん!百目鬼さんってばぁ!!」
ーーバタンッ!!
マキの連れ去られた店の入り口を、賢史が唖然と眺める。
そんな賢史の肩を、菫ママはポンポンと慰めるように叩いた。
菫ママは。賢史の考えやマキとの間の事情は全く知らないが。賢史が、マキを百目鬼から遠ざけようとしてるのには気づいていた。
菫ママは、悟りを開いた人のように余裕のある微笑みを浮かべて首を振る。
菫「賢史ちゃん、神に見られてんの分かっててワザとマキちゃんにちょっかい出したでしょ。でもね賢史ちゃん、あんたのやった事は逆効果なのよ♪」
賢史「…マジかよ…」
********************
百目鬼さんに引き摺られるように連れてこられた筈なのに、途中からは僕が百目鬼のさんを引っ張って歩く。何だか具合が悪いらしく、歩くペースがどんどん落ちて、僕が水を買って来ようか?って言っても、「置いていくつもりか!離さねぇーぞ」ってゴネるばかり。さっきの勇ましいライオンは何処へやら…
この分なら、家に送って百目鬼さんを寝かしつければ帰れそう。
事務所の3階の自宅玄関になんとかたどり着き、百目鬼さんは玄関をくぐるなり僕を道連れに倒れこんだ。
百目鬼「うぅ…気持ち悪りぃ…」
マキ「大丈夫?百目鬼さん…」
背中をさすってあげてから、水を持ってこようと立ち上がるけど、百目鬼さんの手が腕から離れない。
マキ「水持ってくるだけだよ」
百目鬼「うっさい!俺も行く」
もう我儘。子供なんだから…
冷蔵庫まで僕の後ろにくっついて歩く。
もう…、ウイスキーなんか飲むからじゃんか…賢史さんと二人で1本空にするって馬鹿じゃないの?
水を取ろうと冷蔵庫を開けたら、中には食材がいっぱい入ってた。
あっ…。
お皿に綺麗に盛り付けられてラップしてあるサラダ…。
小さなお鍋に細かい野菜が入ったスープ。
百目鬼さんが僕に作った夕飯だ…。
…どうしよう…嬉しい…。
僕が料理を目にして見入っていると、百目鬼さんの手が冷蔵庫の中のビールを手に取った。
マキ「あっ!百目鬼さん!もうお酒やめなよ!」
百目鬼「うっさい!せっかく作ったのに帰ってこねぇーし」
マキ「ご、ごめん」
百目鬼「それだけじゃねぇーからな!釜ん中オムライスのご飯入ってんだぞ!」
言われてお釜を覗くと、ケチャップで炒められたご飯が入っていた。
百目鬼「お子様はそうゆうの好きだろ」
マキ「…ありがとう」
百目鬼「ありがとうって、まだ食ってねぇだろ」
ビールを煽りながら、ブツブツ言う百目鬼さんは、僕の方を睨んでパジャマを投げつけてきた。
百目鬼「サッサと着替えろ、気色悪い」
そう言って寝室へ入って行く。
僕はパジャマを見つめながら心の中で叫んだ。
は?マジで?!
パジャマに着替えろってこと?泊める気?
襲うよって言ったの忘れたの?
酔っ払って忘れちゃったのかも…。
もう…何がしたいのかさっぱりわからない。
こんなとこサッサと出て…
百目鬼「オイッ!」
マキ「はい!」
寝室に引っ込んだと思った百目鬼さんが、寝室から顔を出してこっちを睨んでる。
百目鬼「逃げたら縛り付けるからな」
マキ「………。百目鬼さん、僕になんか話しあるの?」
百目鬼「…………そんなもんない」
そう吐き捨てて、また寝室に引っ込んだ。
話しが無い?
無いなら何で?
酔っ払ってるから忘れてる?
いやいや、だとしても…
…………………………………。
百目鬼「おい!」
考えていたら、寝室からまた不機嫌な声が飛んできた。
百目鬼「寝るぞ!早く来い!」
………。
早く来い?来いって…、まさかベッドで一緒に寝るつもり??
嘘でしょ??
呆れて言葉も出ない。
百目鬼さんは何考えてるんだ?
それとも酔って訳わかんなくなってる?
もしかして今僕が襲っても、百目鬼さん簡単に僕に襲われちゃうんじゃないの?
訳のわからない百目鬼さんに、僕は混乱しながら、早く寝かしちゃえば良いんだと思い、とりあえずパジャマに着替えて寝室に。
中にはベッドに腰掛けて足を伸ばし、ビールを煽る百目鬼さん。僕はそっと隣に入り込み、ちょっと百目鬼さんと間を空けて横になった。
それは、僕なりの配慮だったのに…。
百目鬼「チッ」
苛立って舌打ちした百目鬼さんは、なんと僕に覆いかぶさってきた。
マキ「…あの…百目鬼さん?…酔ってるでしょ…」
百目鬼「酔ってねぇよ」
だから…
それ、酔ってる人のセリフだから!
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