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番外編82ひと夜咲く純白の花の願い
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あれからマキとは少し話をするようになった。
ほとんどふざけるが、でも、マキの鼓動はいつも早くて……
一緒に夕飯を食べ。
一緒に風呂に入り。
腕枕で寝るようになった。
マキ「ふふ、百目鬼さんて体温高いね」
百目鬼「おまえが低いんだよ」
マキ「えっそう?いつも百目鬼さん僕の中は熱いって言うじゃん♪」
百目鬼「バッ!お前は何でも〝そっち〟に持ってくな!」
マキ「ふふ、百目鬼さんの心臓の音早くなった♪」
百目鬼「お前だって早いじゃないか」
マキ「うふふふふ♪だって緊張するもん♪」
百目鬼「緊張してるようには見えないが…」
マキ「してるしてる♪今からどんなプレイしようかなぁって♪」
百目鬼「お前はそれしか頭にないのか」
マキ「他?他にもあるよ、頭の中は常に色々考えてる♪」
百目鬼「例えば?」
マキ「たとえば、お腹すいてきたなぁとか♪」
百目鬼「おい…」
マキ「百目鬼さんは僕の好きそうなもの作ってくれるけど、百目鬼さんは何が好きなのかなぁとか、百目鬼さんは甘いの好きみたいだけど、何が一番好きかなぁとか…」
百目鬼「…」
マキ「あは♪なんちゃってぇ〜♪」
そう言って、瞳は自信なさげに揺れる。
マキは、やはり可愛くて困る………。
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矢田「お願いしますマキさん!どうか是非ウチの事務所に顔を出して下さい!!」
矢田の見事な土下座。
これは毎日行われている。
マキの家に俺が通って3日目の12月31日朝。
俺を迎えに来た矢田は今日も見事な土下座をする。
矢田「琢磨くんが毎日来てて、マキさんに会いたいと騒いでまして…。和菓子屋の梅さんも、駄菓子屋のさきさんも、焼き鳥屋の大将も、菫ママも皆んな『マキちゃんは?』って心配されてまして!どうかまた!事務所に来ていただけませんか!」
矢田の必死な訴えだが、毎日聞いてると何だかいらない事をつっこみたくなる。
みんな食いもん屋じゃねぇか…。
マキ「ごめんね♪矢田さん。僕今外出禁止なんだぁ♪全然たいしたことないけど怪我もしてるしぃ♪ごめんねぇ♪」
矢田「お怒りはごもっとも!俺のこと殴っていいんで、せめて琢磨くんに顔見せてあげてください!お願いしやす!」
全く噛み合わないやりとりも、毎度のこと。
百目鬼「矢田、もう行くぞ」
矢田「は、はい!」
こうして俺が声をかけるまで矢田の土下座は続く。マキは怒ってるんじゃなく、本当に外出禁止なのだが、矢田には伝わらない。
百目鬼「マキ、今晩は菫のところで年越しのカウントダウンやるからお前も来るか?迎えに来るぞ」
マキ「ううん、行かない」
百目鬼「先生様には俺が言っといてやる」
マキ「百目鬼さん年越しくらいのんびりしたら?僕はお家で寝てるからいいよ、この3日寝不足だし♪♪」
ニコッと満面の笑みを浮かべられ、言葉に詰まる。マキの家にいるこの3日、俺達は毎晩…………。
百目鬼「そ、そうか」
矢田の前なのでこれ以上追求せず、「いってらっしゃい」とニコニコ手を振るマキに「行ってくる」と言って別れた。
マキの家に通って3日。
マキについて分かったことは、とんでもないエロガキだってことだ。
素直になれと言った俺が悪いのか…、マキは兎に角隙あらばベタベタとしてきて誘ってくるようになった。風呂に入るのを手伝ってやると左手には絶対触らせないくせに、他を触らせて俺を煽ってセックスに持ち込む。女豹のようにしなやかで妖艶に、いつの間にか俺に跨がり、俺のタガを外す。
とんでもない魔性っぷりだ。
マキ『どうめきさぁん♪……』
毎度煽られる俺も俺だが、マキは自分の魅せ方を知ってるし、俺の弱いところも巧みに探し出し、一度見つけたらそこを外さない。
〝調教師〟とはよく言ったもんだ…。
そっちに関してはやはり積極的で、素直に強請る。
しかし、普段の方は相変わらず進歩しない。
ヘラヘラしてるし、何でも笑って誤魔化そうとする。修二もそうだったが、修二は意外に顔に出る。笑った顔が仮面みたいにいつも同じだから、本心じゃないと分かった。
しかし、このマキというガキは、よく見てないと分からない。くるくる変わる表情の中に紛れる嘘の笑顔。
この3日、マキについて分かったのはまだ少ない。
朝が弱いって事。
甘いものが好きで食欲旺盛。
構われたり面倒見られるのは好きだが、心配される事に拒否反応を示す事。
海の風景画が好きな事。とくにラ◯センのファンだって事。
寂しがりやな事。俺の家にいる時は下が事務所だったから気づかなかったが、マキの家から出勤しようとすると瞳が陰る。
過去や家族の話しは言葉を濁す事。
唯一聞いたのは、留学経験があり、ひとつダブってるから、本当は修二と同い年だという事。
来年大学に行こうとしてる事。
修二の住んでるマンションの隣の部屋を狙ってる事。
俺はなるべくマキと話しをした。
マキも努力してるようだったが、ハッキリしてきたのは…
マキの中に触れられない場所がある事…
それがどんどん形を帯びていく…
やっと一歩進めたと思ったが、見えてきたのはわずかな真実と、マキの中にある大きなパンドラの箱の存在。
人が生きてたら一つ二つ秘密があるのは当然だ。俺も人に言えない事をしてきた。いちいち詮索するものじゃない、だが…、俺は、それが気になって仕方ないし、相手の全てを俺のものにしたい…
全てが手に入らないと歪みが生まれ…
独占欲が暴走する…
マキは、変わらなきゃいけないと言っていたが…、パンドラの箱に俺を近づかせない…。仕方のない事だが…
このままなら…
俺は、マキを受け入れる事は出来ない…
このままなら…
俺はマキを食い殺してしまう…
俺が初めに感じたマキからの危険臭。
賢史の言ったマキの危険性。
先生様が言っていた。「マキの面倒を見るのか、見ないのか」
その意味がようやく解りかけてきた。
だが、一つ言えるのは、マキにどんな過去があろうと、強姦と監禁の過去を持つ俺がそうそうの事じゃ驚かないし、どうとは思わない…。
それにマキは…俺を導こうとしてくれた奴だ…。
その恩を仇で返すような事はしない。
一体何を抱えてるのか…、マキが時々異常に大人びているのはそのせいなのか?
先生様か、水森泉に聞けば分かるだろうか?
その日は、いよいよ始まる梅さんの孫の救出の最終確認で、賢史とその他内通者と作戦会議をして解散。
俺は、もう一つの重大な約束へ足を運んだ。
場所は相手の兄が指定した場所。
ガラス張りの外からよく見える窓際の席。
店の出口側を相手に譲る事。
時間は2時間。
相手に触れない事の以上が条件。
そして、店には俺が先に入り、絶対に席から立たない事。後から来る人物が帰るまで、俺は動かないと約束していた。
ーカラン♪
1人の人物が店に入り、その人物が百目鬼の名前を呼んだ。
修二「百目鬼さん、お待たせしました」
爽やかな笑顔で入ってきた修二は、何の躊躇もなく、百目鬼の向かいの席に座った。
百目鬼「修二、悪かったな…呼び出したりして…。1人で来たのか?」
修二「んー」
少し困った表情の修二は、店の窓ガラスの外を指差す。
そこにはこちらを睨むむつと。百目鬼と目が合って会釈した華南の姿があった。
修二「ごめんね百目鬼さん」
百目鬼「いや、俺はてっきり同席すると乗り込んで来ると…」
修二「させないよ。百目鬼さんが話しづらくなっちゃうでしょ?」
マキの言った通りだった。
凛とした表情の修二は、以前と違ってこちらを警戒したり、どこか不安げに2人や奏一に助けを求めるような怯えた表情の欠片もない。
百目鬼と普通に話せてた中学生の時の修二…、
いや、今の方がとっても綺麗に見える。
これは、むつと華南が修二をこういう風に笑えるようにした結果だ…。
俺は、一度もこんな顔させてやれなかった。
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