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俺たちのバランス〜むつ〜
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そんな意味で言ったんじゃない…。
言葉は確かに言ったけど、意味がまるで違ってる。
そもそも慰めるなんて、そんな面倒なこと普段しない。俺は、幼馴染に失恋した美樹を、修二に重ねてた…、俺は中学生の時のあの傷ついた修二に何もしてやれなかったから…、だから、美樹に優しい言葉の一つでもかけなきゃって…、美樹はベソベソ泣くし、胡桃と大輝が〝優しく頭を撫でてやるくらいしろ〟って…。2人がけしかけてきたんだ…。美樹が泣き止むまでたしかに肩を抱いた…。
美樹「むつ君ね、可愛いんだ、慰めながらウトウトしだしてね、眠いの?って聞くと『眠くねぇ』とか威張るんだよ、結局一番最初寝ちゃったし…」
修二「…」
美樹「優しいし、私、むつ君イイなぁと思ったし、むつ君好きなだなぁと思った。みんな寝ることになって、むつ君の隣に寝転がったの。少しして、大輝のいびきが聞こえてきて、そしたらむつ君私の方に寝転がってきて私を抱きしめた、それからキスされて、直ぐに舌が入ってきて濃厚なディープキスされて、Tシャツの中に手を入れてきたから、『ダメだよ』って言ったけど、むつくん獣みたいに強引でそのまま私に覆いかぶさってきた」
修二「…」
生々しく情事を語る女の甘ったるさを含んだ声、修二にこんな話しを聞かせるなんて、表情の変わらない仮面のような修二からは、心を読み取ることはできないけど、繊細な修二がどれほど傷ついてるかなんて、馬鹿な俺には想像しても全然想像出来ないくらい深い傷を負わせてる…
兎を素手で握りつぶすような残酷で酷い事をやってるんだ。
この女と、…その女に手を出した俺で…
この話しは何度も聞いた。何度も聞かされた。だけど思い出せないし、信じられない。
今、修二はどんな気持ちだろう。
傷ついて…俺を恨んで…
美樹「拒んだけど、本気でじゃなかった。半分同意みたいなものなのは認める、だって、むつくんも私を好きなんだと思ったから…。だけど、起きた時の彼の態度最悪だった。〝知らない・覚えてない〟〝お前で勃つ訳ねぇ〟〝好きだなんて思ったこともねぇ〟って、クズもいいところじゃない!」
修二「…確かに、最悪だね」
むつ「………………………」
ああ…、握りつぶされた音が聞こえる…
修二の繊細な心と…
俺への愛情が無くなる音…
マキの言う通りだった…。
全部俺サイドの話しをするべきだった…
ただ謝っただけじゃ…、俺は、修二の悪口言って女とベタベタして、襲ったってだけの話しになってる…
修二…、違う…、こんなの…、違うんだ…。
馬鹿な俺でもわかる、潰れたものは元には戻らない…
俺の話しを今聞かないって言ってたけど…俺の話しを聞いてくれる番はあるのか?いつになったら弁解させてくれる?
これじゃぁ…〝男と付き合ってるのに不満で、やっぱ女に戻った〟みたいに聞こえてないか?
俺、修二のことそんな風にだけは傷つくたくなかった……
修二に、男3人で遊園地はマズイとか、手を繋いだらおかしいと言われるたび、周りの目を気にしすぎだって思ってた…、そう思っただけで…、女とだったら出来るのになんて思った訳じゃない…。
修二が周りの目を気にするの、分かったよ、人の噂は回るのが早い上に、広まれば広まるほど面白おかしくなってる…
俺、危機管理が足りなかった…
足りなかったじゃ済まされないけど…
沈黙するテーブルで、美樹は落ち込む俺を見てから、修二に言った。
哀れな者を見るように…
美樹「私も酷いことされたけど、修二君もこんな浮気のされかたして可哀想だね、ノンケにの人に手なんか出すからだよ」
(ブチッ!)
ーガターン!!
むつ「このアマ!!」
美樹「キャァーッ!!」
テーブルを乗り越えて美樹の胸ぐらを掴もうとしたら、隣の修二に取り押さえられ届かなかった。直ぐにマキも飛んできて二人掛かりで俺を床に押さえつける。
むつ「離せぇ!!」
マキ「落ち着いてむつ!」
むつ「許せねぇ!あの女好き勝手言いやがってぶん殴ぐらせろ!!」
修二「殴ったら本当の最低になるよ!」
暴れる俺に修二が怒鳴った。
言葉がズンっと胸に刺さって、何もかもおしまいなんだと心が折れる…
だって修二、こいつ…修二のこと…〝可哀想〟って言いやがった…、それに手を出したのは俺だし…、俺がセックスして確かめさせろっつったのが始まりだし…。修二はずっとずっと俺を好きでいてくれて、悩んで苦しんで、百目鬼に酷い目に合わされて、それでもひっそりと俺を思ってくれてたのに…、そんな純粋な修二の気持ちを…、なんもしらねぇこんな女が軽々しく………………
チキショウ!…チキショウチキショウ!!
美樹「ポイ捨てされた女に暴露されて逆ギレ?」
美樹は椅子に座ったまま俺を見下ろしてそう言った。
修二とマキに押さえつけられ俺が動けないと分かってる。ギロッと睨みつけても、気色の悪い声で怯えて見せながら俺を嘲笑ってる。
美樹「やだ、こわ〜い。」
むつ「ッ!!」
美樹「自分が浮気するから悪いんでしょ?」
酔った俺が手を出したのが悪いのかもしれない、そこは全力で謝った。初めは確かに覚えてないからあり得ないって酷いこと言ったさ、だけど、そのあとはちゃんと誠意を持って毎日謝った。
なのにこいつ、〝悪いと思うなら、そっちと別れて私と付き合って〟なんて言いやがって、断ると〝私が何されたかブチまけてやる〟って言いやがった。
こいつ、俺に復讐したかったんだ、俺に復讐するために、修二を間に挟んで傷つけて、俺たちが壊れるのを嘲笑ってやがる!!
許さねぇー!ぜってぇー許さねぇー!
美樹「私を馬鹿にするからこうなるのよ!これでおしまいね、でもいいんじゃない?男同士なんて不毛だし、むつくんも別れてせいせいするでしょ?女の子の方がいいもんね、ずっとそう言ってたもんね。だから浮気したんだもんね」
むつ「きッッンンーー!!!」
貴様はその汚ねぇー口を閉じろ!!
そう叫んだけど言葉にならず、俺の言葉は修二の手の中に消えた。
俺の口を塞いだ修二が、俺にニッコリ微笑んだ。
ピエロみたいな作られた笑顔で笑いかけてくる。
涙が出そうだ…
あんなに必死に勉強して
修二をこんな目に合わせて…
華南にも苦しい思いさせて…
こんな顔させたかったんじゃない…
百目鬼とのことを知った後から、少しづつほんと少しづつ解けていった修二の心と…あの幸せそうな笑顔を守りたかっただけなんだ…
修二「そうだね…、全部聞いたみたいだし、そろそろこの話しもおしまいにしようか」
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