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(番外編)純愛♎︎狂愛30
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僕と百目鬼さんは、あれ以上言葉を交わさなかった。
百目鬼さんが仕事に出かけるまでの間、ただ2人黙って、腕時計の針の音を聞いていた。
『百目鬼さんが終わりにしたいなら、終わらせていいんだよ』
『お前がそうしたいならそうしろ』
あれは、終わらせたいのか、終わらせなくていいのか…。それとも…終わってるのか…。
結局…
一度も
好きだと聞けないまま……
翌日、僕は清史郎さんに連絡をつけた。
清史郎さんはこの土地に残ってホテルに滞在していた。
僕は、男の格好のまま乗り込み、清史郎さんを問い詰めた。そしたら、案の定、清史郎さんが百目鬼さんと接触し、すべてを彼に話したと言う。清史郎さんの都合の良いように解釈された話しを…
でも、清史郎さんに悪気があったわけじゃない。百目鬼さんは、清史郎さんの雇った探偵を捕まえたそうだ。
流石♪、百目鬼さんはカッコいい♪
清史郎「つきまとうなら警察に突き出すと言われた、だから、全て説明しただけだ。私は家出した優絆を見失いたくなかっただけなんだ。すまない優絆」
マキ「んふ♪、許すと思う?〝俺〟クビになりそうなんだけど」
清史郎「す、すまない!でも、帰って来て欲しかったんだ!それを百目鬼さんに話しただけで…」
マキ「…探偵事務所が家出人雇ってたらまずいだろ、わかってて言っただろ」
清史郎「優絆…そんな…喋り方…しないでくれ…。なんでもする、何でもするから許してくれ。頼むから帰ってきてくれ…」
マキ「清史郎さん、〝俺は〟もう大学生。1人で生きていける」
清史郎「私たちは家族だ、それに、優絆はまだ未成年じゃないか…、せめて、成人するまでの短い間でもいい、優絆と分かりあいたい。私の何がいけなかった?教えてくれ…」
清史郎さんのこと嫌いじゃないけど、きっと分かり合えはしない。
だけど、清史郎さんは自分なりに必死なんだ。落ち込む清史郎さんを虐めるのは…もうこの辺にしておこう。
僕はにっこり微笑んで、いつもの可愛らしい喋り方に戻した。
マキ「…〝私〟に許してもらいたかったら、なんでもする?」
清史郎「なんでもする!」
マキ「じゃあ、お願いがあるの、私を尾行した探偵の報告書見せて」
清史郎「え?あ…分かった」
清史郎さんは、僕に警告されてからも探偵に百目鬼探偵事務所を張らせてた。
報告書の最後には、こう書かれていた。
〝百目鬼、黒髪の若い男性と2人、居酒屋月夜に入る〟
2人の会話を盗み聞こうとして、捕まったようだ。
この黒髪の若い男性は、きっと奏一さんだ。
マキ「ねぇ、雇ってた探偵さんに会わせて、聞きたいことがあるの」
なんでもいい…。ヒントが欲しい。僕だけでは、到底暴けない。
百目鬼さんにとって、何が最善か…
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華南「はぁー、やっと着いた、家の前の坂って、地味に疲れる…」
仕事終わりの華南が、自宅マンションに入ろうとしていた。そこを、僕は捕まえた。
マキ「か〜なん♪」
華南「わっ、マキ!、お前なんでそんなとこに隠れてるんだよ」
マキ「ふふ♪かくれんぼ♪なんちゃって♪
ねぇ♪お願いがあるの♪修二と2人っきりでお話ししたいから、むつくん引きつけといてくれない?」
華南「あ?別にいいけど、むつを避けるとかなんかある訳?」
マキ「奏一さんの店が絡まれててさ、その犯人を百目鬼さんが探すことになったの知ってるでしょ?僕がパイプ役♪そのことで修二に話しがあるの♪むつの耳に入ったら、厄介でしょ?」
華南「そっか。分かった」
華南ごめんね。むつくんを避けたのは、念のため。あの野生児は、何をしでかすか分からない。時間がないから、余計なことが起こらないようにしたい。
僕は、華南に修二を呼び出してもらい、修二と2人でカラオケに入った。
奏一さんの最近の様子を聞くと、奏一さんは、やはり修二に百目鬼さんのことを色々聞いたらしい。
僕は、修二に余計なことを悟られないように、百目鬼さんが奏一さんと和解できないか悩んでいると強調して、奏一さんについて色々聞いた。
そして最後は、矢張り、2人が喋ってる所を直接見ないと…
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尾行では百目鬼さんに悟られるので、探偵の調査資料にあった店で待ち構えた。
僕の知り合いに頼んで、飲んでてもらい、調査資料にあった時間帯、居酒屋月夜で百目鬼さんと奏一さんが来るのを何日か待った。
その日、百目鬼さんと奏一さんが現れ。
百目鬼さん達は、予想通り僕の隣の席に座った。半個室のその部屋は、隣が全く見えない。
百目鬼さん達は、最初は仕事の話をしていた。犯人の目星はついていて、事態は最終に差し掛かってる。相手の犯行を証明できればお終いらしい。しかし、肝心の犯人のことは、「あいつ」としか言わず、誰が犯人かは分からない。
そしてついに、2人はプライベートの話しになった。
百目鬼「……奏一、本当にすまなかった」
奏一「えっ…」
百目鬼「せめて…俺が奏一に好きだと言えてたら、修二をあんな目に合わせず、俺が奏一に病院送りにされただけで済んだのに…」
奏一「病院送りって……、告白されただけで殴ったりなんかしないよ」
百目鬼「本当にすまない」
奏一「…」
百目鬼「…」
奏一「その、そんなに俺が好きだったの?」
百目鬼「ああ、好きだった。どうしようもないくらい、自分が普通じゃないって押さえ込もうとすればするほど、奏一のことが好きで…、好きになればなるほど訳のわからない感情が増えて暴れた。俺を好きだと泣かせたいと思った……、ガキだったんだ…欲望が爆発して…とんでもないことを…」
奏一「俺は、俺への恨みがあって修二をやったのかと思った事もある…」
百目鬼「奏一が好きだったんだ。好きすぎて、思わず修二を襲った……奏一を恨んだことなど一度もない、気が狂う程好きだった…。修二はそんな俺を理解してくれた、理不尽で酷い仕打ちを受けて、謝る俺に怯えながら〝兄貴はカッコイイもんね、片想いとか辛いですよね分かります〟って、俺はそれまで他の人に、性癖に悩みがあることを話したことがなかった、話したら、軽蔑されると思ってた。…修二を好きになるのに時間はかからなかった…勝手な話だが…、修二は俺にとって初めての理解者だ。
なのに…あんなこと…、修二にも奏一にも胸糞悪い思いをさせて…」
奏一「……本当に、好きがゆえだった?」
百目鬼「奏一には聞きたくもない話だろうが…。好き過ぎた……」
奏一「修二も……俺も…?…」
百目鬼「………奏一のことは、初めて我慢が効かない程、本気で好きな人だ。今でも人としては尊敬するし、お前みたいに抱擁力のある穏やかな人間になりたいと思うよ。全然俺にはなれそうもないが…、側にいるだけで満足できるような穏やかな人間になれたら……」
涙が溢れてた…。
いつの間にかボタボタ溢れ出て、前が見えなくなってた。
僕が欲しくてたまらなかった言葉は、奏一さんに向けられた。
僕が欲しくてたまらなかった気持ちが、奏一さんに語られてる。
強面でぶっきら棒な百目鬼さんが、一生懸命言葉を選んで喋ってる。
その一生懸命な心が、可愛くて仕方ないのに、その語られてる気持ちは、僕へのものじゃない。
もし今、奏一さんが百目鬼さんを好きになることがあったら、百目鬼さんの気持ちは再熱し、奏一さんと固く結ばれるかもしれない。
僕は、ソレを確かめ、もしそうなら、〝今まで通り導かなきゃ〟
さぁ、仕事の時間だ。
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