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(番外編)純愛>♎︎狂愛
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奏一さんの登場で、あわや流血沙汰かと思いきや、修二が吠えて場が固まる。
修二「兄貴!僕の友達が百目鬼さんと付き合ってたって、兄貴には関係ないだろッ!!今大事な話ししてるんだから邪魔しないで!」
奏一「ッ!」
かつて、修二が奏一さんに噛み付いたところなんか見たことない。奏一さんの驚き方を見る限り、たぶん、修二に初めて吠えられたような反応。
さらに修二は、百目鬼にも吠える
修二「百目鬼さん!!言ってることめちゃくちゃだって自分で分かんないの?別れたのにマキの身の回りの世話焼いてる癖に、まだシラを切るのか!?」
百目鬼「ッ!」
修二「捨てた子の入院してる病院に夜中に忍び込んで、付き添いの人に、マキを守ってやってくれって言うの?落ち込むだろうから友達にフォローを頼んでくれって言うの?知り合い使って様子見によこすの?育て親が余計なことしない様に、外から圧力かける様にお願いしたりする?
マキの身の安全のためにかけずり回ったりしてる癖に
泉さんの知ってることは、全部知ってる」
百目鬼「ッ…」
百目鬼が追い込まれてる。奏一さんは修二の言葉の意味が分からず混乱中。
奏一「入院!?マキ君が?」
修二「マキは、瀧本が自分をつけ狙ってたのに、兄貴の店にちょっかい出したから、責任感じて1人で乗り込んで怪我して入院した」
奏一「はッ?!聞いてない!
百目鬼!どうなってんだッ?!」
混乱する奏一さんに、修二が説明する。
百目鬼とマキが半年前から付き合いだしたこと、マキは百目鬼を守るためにナイフの前に飛び出した事。瀧本の件で百目鬼がマキを守ろうとしたのに、謎の人物に攫われそうになったのを隠したり、瀧本に迷惑行為をやめさせるために1人で乗り込んだり。助け出した時、百目鬼がマキに別れると言ったことも。
マキが、まだ、誰かに狙われてるかもしれないことも。
奏一「…。相手に心当たりはないのか?」
百目鬼「心当たりは全部調べた…、刑事に知り合いがいて、そいつの方でも調べてもらったが、そっちの線は薄い」
奏一「その心当たりって誰だ、1人や2人じゃないな、その言い方は」
鋭い指摘だったのだろう、百目鬼がピクッと反応した。質問に答えようとしない百目鬼に、奏一さんは何かを思い出したように困惑した表情を浮かべる。
奏一「ッまさか…、朱雀の連中?」
百目鬼「…」
朱雀?今更なんで朱雀?
そう思ったが、百目鬼は視線を逸らしたままだった。
奏一「そうなのか?百目鬼!」
百目鬼「…溝呂木、覚えてるか?」
溝呂木(みぞろぎ)、かつて、朱雀の右腕だった男。後から朱雀に入った百目鬼の圧倒的な力を当時のリーダーが気に入り、鶴の一声で世代交代となった。溝呂木個人の力は百目鬼には及ばないが、彼に従う多くの仲間がいて。水面下で派閥争いがあったとか…
奏一「溝呂木?百目鬼を毛嫌いしていた…、でも、あの人はとっくに朱雀から抜けた」
百目鬼「溝呂木は裏の世界に入った。かつての仲間も何人か連れて、そして残った奴らの後輩に当たるのが今も朱雀に残ってる。今の朱雀は、半分溝呂木の息のかかった者で占められてる。溝呂木は、右腕のポジションを奪った俺を今だに恨んでて、何度もちょっかいかけてきてた。俺のことを何も知らないやつも、修二を監禁した話しで取り込んで、ずっと復讐の機会を伺ってやがった。
奏一の依頼を受けるために俺が接触した時。お前の傘下の人間に、俺が奏一に近づいてなんかしようとしてるって情報流して協力させてた。
そして、かつての復讐にと、俺の恋人攫ってリンチするっていう計画がある」
奏一「なんだとッ!?」
衝撃的な話しに、奏一さんも、修二も俺も唖然として驚きを隠せない。
百目鬼「溝呂木は、お前の傘下を味方につけ、俺に復讐の機会を狙ってた。俺が2年前に修二の前に再び現れた話もあったから、奏一を慕う奴らは今度こそ俺にトドメを刺すって…、そこは自業自得だ、俺の犯した過去のツケだ。だが、奏一の大事な弟を傷つけたんだから同じ苦しみを味あわせてやるって、マキが狙われた。修二を襲った俺が言えたことじゃないが…、マキは、関係ない…マキは守りたかった…」
百目鬼の悲痛な声に、奏一さんは困惑の色を隠せない、信じたくないと青ざめる。
奏一「まさか…そんな…。確かに、俺とお前が会ってることで、騒ついてるって話は聞いてたが、まさか、そんな事になってるなんて」
百目鬼「溝呂木の動きは抑えてた、キッカケさえあれば刑務所に突っ込むだけの材料は揃ってた。だが、奏一を慕う奴らが加わって、手が回らない、お前を慕う奴はまともに暮らしてる奴ばかりだから、そそのかされただけだ、巻き込まないようにしたかった…。お前の店が大変だからと説明して回るのも時間がかかって」
奏一「なっ、なんで俺に相談しない」
百目鬼「…加害者が、被害者に助けを求めるなんておかしいだろ?」
奏一「ッ!!」
百目鬼「マキは、俺の言うことを聞かない、勝手に動く…だから守るなんて出来ない。マキの居場所を売った奴は、もしかしたら俺を恨んでる奴かもしれない、攫おうとした奴らも…もしかしたら…。もう、マキを側には置けない。それにこの事実をマキが知ったら、余計なことをするに決まってる、あいつはちっとも言うことを聞かない、危険に飛び込むし、黙ってるし、俺の手では…………」
言いかけて、百目鬼は諦めたように息を吐く。
百目鬼「…もう、面倒見切れない…だから終わりにした」
百目鬼の話しに、シンと静まり返る。
あまりの事態に困惑を隠せない、だが、俺は、大変な事態だっていうのは分かったけど
。話がこういう方向になるのなら、大きな疑問が生まれる。
むつ「その話が本当なら、マキと別れる必要なくねぇか?」
百目鬼「人の話を聞いてたか!」
むつ「聞いてたよ、マキが狙われて大変なんだろ?だったらマキを守ればいいじゃん」
百目鬼「だからッ!マキは勝手に動くんだよ!!」
むつ「それは百目鬼がその話しをしないからだろ?お前こそ修二の話聞いてたのか?マキに気持ちを伝えないからだろ?」
百目鬼「ガキが!気持ちでどうにかなる問題じゃないんだよ!」
むつ「はー?気持ちでどうにかしようと思ってんのはあんただろ?!マキを危険から遠ざけるために分かれたようにしか聞こえねぇーよ。
めんどくさくてマキと別れて関係ないなら、もうマキの世話なんか焼くなよ!世話焼くなら最後まで面倒みろよ!
あんたの言ってること、俺には意味ワカンねぇーよ。ごちゃごちゃぬかしやがって。単純に考えろよ!俺たちが聞いてんのは、あんたがマキをどう思ってるかって事だよ!狙われる前はどうだったんだよ!そこんとこハッキリしろよ!」
百目鬼「…」
修二「百目鬼さん」
百目鬼「…」
何で、こいつがこんなに馬鹿みたいなのか俺には分からない。さっきっから怒鳴りながらマキが大切だって言葉の端々で言ってんのに、何故〝好き〟だと言わないのか。ってかここまで来て〝何とも思ってない〟が通用すると思ってんのか?
奏一「百目鬼、お前が変わったのは、マキ君と付き合ったからか?」
奏一さんが静かに問うと、百目鬼の中で何かが弾けた。
百目鬼「俺はッ!!何も変わってないッ!!俺はッ!変われなかったッ!!」
悔しそうに吐き出された言葉。逸らされてた視線が、俺たちに向けられ、感情的に怒鳴り散らす。
百目鬼「俺はッ!このままじゃマキを殺しちまう!!修二と同じように閉じ込めて!縛って!泣かせて!俺は変わらなかった!変わんねぇクズだったんだッ!!」
狭い玄関前の空間に響いた百目鬼の悲痛な叫びで、建物が揺れた気がして耳が痛い。
さっきまで俺と言い合ってた時と比べ物に塗らないほどの熱量、心からの叫び。
百目鬼「自分をコントロールしようと何度も何度も頑張った。だけど、やっぱキレちまう、怒鳴って押さえつけて泣かすんだ。俺は俺を抑えられない。俺に普通の付き合いは無理だった。マキで試したみたいな結果になったのは悪かった、そんなつもりじゃなかった。マキの不思議で真っ直ぐな瞳を欲しいと思っちまった俺がいけない。俺は修二の友達だと知りながら、マキに手を出した。笑顔にしたいと言っておきながら、マキの本音一つ引きだせず、肉欲に溺れた。マキを見てると我慢できない、すました顔を崩してやりたくて仕方ない。ヘラヘラヘラヘラ笑いやがって。縛って閉じ込めて泣き喚くようにしてやりたくなる…。努力はしたんだ。普通に付き合ってやれない、穏やかになんかいられない。マキといると無性に騒ついて心の中に嵐が起こる。醜い独占欲で、誰にも見せたくないし触らせたくないし、そんなこと普通の人間はしないだろ?俺は何一つ変わらない最低な人間のままだった…」
吹き出した百目鬼の闇。
修二が、百目鬼は好きな人を泣かせる性癖があると言っていた。いわゆるサドっ気があるってやつだ。
俺は、修二が感情を見せずヘラヘラしても泣かそうなんて思わない、そりゃ、イラッとするが…。百目鬼の気持ちは理解できないが。
百目鬼は、マキを泣かしたいと思っちまってる…。つまり、それって、気があるからだよな?
ごちゃごちゃしてる。この場で、奏一さんが口を開いた。
奏一「マキ君は、そんな風に言ってなかったぞ」
百目鬼「…マキと話したのか?いつ?」
奏一「だいぶ前だ。大好きな人がいると、とても愛おしそうな顔して話してた」
百目鬼「…」
奏一「話はなんとなく分かった。まだ、色々聞いてないこともあるんだろうけど…」
奏一さんは静かにそう言うと、百目鬼にゆっく近づき、正面に立った。
百目鬼が困惑した表情で狼狽えるのを、奏一さんは静かな顔で見上げた。
瞬間、空気を切った。
ーゴッ!!
鈍い音が響き、奏一さんは真顔で強烈な右フックが炸裂させた。
百目鬼の大きな体は傾き、ガクッと片膝つく。
修二「兄貴ッ!!」
矢田「百目鬼さん!!」
修二の奏一さんに対する怒りの声と、矢田さんの悲鳴混じりの声が響いたが、殴られた本人の百目鬼は矢田さんを制止するように掌を矢田さんの方に向ける。
ポタッと、百目鬼の口から赤い雫が落ちる音が聞こえるほど静まり返った空間。
奏一さんは、静かで鋭い表情で片膝ついた百目鬼を見下ろす。
奏一「…今のは、お前があまりに馬鹿だから殴った。お前がマキ君に手を出したからじゃない」
百目鬼「…」
奏一「今の1発で目が覚めないなら、もう1発入れるぞ」
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