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12〔裏番外〕ゆくえ……
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優絆「ヤダッ!」
ードンッ!
完全な拒否反応。茉爲宮優絆に両手で胸を押されて俺はビックリして茉爲宮優絆から手を離した。
茉爲宮優絆が混乱したような狼狽えた瞳で俺を見て後ずさる。
優絆「何!?急に怖いよッ」
まるで嫌なものを見るように俺を震えて睨みつけ、怯えた様子の茉爲宮優絆。
俺は、唖然と茉爲宮優絆を抱きしめた手を見つめる。
百目鬼「分からない…」
気がついたら抱きしめてた。
理由なんか分からない…、これから茉爲宮優絆が経験することを想像したら、胸が苦しくなって…思わず…抱きしめてた…。
優絆「…………何で?…何で神さんが泣きそうな顔するの?」
後ずさったはずの茉爲宮優絆が、俺の顔を覗きこむ。怯えたかと思ったら、俺の心配か?
相変わらず人のことばかりだ。
俺は自分の手を見つめ俯いたまま、茉爲宮優絆に問いかける。
百目鬼「……俺が…怖いか?」
優絆「ご、ごめんね、だって急に抱きついてくるから…」
暴漢に襲われた時には平気なツラしてた奴が、抱きつかれたくらいで怖いって?
百目鬼「だったら、こないだはもっと怖かったろ?」
優絆「ッ!。………………何の事?」
茉爲宮優絆の声のトーンが変わった。恐らく、ヘラヘラ笑ってやがるんだ…。
お前が怖いのは、抱きついた俺か?違うんじゃないか?
百目鬼「怖くて泣きたかったろ?」
優絆「…ふふ、別に何とも思わないよ。僕、男だし」
マキと同じ…。同一人物なんだから当たり前なんだが、ヘラヘラヘラヘラ、この笑い顔を見てるとイライラしてくる。
暴漢にイジメ…
マキの昔話が本当なら、茉爲宮優絆を濡らして靴を隠した犯人は恐らく〝アイツだ〟…となると、イジメの理由はきっと…
母親のことで成一にやられたんだ…
なのに、ヘラヘラヘラヘラと…
百目鬼「泣けばいい…」
優絆「…だから、僕は男だし、何ともなかったから」
人に頼ることに激しく抵抗するマキ。
弱音を吐くのを嫌うマキ。
それは、小4の茉爲宮優絆も同じ。
百目鬼「悲しい時は泣けばいい、嬉しい時は笑えばいい、嫌なことがあったら怒ればいい」
優絆「…」
百目鬼「ありのままほど可愛いものはない」
優絆「……意味分からない…」
反抗的というより、敵視に近い。
茉爲宮優絆はマキほど感情を隠すのが上手くないから、怯えと怒りが透けて見える。
だが、俺の言葉は茉爲宮優絆に届かない。
何て言えばいい?
何て言えば伝わる?
〝清史郎なんかやめちまえ〟って言っちまいてぇーが、それを言った瞬間茉爲宮優絆の心は閉じる。俺を完全拒絶するだろう。
百目鬼「俺は、ありのままが好きだ。出会った頃は小悪魔みたいな魔性で訳わかんない、本音のネの字も見せなかったけど、今は泣くし怒るしワガママも少しづつ言うようになった」
優絆「…そんな人が好きなの?結構マイナスな面しか言ってないけど…、そこがいいの?」
茉爲宮優絆を清史郎にやりたくない…
だが、きっとそれはできない、今の俺はマキのものだ。それにこの真っさらな茉爲宮優絆をこの時代の俺に引き合わせたとしても、この時代の俺は茉爲宮優絆を救うことはできない、この頃の俺は朱雀に居て荒れてて、奏一を好きになっていて、性癖の暴走も止められず、この時代の俺を茉爲宮優絆に会わせても、俺はこの子を救えない………
優絆「…だって、訳分かんないんでしょ?訳わかんないのに好きなの?神さんって振り回されたい人なの?」
百目鬼「ハアッ?!」
優絆「泣いたり怒ったりする人が好きなの?」
伝わらない
伝わりゃしない
誰かのこのガキに通訳してくれ
百目鬼「子供のお前には分からないだろうが、好きな相手なら喜怒哀楽全部見たいんだよ。ニコニコしてりゃーいいってもんじゃない、相手が怒っても泣いても拗ねても、ある程度ならいいんだよ、取り繕った良い子ちゃんな顔なんかいらねぇよ。いい面ばかり見せてそんなとこばかり好かれて何になる?そりゃ人間だから、全部見せてうまくいくとは限らねぇし、合わないところは擦り合わせたり、親しき中にも礼儀ありってーのもある。だけど俺は、相手の全部欲しい、兎に角全部だ」
茉爲宮優絆は、唖然とした表情で俺を見つめてる。だが仕方ないだろう。マキの考えに、こんな考えはない。この頃のマキは、いい子にしてろと清史郎に言い聞かされていい子になる事に必死だったろうからな。
百目鬼「いいか茉爲宮優絆。泣いてもいいんだよ。怖かったら怖いって言っていいんだ、嬉しかったら心から喜べ、腹が立ったら怒ればいいだろ。嫌いなものは嫌い、好きなものは好き。お前はいい子ちゃんになり過ぎだ」
優絆「……神さん、意味わかんない、矛盾したことばかり言ってるよ。親しき中にも礼儀ありとか、もっと本音を出せとか」
百目鬼「そこは、さじ加減だ。相手にもよる。だが、お前にも必ず居るから」
優絆「え?」
百目鬼「お前の全部を受け止められるやつが…」
優絆「…」
百目鬼「お前が好きならしょうがない、背伸びした恋も、居場所を探す恋もなんでもすればいい、だけど、嘘つくことばかり覚えるな、自分の身を犠牲にするな、お前にも必ず現れる、本音を言える友達も、本当のお前を好きになる奴も…、きっとそれが分かる日が来るから、そしたらおもいっきり甘えろ、おもいっきり泣け、怒ったり拗ねたりワガママ言ってくれ、そんで、楽しかったら笑えばいい」
どうしたら伝わるんだ?
どうしたらマキを呪縛から救えるんだ?
素直になれとしか言えない俺は、もっと気の利いた言葉を言いたいのに思いつきゃしない。
百目鬼「茉爲宮優絆、約束する、お前の願いを叶えて誰より大事にする…」
優絆「えっ?……ナ…ニ……言って…?」
マキ、約束する。
優絆「……神さん…って、何者なの?」
キョトンとした瞳にこんなこと言っても分からないだろうと思いながら、雪哉の言った言葉がシックリきた気がした。
俺が何者か…
この頃の時代の俺はただの猛獣だった。
だけど、今は少し違う…
今の俺なら茉爲宮優絆を2番目にもしないし、好きな所に連れてってやる、好きなものを食べさせてやる、好きな事させてやる。今の俺ならせめてそれくらいはできる。
お前に仮面をかぶせたりはしない。
俺は変われてる。
少しだが変われてる。
マキが俺を変えた。
雪哉『マキ様専用に調教されてんじゃん』
百目鬼「……お前の猛獣(ライオン)だ」
優絆「???」
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