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42〔裏番外〕ゆくえ……
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マキは、混乱し俯いていてほとんど声が出ていない。
マキ「神…さん…、どうして……」
マキの正面に座る清史郎には伝わらないだろうが、その瞳は可愛そうなほど絶望の色を濃くして俺を呼ぶ。崩れそうになりながら、俺の言葉を懇願する。
マキ「じ………」
百目鬼「……マキ」
マキは本音を口にしない…ここが限界かと思って口を開いたら、マキの後ろで、マキには見えないように清史郎が必死な形相で俺を止め、まだダメだと必死に首を振る。
マキが泣きそうになって、言葉すら統一されないほど混乱してるのに、必死な清史郎は、慌ててマキの疑問に答える。
清史郎「優絆、私と百目鬼さんは結論を勝手に決めてる訳じゃない。優絆が幸せになれるように考え話をしただけだよ。だから、優絆が決めていいんだ。私と一緒に暮らすか、百目鬼さんの所にお世話になるのか…」
清史郎はモタモタと必死に答えだが、きっとマキは納得出来てないだろう。マキが欲しいのは俺の言葉。
俺は別に清史郎との約束を違える気はない。だから、マキと2人で話しても清史郎の都合の悪い話はしないが…、清史郎は一緒に居られなかった分、焦ってる。
そんな清史郎の執着心が理解できてしまう俺は、大して清史郎と変わらない人種なんだろう。
百目鬼「マキ…」
清史郎「百目鬼さん!」
黙れと言わんばかりに清史郎は必死だが、マキの答えが聞きたいなら、俺が一言も喋らないのは無理だ。
俺は清史郎を靜に見ながら、そんなに心配しなくても不都合は起こらないと視線で制して、マキに向かって促す。
百目鬼「清史郎さんも俺も、お前の気持ちを話してほしいだけだ」
マキ「…ッ。…いきなり…言われて…今…答えろと?」
震える声に悲しみが色濃く滲む。
俺が喋ったことで、マキの表情は崩れ、清史郎に分かるほど乱れて取り繕えなくなっていた。
百目鬼「答えじゃなくてもいい。『そんな話いきなりするな』でも『馬鹿』でも『ふざけんな』でも、お前の感じたことを話してくれればいい」
清史郎「そ、そんな乱暴な言葉…」
優絆がそんなの口にする訳ないと、清史郎が呟く。
家柄が良いと、そんな小さなことが気になるらしい。
百目鬼「マキが、何を考え、何を望み、何を願うのか、俺と清史郎さんの前で口にすれば良い」
清史郎「そうだよ、優絆の願いを叶えてあげたいんだ。優絆は〝未成年〟だから、ちゃんとしなきゃいけない、優絆の友達のところに泊まったりしたのを同意したのは、優絆が食べれなくなってて、いきなり環境を変えてしまうのはと先生様にアドバイス頂いたし、お友達が必ず元気にすると約束してくれた。あの時、優絆はお友達の家に行きたいと言ったろ?だから、今回も優絆の意見を聞きたいだけだ。私は一緒に居たかったが、優絆の意見を尊重した、優絆の言葉を踏みにじったりはしてないだろ?優絆のためになるようにしたいんだ。ただ…、優絆への危険が去って元気になった今、改めて、お前に聞いてるだけだ。私の元なら何も不自由させないし、私のところに来れば〝色々楽〟にもなるし都合も良くなるだろうと思って…、優絆に提案しているだけなんだよ」
未成年だからと言われ、マキがハッとした。
今回、成一のせいで間に弁護士が挟まり〝少しばかり〟揉めた。
いきなり清史郎の元にと言ったから感情的になったマキだが、少し冷静になった様だ。
マキの実父、成多郎との話し合いは、清史郎が味方してくれたから優位に進んだ。
今度は清史郎と俺の番だ。マキは未成年だ。親である清史郎が「唆されてる、誘拐だ」と声を上げれば、事態を大事にもできる。
清史郎は、マキの幸せを願ってる。だから、自分の望みを押し通さない代わりに、マキの本音が直接聞きたいと言い。
その時、俺には発言しないで欲しいとお願いしてきた。
歳をとって、清史郎は、強引ではあるがマキを尊重し、マキのために自分の意見を押し込める術も覚えた。マキの本音を知りたいなら、多少の強引は仕方がない。それに清史郎がマキを愛しているのは見ていれば分かる。これほどの執着をみせながら、修二の家に預けたり、事件が落ち着くまで俺の家に行くのを許可したり、俺だったら、到底難しい決断をしてる。
過去は置いといて、今の清史郎はマキの幸せを尊重できるだろう。
俺と違って…。
離れていた間に清史郎が執着を抑える術を覚えたなら、俺もマキと離れて年月が経てば、俺の暴走壁がそんな風に落ち着くことがあるのだろうか?
マキ「……じ…。百目鬼さんに、一つ聞きたいことがあります…」
百目鬼「悪いが答えないぞ。質問を聞いてやることはできるが、答えはお前の言葉を聞いてからだ」
マキ「………」
俺の答えは決まってる。
マキの幸せのために何が必要か、俺はよく分かってる。そのためにお前を怒らせることになっても仕方ないと思ってる。
マキは、俺に答えてもらえないと知ると、また俯き、静かに沈黙した。
マキ「……」
清史郎は沈黙に耐えられないのか、ソワソワしながらマキを心配して落ち着かない。
そしてその沈黙は、静かな絶望を示していた。
清史郎「ッ!!ゆ、優絆!?」
ずっとマキの顔を覗く様にしていた清史郎が、驚いて立ち上がる。
本当は直ぐにでも手を伸ばしたいのだろうが、清史郎は清史郎で、マキに触れてはいけないと自分に言い聞かせてるのだろう。手を伸ばしつは引っ込めを繰り返しワタワタするばかり。
清史郎「優絆!な、泣いてるのかいッ?!」
マキの瞳から、静かに大粒の水滴が零れ落ちる。声も出さず、静かにさめざめと涙が溢れていた。
その悲しい泣き方に、清史郎の驚き方が凄かった。
まるで、泣いてる子供をあやした事がないような狼狽え方。
清史郎「な、泣かないでおくれ、優絆を悲しませたいんじゃないんだよ」
マキ「……わ、私…」
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