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45〔裏番外〕ゆくえ……
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それから。
しばらくの間、なかなか泣きやめないマキを見守り、清史郎と少し話をした。
マキと一緒に暮らしたかった清史郎は、肩を落としながらだったが、マキが俺と暮らしていたいのを引き剥がすつもりはなく、マキの望む様にするといいと、優しく微笑む。
そして去り際に、俺に向かって言った。
清史郎「…百目鬼さん、今日は、本当の優絆を見せて下さりありがとうございました。貴方との約束は後日キチンと烏磨さん立会いで果たします」
百目鬼「…約束を、最後まで守れず申し訳ありませんでした」
マキの希望を聞くまで、俺は何も言ってはいけないという条件だった。
清史郎「……貴方の迫力には驚きましたが…。全て先に聞いていましたし、私は、あんな風に感情的な優絆に何て声をかけてあげればいいのかちっとも思いつきませんでした…。不甲斐ないです…」
マキの意志を確認する今日までに、清史郎には、包み隠さず全て話していた。
マキと付き合ってることも、一緒に暮らしていくことも…、俺という人間がどんな人間なのか、俺の口からも、烏磨が客観的にも、そして刑事である賢史も清史郎に話をしてくれていた。弁護士と刑事を使ったのはズルいことをしたが、清史郎は清史郎で、とっくに俺の素行調査をしている。
修二にしたことを除いて、大体のことは耳に入ってる。朱雀にいたことも、そこでどんな風に暴れたのかも…。そして、現在探偵事務所での実績全て。
清史郎「……優絆を…、どうか沢山甘やかしてあげて下さい…」
清史郎は、俺の腕の中に抱かれてるマキを、寂しそうに見ながら微笑んで、ホテルをあとにした。
マキ「……清史郎さんと、会ってたの?」
泣き腫らした腫ぼったい顔で、俺に抱きついたままのマキが訝しげに聞いてきた。
百目鬼「ああ、未成年のお前と同棲するには清史郎の許可が必要だったからな」
マキ「清史郎さんと何の約束したの?」
百目鬼「さっき言ったろ、清史郎がお前と暮らしたいと話をしている時は口を…」
マキ「それはさっき聞いた。清史郎さんが後日って言ってたやつ…。まだなんか隠してるの?」
マキが俺の体をキュッと強く抱いて、不安そうに俺を見る。
何も怖いことなんか起きやしないのに…
そう思って泣き腫らしたマキの目尻をそっとなぞる。
マキは、ピクッと反応したが、俺の手が優しく触れるのを確認すると少しずつ緊張を解いて猫の様に擦寄ってきた。
今日も結局キレて、予定より余分に泣かせて悲しませた…。
だいたい俺ってやつは、キメなきゃいけない時に、キメきれない野郎だ…。あそこでマキに〝好きだ〟なんて言う予定じゃなかった。あれで、もし、清史郎が怒ってしまったら、全てが台無しになってたというのに…
マキがあまりに〝僕は〟ってうっせーから、つい…。大体、俺とマキだったら、絶対俺の方が上だ…。
俺は…、またしてもどっぷり浸かってる。
恋愛にトチ狂って暴走しっぱなしだ……
百目鬼「行くぞ、見せてやる」
マキ「えっ?」
マキの手首を掴んでホテルの廊下を歩き出す。
マキは、戸惑いながら泣き腫らした顔を恥ずかしそうに隠して俺に引きずられ、何度もどこに行くのか聞いてきたが、俺は無言でマキを連れて歩いた。
たどり着いたのは、同じホテルの中のとあるフロアー。
百目鬼「マキ、目を瞑れ」
マキ「ええっ!」
返事をするのを待たずに、マキの目元をガシッと掴んで手で覆う。まるでアイアンクローの様に…
マキ「イタタッ…痛い痛い…」
百目鬼「我慢しろ」
マキ「歩く…!目を瞑って歩くから!力緩めてっ…」
思わず力が入ってしまってた手の力を緩める。思いの外緊張していたみたいで、バカみたいな自分にため息が出た。
ああ…、柄にもなくこんなこと考えなきゃ良かった…。
始まってもいないのに後悔する俺は、やっぱり賢史にバカ笑いされる運命なんだろう…。
こういうの…向かない…。
だが…、こうでもしなきゃ、馬鹿(マキ)は馬鹿(マキ)のままだ。
マキを引きずる様に連れて歩いていたが、決めていた場所に立ち止まり、マキと向かい合った。
マキ「もう、目を開けて…いい?」
百目鬼「ああ」
ゆっくりと、マキが目を開ける。開かれたマキの瞳は、そのままキラキラ輝くものを瞳に映し、驚きと感動に見開かれた。
マキ「わぁああ……」
マキの瞳に映し出された無数の星空。
暗闇に輝く満天の夜空は、ホテル内の一室。プラネタリウムが設置されているレストランフロア。
マキ「凄い凄い!!なんで!?プラネタリウム?……綺麗ぇ〜」
マキが俺にしがみつく様に星空を眺めている。その星空は、少しだけコマ送りされていて、流れ星が雨の様に降り注ぎ、色々な星々が現れて瞬いては地平線に沈んでいく。
百目鬼「マキ、真上を見ろ」
俺に言われて素直に真上を見たマキが、さらに嬉しそうな声をあげる。
マキ「わぁ♡…凄い!動いてる!初めて見た!超綺麗ぇー!!あれってオーロラ!?」
百目鬼「そうだ」
マキ「色んな色に変わるぅ〜♡グリーンに赤に紫に…
ねぇ♪見て見てっ♪じ……………………」
輝くオーロラにはじゃぐマキが、無邪気に喜んで天井のオーロラを見上げていた顔に、スッと手を添えて、降り注ぐ星とオーロラカーテンの下で、唇に優しいくちづけを落とした。
マキ「ッ!!?」
マキ、覚えているか?
オーロラの下でキスした恋人は……
百目鬼「マキ…、好きだ。これは夢じゃない…」
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