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(裏)ー芽生えー1
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書類の山に囲まれて、矢田が心配そうにしながらコーヒーを持ってきてくれた。
もちろん杏子が淹れたものだが。
矢田「百目鬼さん、働きすぎじゃないですか?大丈夫ですか?マキちゃんと一緒に住みだしたのに…」
矢田は、ヨリが戻ったのに仕事が減らないのを気にしてる。俺が仕事漬けだと思ってるんだろう。それに、自分だけ定期的に休みがあるのを気にしていた。杏子も檸檬も週に一度は休みを与えてるが、自ら出勤してくる事もあったり、俺の方は、二ヶ月ほど丸々1日休みをしていない。
百目鬼「働き過ぎじゃないさ、前はマキの件で俺が勝手に動いてたんだ。今はその時檸檬や杏子に色々助けてもらった分返したい」
矢田「でも、お休みとって休んで下さらないと、檸檬さんも杏子さんも心配してやすよ」
百目鬼「休みはしないが、俺の我儘にしょっちゅう付き合わせてるだろ、マキを迎えに抜けたりとか、事務所の閉めはお前らに任せっきりだし」
矢田「なに言ってんすか!百目鬼さんはマキさんのご飯作りに帰って下さらなきゃ!それに抜けるって合間じゃないですか、ちゃんと仕事はされてやすし。檸檬さん言ってやした。百目鬼さんに頼りにされると嬉しいって!だから!どんどん檸檬さんや俺や杏子さんに頼ってくださいよ!」
百目鬼「お前らの事はいつも頼もしく思ってるよ」
矢田「いやいや、もっとすよ!もっと頼ってください!!」
俺は、生まれてから、今が1番潤ってる。
昔は駆けずり回って依頼をとって仕事をしてた。事件性の高く常に危険と隣り合わせがほとんど。
今は一般の依頼が山のようにあって、素行調査や浮気調査など、檸檬に任せられる依頼が多く、危ない事も減った。だが今も、賢史の紹介で依頼を受ける事がある。姫香さんのような、警察に取り扱ってもらえない人や、警察の捜査に納得のいかない人なんかの依頼、特に多いいのが、若者の暴力事件でどうしてそうなったのかと詳しく知りたい被害者の親が依頼してきたり、素行の悪い子供の親の依頼が主だ。
俺は昔、朱雀にいたから、県内のグループなんかには調査を入れやすく、今も繋がりのある奴らに話を聞けたりとそこら辺に詳しい。
そういう依頼ばかりやったのは、昔の行いの罪滅ぼしを出来たらという気持ちがあったと言っちゃあった。
昔は何かを振り払うように仕事を詰め込んで働いた。
中には何週間も何ヶ月もかかるものや、潜入しなきゃならないものまで数多くあった。
だが今は、そんな昔と比べて、依頼の数は増えたが、仕事量は減ったと言える。
檸檬に任せられる仕事がある事や、一般の依頼が増えた事で潜入や泊まり込みなどの依頼が減ったからだ。
昔は、事務所の上に家がありながら、ほとんど帰る事がなかった。
だが今は違う。毎晩家に帰り、マキにご飯を作ってやり、風呂に入れて、一緒にベッドで眠り。起きたら朝ごはんを作ってやり、起こして一緒に朝食を食べて送り出す。
本当は大学に送ってやりたいが、9時半には事務所にいなきゃならない。マキを大学に送って戻るとどうしてもそれに間に合わない。
起きればマキがいて、帰ればマキがいる。
俺はそれで十分だが、マキは子供だ、それで満足とはいかないだろう。
それは最初に付き合ってる頃、雪哉や、檸檬に散々言われた。まぁ、雪哉と檸檬じゃ理由が違うが。雪哉はマキが可哀想だと言うし、檸檬は働きすぎだと言うし…。
それに、一時別れた時、奏一に怒られた…。
マキはまだ19才で思春期なんだと…。甘えたい年頃だと…
奏一の言葉は俺の心に突き刺さる。
修二の父親代わりをしたんだ、言葉の重みが違うし、奏一という男を、俺は尊敬している。
俺は鈍感だ。奏一みたいに人を気遣う能力がない、だから、誤魔化したがりのマキの変化に気づけないだろう。
だから、俺は忘れない、別れを切り出した時のマキの泣き叫ぶ声も、ヨリを戻す時にマキが何て言ったのかも…。
俺の誕生日から数週間、俺は馬鹿みたいにマキを毎晩抱いてる。大学への負担や悪い虫が寄ってこないようにしたいのに、誕生日の日からのマキの変化に目眩がするほどだ。
あのクソ魔性があんな馬鹿みたいに純情な反応ばかりするから、こっちは理性切れっぱなしだし、豊かになった表情はいつまでも見ていたい。
拗ねた顔、怒った顔。周りからしたら、我儘になった、付き合ってから図々しく変わったと言われるような事かもしれない。
だが俺は、知りたかった。
マキの心の真ん中を…。
賢史「神くーん。今晩飲もうよー」
百目鬼「賢史、気色の悪い声を出すな!」
19時になって賢史が事務所に現れた。
髭の生えた大の大人がぶりっ子な仕草で気色悪い。
賢史「今日はマキちゃん飲み会に行ってるんだろ?俺が慰めてやるからさぁー。だからまたあそこに行こうよ」
百目鬼「行くか!キャバクラなんか興味ない、行きたいなら1人で行け!俺はマキを迎えに行く」
賢史「ヤダヤダ、友達と遊んでるのに割り込む気かよ。束縛も嫉妬も良いが、相手の人間関係壊したらおしまいだぞ。大学生が一次会で解散なわけないじゃん、終電まで遊ぶに決まってるだろ」
百目鬼「グッ…」
賢史「それに、こーんな怖い顔でマキちゃん迎えに行ってみ、マキちゃん大学で孤立しちゃうよ?」
百目鬼「うっ…」
人が気にしてる事をニタニタと言いやがって…
賢史「な?だから、俺に付き合えよ。マキちゃん迎えに行くなら飲まなくても良いし、晩ごはん菫ママんとこに行こうぜ」
百目鬼「マキから電話があったら速攻捨ててくぞ」
賢史「いいぜ、どうせ二次会参加してもいいかなって聞かれてお前がイラつくのがオチだけどな」
ケラケラ笑う賢史にイラっとしたが、もしマキからそんな電話がきたら、快く了承してやらなけりゃならない。
マキを独占するのと、マキを孤立させるのは違う。
それを見誤れば、俺がやってるのは監禁と変わらない。
賢史や檸檬や雪哉…烏磨なんかの注意を聞かなけりゃ、俺はマキを窒息させる。
案の定。マキから帰ってくるという連絡がなかった。だが、「遅くなる」とも連絡はなかった。
賢史と菫ママの店で食事をして、ひたすらイライラしている俺を賢史が酒の肴にして飲んでた。
そして22時を過ぎた頃、思わぬ人物から電話があり、居場所を聞かれた。相変わらず冷たいそいつは、菫ママの店にいると言った俺に、「そこから動くな」と命令して電話を切り、数分後に菫ママの店に現れた。
店の扉を開けた瞬間、俺を冷たく睨みつけたのは、久しぶりに見る水森泉だった。
泉「百目鬼さん、荷物を引き取っていただきたい」
百目鬼「荷物?」
水森泉の冷ややかな口調に、俺の隣にいた賢史が警戒するように水森泉を睨んだが、俺は賢史を制した。
水森泉は、店の外に隠れていた人物を引っ張って、俺の前に突き出した。
百目鬼「は?…マキ?」
水森泉に首根っこ捕まれ突き出されたのは、気まずそうなヘラヘラした顔のマキだった。
百目鬼「なんで水森泉と?今日は歓迎会じゃなかったのか?」
訝しげにそう聞いたが、ヘラヘラするマキと、不機嫌な水森泉。
泉「百目鬼さん、マキの後始末は任せます。僕は帰るんで」
マキ「イズミン冷たぁーい♪」
泉「酔っ払いの相手なんかしてられません」
は?
マキ「酔ってないもん♪」
泉「酔ってるでしょうが」
マキ「イズミン怖ぁい♪ふふ♪」
ふざけたマキの態度は、いつもと変わらないように見えるが、水森泉の冷やかな苛立ちはいつもと違ってる。
水森泉が投げるようにマキを俺に渡してきて気がついた。
マキからかなりの量のお酒の匂いがする。
百目鬼「おいマキ、お前酒飲んだのか」
マキ「百目鬼さんただいまぁー、会いたかったよ♪」
百目鬼「離れろ馬鹿。俺の質問に答えろ」
マキ「ふふ♪百目鬼さんまで怖い顔♪」
ヘラヘラしながら俺のほっぺに人差し指を指して、答える気のないマキを見て、みんなからのアドバイスが吹っ飛びそうだ。
百目鬼「おいマキ!貴様未成年の癖に!ふざけてないで答えろ!」
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