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ケダモノ×お酒とヒツジさん
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【雪哉side】
ー烏磨×お酒とヒツジさんー(編)
11月末、ケーキ屋さんは予約で忙しい。
来月に迫ったクリスマスケーキの予約で、電話やネットや来店客が予約をしていく。
今年はすでに前年の予約数を超え、材料の追加発注や受け渡し方法の確認、郵送客の確認など、スタッフ全員で取り掛かる。
うちのお店は、オーナーの個人店。
だから全て自分たちでやらなきゃいけないし、スタッフの数も限られているので、社員はほとんど休みがない。
だからだろうか?
忙しければ忙しいほど、俺は烏磨さんの事を考える。
あの人も忙しい人だから、どんな些細な時間でも連絡をして会う約束を取り付けないとなかなか外で会えない。
あの人がノンケで男相手にどうこうなったりしないと知りながら、あの冷ややかな眼鏡の中の鋭い瞳に睨まれると、俺の胸は踊ってる。
ダメだと知りながら、期待してしまうのは、烏磨さんが時折忙しい合間をぬってケーキを食べに店に来てくれるから。
烏磨さんは、ストレス発散に美味しいものを食べると言う。
烏磨さんの目的が俺ではなく、ケーキだと知りながら、俺は彼が来るのを心待ちにしてる。
雪哉「はぁー、今日も来なかったなぁ…」
閉店時間の22時を過ぎた。今日は烏磨さんがケーキを食べに来なかった。忙しい中の俺の栄養補給源だったのに…。
昨日も来なかったし、次はいつかなぁ…。
メールしてみようかな?今ならまだ日付変わる前だし、23時には片付け終わるし…
良し!ダメ元でメールしよう!
しかし、烏磨さんは忙しいからなかなか返信がこない。メールを見た形跡もないし、今日はダメそうだな。
ガックシ…
ユメ「なーにユッキー、彼氏にメール?」
急に後ろから声をかけられて振り向くと、そこにはニヤニヤしながら俺を覗き込む、お店の看板娘のユメちゃんがいた。
雪哉「彼氏じゃないから!人の携帯勝手に見るなよ」
ユメ「仕事中に携帯弄ってる人に言われたくありませーん」
雪哉「うッ、ごめんなさい」
ユメ「ねぇねぇユッキー、今年のクリスマス終わったら烏磨さんと一緒に過ごすの?」
俺らは毎年クリスマスまでは戦争のように忙しい。だから、クリスマス会は大抵クリスマスが終わってから。
雪哉「ええっ!そんな!無理だよ!」
ユメ「なんでなんで?しょっ中家に呼んで愛を育んでるんじゃないの?」
雪哉「ちょっ!違うから!、家には呼んでるけど新作ケーキの味見してもらってるだけだし!」
烏磨さんはノンケだから!
俺とどうこうなったりしないから!
ユメ「だけ?、彼の好みに合うケーキを作ったり、夕飯作ったりもしてるでしょ?」
雪哉「そ、それは、こっちに付き合わせてるんだから、お礼をだね…」
ユメ「えー、まったく進展してないとか言っちゃうの?」
ユメちゃん怖い怖い!偏見ないからって積極的過ぎるから。
雪哉「し、進展する訳ないじゃん!友達だよ!」
ユメ「でも全然脈なしって訳じゃないんでしょ?あの人しょっ中ケーキ食べにくるし」
雪哉「全然ないよ!ないないない!彼は全くのストレートだから!」
ユメ「そうかな?私には全く脈なしじゃないように見えるけどぉ。クリスマスとか誘ったら案外あっさりOK貰えるんじゃない?」
雪哉「無理無理無理!無理だから!ありえないから!それに忙しいから!」
ユメ「えー、誘うくらいいいじゃん!ユメは絶対いけると思うなぁ、何ならユメが声かけとこうか?」
雪哉「やめて!ユメちゃん悪い顔してるよ!余計なことしないで!今のままで十分なんだから!」
俺は今のままで十分。
そりゃ、もっと会いたいし、あの眼鏡の中の冷たい瞳で見下されてなじられたい、…けど、俺の作ったものを美味しそうに食べてくれてるだけも贅沢だ。だって烏磨さんは舌肥えてるし、顔が広いから美味しい店色々知ってるし、こないだなんか、普段のお礼だとか言って三ツ星レストラン連れてって貰っちゃって…、もぉー、スッゲー緊張したし烏磨さんカッコいいし勉強になったし。
それに…
俺が烏磨さんの気に入ったデザートを作れた日は、大抵飲みすぎて、ちょっといい雰囲気になって、俺のこと見ててくれるし…。
まぁ、烏磨さんのが反応することは無いんだけど…
邪な思いと卑猥な妄想は膨らむばかりだけど、今までは体の相性有りきで恋愛してたから、今みたいなプラトニックな気持ちからの恋愛って学生以来でちょっと切ない感じが凄くいい。
胸がズキズキ痛むのも、切なく締め付ける感じも、全部新鮮で……
…興奮しちゃうんだよね!!
俺の馬鹿!!
店の片付けが終わって駅に向かって歩いていたら、毛ポケットの携帯電話が震えた。
諦めていた烏磨さんからのメールの返事。
名前を見ただけで興奮しちゃう。
雪哉「えっと、何々…、
〝お誘いありがとうございます。ですが今、百目鬼さんと賢史さん達と会ってまして…〟
…。なぁんだ、神と一緒かぁ…。じぁあ今日は無理かぁ」
がっくり肩を落としながら、まだ続いてるメールをスクロールして続きを読みだすと、驚く名前が出てきた。
〝飲み過ぎで二人が潰れてしまいました。百目鬼さんは、マキ様に引き取って頂こうと思ってます。賢史さんはどちらにお住まいでしょうか?タクシーに突っ込むにも住所がわかりません。私も飲み過ぎました〟
マキ様!?
マキ様が来るの?マジ!行きたい!
俺は直様〝お手伝いします〟と返信して、烏磨さんのいるお店のあるところまですっ飛んでった。
烏磨さんは遠慮してたけど、俺が押し切って店に向かうと、烏磨さんはお店の外の花壇に腰を下ろし、赤い顔を冷えた冬の夜風に当てて涼んでいた。隣には賢史がグーすか寝ている。神の姿がそこに無いのを見ると、彼はマキ様に連れて帰って貰ったのかも…
雪哉「お、お待たせしました!外で待ってたんですか?寒く無いですか?」
烏磨「わざわざ来て頂いてすいません。いえね、先ほどマキ様がいらしたんですが。百目鬼さんかなり酔ってるみたいで、押し倒して襲っちゃいまして、我々は追い出されてしまいました」
えー!襲ったぁあ!!なんつー事を!
いや、マキ様の事を襲いたい気持ちは分かるよ、綺麗だし可愛いし綺麗だし可愛いしエロ…っとっと。
いやー、神の奴、見境無いなぁ(棒)…。
あーあ、マキ様に会えると思ったのに…
烏磨「おや、ガッカリした顔してますね。百目鬼さんに会いたかったですか?」
雪哉「まさか!あの幸せボケな奴なんかに興味無いです!。ちょこっとマキ様の顔が見たかったなぁって」
烏磨「ふふっ、残念。一足遅かったですね」
いつもの不敵な笑みに隙の無い感じとは違い、火照った頬でクスクス笑う烏磨さんは隙だらけで、なんだかちょっと可愛い。
雪哉「でも、俺は烏磨さんが飲みすぎたみたいだって言ってたから心配で来ちゃいました。あと、そこのグースカ寝てる奴も処分しなきゃ」
賢史さんが烏磨さんの肩に寄っかかってることにイラっとした。揺すって起こしてもなかなか起きないから引っ叩いたらなんとか目を開けた。
さっさとタクシーに乗れって言っといたけど、大丈夫大丈夫って言いながら、フラフラ歩き出したから一応背中が見えなくなるまで見送っといた。
雪哉「もぉ、だらしないんだから…」
烏磨「雪哉さん」
雪哉「はい」
烏磨「手を貸してくださいませんか?」
烏磨さんは極上の笑みを浮かべて僕に向かって右手を差し出してきた。
え?え?手を貸すって事は、その手を握るって事だけどいいんですか!!!
烏磨「立たせて下さい」
アハーン♪喜んでぇー♪♪
下心丸出しで烏磨さんの手を掴んだら、烏磨さんの指先が寒さでヒンヤリしちゃってて、かなり待たせたのかもしれないって心配になったけど、それでいて酔ってるせいか、掌から手首の方はなんだかカッカしてて、引き起こした体は思いの外軽く、少しふらついて俺の肩にもたれるように寄りかかってきた。
ドッキーンって心臓が跳ね上がって、目の前で眼鏡の中の瞳が悪戯な子供みたいに笑ってたけど、俺は寄りかかられた事と、烏磨さんの冷えたコートの感触とか温度とか匂いとか、もう一気に沸騰状態。
烏磨「クックックッ、本当、貴方って人は分かりやすい」
雪哉「か、か、からかったんですか!」
烏磨「いいえ、見たまんまを述べただけです」
うー!絶対からかって寄っかかってるでしょ!!
って涙目で睨んだら、烏磨さんは目を細めて俺の肩に顔を埋める様に近づいて、とてもいい声でボソッと呟いた。
烏磨「ふふっ、お菓子のいい匂い…」
烏磨さんはからかってないって言ったくせに、俺の首元に鼻を近づけて笑ってる。
俺が突き飛ばす事も出来ずに真っ赤な顔して固まってるのを見て、さらに肩を震わせて声を殺して笑い出した。
くそっ!くそっ!くそー!!
好きだ畜生ぉぉー!!
烏磨「雪哉さん」
雪哉「はいッ!」
烏磨「貴方の作ったデザートが食べたいです」
雪哉「え?」
烏磨「賢史さんが下品な飲み方したせいで、いいお酒が台無しでした。口直しに貴方の作るデザートが食べたくなりました。良いですよね?」
ッ!!。そ、そんな人の肩口で悪戯っ子みたいにクスクスしながらなんて反則じゃ無い?近いから!
ってか命令してくれればなんでも喜んで…
雪哉「お、俺は構いませんけど、今から俺ん家に来たら、あの、…お、遅くなりますけど良いですか?」
烏磨「クックックッ、何か期待なさってますか?」
雪哉「いえいえ!そんな!俺の作るものを食べてくれるの嬉しいなと思っただけで期待なんて恐れ多いい事は!!ただ、明日早かったら大変だろうと!!」
烏磨「明日は早く無いので平気だし、二日酔いになる様な下手な飲み方はしてません。ただ、賢史さんを黙らせるのに少しペースが早まったので、少し酔ってしまっただけです。ご迷惑お掛けしてすいません」
雪哉「迷惑だなんてとんでもない!タクシー乗り場まで歩きますけど平気ですが?」
烏磨「ええ」
雪哉「じゃあ、家に着いたらサッパリするものを作りますね。何かリクエストありますか?」
烏磨「お任せしますよ」
雪哉「…、はい!」
いつもいつも、通うほど店のケーキを気に入ってくれて、プライベートで俺の作る料理やデザートを何度も食べてくれる烏磨さん、だけど、いつも「まぁまぁです」としか言わないのに…
「お任せします」って言葉が妙に嬉しくて胸が熱くなった。
それに、口直しに俺の作ったデザートが食べたいって言ってくれた事とか…。
褒める事をしない烏磨さんからの貴重な褒め言葉だ。
俺はケーキを真剣に作ってる。
料理も作り手である以上ちゃんと勉強したし、そこからヒントを得る事もある。
仕事を褒められるのは嬉しい。新作を認めてもらえて採用されるのも嬉しい。
仕事に関しては、貶されるより認められたい。
プロの意地がある。
だから、烏磨さんに認めてもらえるのは素直に嬉しい。
…。
プライベートもそういう素直で普通だったならよかったのに…。
詰られて、乱暴に扱われて喜ぶ様な性癖じゃなかったら、ほんの少しでも…、ちょびっとでも、烏磨さんとどうにかなってたりしたかも…。
…いや。
俺が男である以上…、無いな。
烏磨さんはノンケで。
俺は男好きでアブノーマル。
…。
…。
あー…!ゾクゾクする!
見向きをしない男を好きなんてなんて切なくて、この胸を締め付ける痛みがなんとも言えず…
って!馬鹿!
何興奮してんだ自分!!
烏磨「クックックッ」
雪哉「ッ…?。どうしました烏磨さん」
烏磨「いいえ、見ていて飽きないなぁと…」
雪哉「えっ!?顔に出てました!?」
烏磨「ええ、気持ち悪いほど百面相してました」
雪哉「す、すいません!、すいません!」
烏磨「クックックッ、面白いから続けて下さい」
雪哉「え¨!出来ません!やれと言われてやるもんじゃ無いし、恥ずかしいです!」
烏磨「なんだつまらない」
烏磨さんが何考えてるか全然わかんないよ!!
でも、そんなところもドキドキします!!
烏磨「そうだ、雪哉さん」
.
雪哉「はいッ!」
烏磨「雪哉さんの作るビュッシュ・ド・ノエルを予約したいんですが…」
雪哉「えっ、あっ、あ、ありがとうございます!あ、えっ、と…その…、大きさはどのくらいのを…」
烏磨「そうですね、差し入れで20人くらいで分けてもらいますから、大きいのを三つくらい、後は1番小さいのを一つでお願いします。小さいのは私専用ですから美味しいく作ってくださいね」
雪哉「は、はい!頑張ります!」
この時、ユメちゃんの言葉が頭を回ってた。
『誘えば案外あっさりOK貰えるんじゃない?』
って!
だけどその一言を言うのはかなり勇気が要るし、20人分差し入れってことはパーティーやるんだろうな、とか、でも〝私専用で〟ってことは一人で食べるのかもとかグルグルしてて、言葉が続かない。
そうしてうだうだ考えてるのを烏磨さんに見透かされて笑われて、俺はまた赤面した。
後日、俺はユキちゃんに感謝の気持ちを込めてケーキを作り献上。その後ずっと笑われることになる。
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