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晩餐⑤
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コウタは、ナイフとフォークを持ち上げて、目の前の魚料理を一切れ控えめに小さく切って口に運んだ。
「どうだ?口に合うかな?」
「はい。美味しい。とても…。」
そりゃそうだ。ここのシェフは一流だ。
それに、湊がコウタのために選んだメニューだ。
コウタの好きな食材が、コウタの好みの味付けで仕上げられているはずだ。
気に入らないはずがない。
コウタは一口食べて落ち着いたのか、ようやく食欲を思い出したように、パクパクと食べ始めた。
マナーはまずまずだ。
それなりにきれいに食べているが、洗練されているとは言い難い。
もう少しスマートに食べられるように教える必要はあるだろう。
料理がほとんど空になった頃、夏樹は思い出したようにコウタに聞いた。
「今日のことは、湊にはどんなふうに聞いてたんだ?」
「誕生日だから、ふたりで出かけようって…」
コウタはそう言い淀むと、ポロリと涙をこぼした。
ふたりで…ね…。きっと、もっと違うことを期待していたんだろう。
それが、こんな場所で、初めて会う男に鞭で打たれて犯されて、その上そいつとふたりで、誕生日の夜の食事だ…。
しかも二十歳の誕生日だというのに…。
かわいそうに…。
記憶に残る誕生日になったことには、違いないだろうけどな…。
「ひどいな、湊は。君をだまして連れてきたってわけだ?」
「いえ。そんなことは… 」
「そう? だって、こんなところで、こんな目なあうなんて、聞かされてなかったんだろう?」
「それは… 必要ありませんから。どこ行くのかも、何をするのかも、湊さんが決めることです。」
受け答えは、合格だ。
自分の立場を、ちゃんと理解している。
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