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晩餐⑥
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「そうか。でも、今夜は湊とふたりで過ごせると思ってたんだろう?それなのに、結局俺とふたりの夜になってしまって悪かったな。」
「…いえ。でも…あの… 湊さんは… ? 会いたい。」
「この建物のどこかにちゃんといるよ。でも、今夜は会えない。さっきも言ったろ?」
「ごめんなさい。」
夏樹が言外に、「同じことを何度も言わせるな」と含ませると、コウタはそれをきちんと受け取り、うつむいて謝罪の言葉を口にした。
こういうところは、本当に勘がいい。
こういう賢さは、湊に似ている。
「食事はもういいか?ケーキは明日、湊と一緒に食べような。」
夏樹がそう言うと、コウタはようやく顔を上げて、はにかむよう笑って頷いた。
さて、どうするかな。
もう時間も遅いし、今日は早めにベッドに入れたがいいだろうけれど、明日のことを考えると、今夜のうちに、少しだけ、ここのことを教えておくべきか…。
「ここのことは、何か聞いてる?」
「いえ。なにも…。」
「だよな。ところで、君は、湊の何?」
「え… えっと… 」
「恋人?」
「いえ。それは違うと思います。」
コウタはそれを望んでいるが、湊はそんなこと許さない。
今夜、湊は何度もコウタに愛してると言ってくれたが、湊にそう言われたのは、初めてのことだった。
あのセリフには、きっと、大した意味はない。
ただ、コウタに命令に従わせるためのもの、儀式みたいなものだろう。
そんなことは、コウタは言われなくてもよく分かっていた。
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