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湊の朝⑤
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湊は、倒れたまま、まだ咳き込んでいる。
腕を引いて起き上がらせてやりたい気持ちを抑えて、亨は努めて淡々と湊に声をかけた。
「おおげさだな。さっさと起きて、身支度をしなさい。遅れると、あいつは本当にうるさいんだよ。お前だって知ってるだろう?」
それでも動こうとしない湊を、亨は靴の先でトンッとつついた。
「…湊?いつまでもそうやってても、今日は優しくはしないぞ?昨日、お前があの子にやったことだろう?」
「…分かってます。優しくしてもらおうと思ってこうしてるわけじゃありませんから。」
「だったら、なんだ?」
「…本当に苦しくて動けないんです。これ、ちょっと、ひどくないですか?亨さん?」
「馬鹿言うな。ひどいのはお前だろう?今のは、ずいぶん手加減したよ。あの子は気を失うほど痛かったんだ。可哀想に…。」
「亨さん… コウタの味方なんだ?なんなんだよ…。あいつが言うこと聞かないのが悪いのに…。」
湊のこの言葉を聞いて、亨は顔をしかめた。
やはり、湊は相当傷ついている。
湊は、苦しみや悲しみが大きい時ほど、傷が深いほど、それを悟られまいと、バカバカしいことを言う。
この態度は、寝起きのせいかと思ったが、おそらく、それだけじゃない。
つらくてたまらない気持ちを、どうにか誤魔化そうとしているのに違いない。
それでも、今日は優しくすることはできない。
「悪いのは、お前だ。あの子は、今のお前とは、比べ物にならないくらい、苦しかったはずだ。二度とするな。」
「…すみません。」
「お前にも、同じことをしてやりたいところだが… 今、お前を気絶させて、約束の時間に間に合わなくなると、夏樹が面倒だ。 …もう、いいから。さっさと起きて、準備しなさい。すぐに朝食だ。」
「はい。」
脇腹を押さえながら起き上がった湊は、顔をしかめてうつむきがちにシャールームに向かった。
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