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ガチャ。
「ただいま…」
玄関のドアを開け、中に入る。
ここは空木児童養護施設。
俺のように身寄りのない子供達が暮らす場所だ。
『蛍にーちゃんおかえりー!』
わらわらとあちこちから出てきた兄妹達を両手を広げて抱きとめる。
「ただいま、みんな」
「蛍?帰ったなら来てくれる?」
談話室から顔を出した僕らの母代わりである近藤さんに返事をして、
兄妹達を一人ひとり抱きしめる。
「じゃあね」
談話室に呼ばれるということは、僕はもうここを出るということだ。
児童の引き渡し以外に談話室が使われたことはない。
コンコン。
ノックをしてドアを開ける。
中には近藤さんとまだ若そうな男の人。
俺は知ってる。
ここは公的な施設じゃないことも。
人身売買のための家畜小屋だということも。
「こんにちは。神崎悠二です。今日から君の保護者になります。」
にこりと微笑んだその男の人は全然人を買うような人には見えない。
「この子でいいんですか?神崎さん。うちにはもっと小さな子もいますよ?」
近藤さんがいつもなら考えられないぐらいに冷たい声で男の人に問いかける。
「僕はこの子がいいんです。これでいいでしょう。失礼します。」
優しく俺に微笑んだ神崎は、大きな封筒を机にどんとおくと、俺の手を引いて談話室を出てしまう。
「ちょっと…」
靴も履かせてもらえずそのまま姫抱きされて施設を出る。
施設の門の前には、真っ黒で高そうな車。
俺を片手でだいたまま、ドアを開けて助手席に俺を座らせる。
自分も乗り込むと何も聞かずに走り出してしまった。
「あの…」
「何ー?」
「なんで俺を選んだんですか。」
「ん〜、なんとなく、かな?」
曖昧な答えに納得がいかないものの、今下手に問い詰めて機嫌を損ねるのはだめなきがする。
おとなしく俺は辺りを見回すことにした。
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