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指南
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鶴松は小志乃の家に戻って饅頭を渡すと自分の住む家へと帰った。
家に戻って本を読んでいる時に春駒がやって来た。
「春ちゃん饅頭あるよ」
「食べていいの?」
「うん」
春駒を家に上げて、饅頭を二人で食べながら話をした。
「ねえねえ春ちゃん。春ちゃんは陰間してるけどどんなことするの?」
「は?エッチに決まってる」
「そっかー。エッチって誰かに教えてもらったの?」
「そうだよ。陰間茶屋のオヤジに習った」
「へー?」
「まずは本を読まされたかな。心得みたいなの」
「そうなんだ?」
江戸時代にはエッチの指南書が多数存在した。
男色のことに関して書かれている書物も多く、例えば「百人一出拭紙箱(ひゃくにんいっししょくしばこ)」などには受け側、ネコの心構えや心得、どのように始めるかなどが書かれていたり、「艶道日夜女宝記(びどうにちやじょうほうき)」なども江戸時代のエッチの指南書だが女色だけではなく男色にも多くのページを割いている。受け、ネコの人の「お尻」の開発法も恐ろしく詳細に書かれていたりする。
「春ちゃんはそのー、えーと」
「僕はネコするよ」
開けっぴろげに春駒は答えた。
「そ・そうなんだ?」
「うん。僕にはまだタチを求められないからね」
以前も記述したように若い未成年の内はネコ、髭が生えて来る頃になると女性を相手にしたり逆に掘る側、タチになったりする。
武家の世界においては男色は年上の者が年下の者に指南したりするものであるが、徳川家光公のようにネコしか出来ない主君には家臣も戸惑っていたようである。
主君が家臣や目下の者を「掘る」って感じだったのが家光公だけは違ったようである。
町民文化でもその色合いはあるようで未成年の間はネコで年を重ねて今度は掘る側にという変遷をするものだったのかもしれない。
こういう儀式的な文化は日本のみならず諸外国に見られたり、祭りでも見受けられるがその話はまた機会があればしていこうと思う。
「鶴松ちゃんにも教えてあげようか?僕開発してあげる?」
「へ?いいよ。興味ないもん」
「そっかー。鶴松ちゃんの方がかわいい顔してるしそういうお誘いたくさんありそうだからもうしたことあるかと思ってたー。鶴松ちゃん人攫いに会ったり襲われたりしないように気をつけなよー」
「えー。ないよー。うん、夜は出歩かない」
男の子でも人攫いに合って売り飛ばされるなんてこともあるのである。
もちろん性の対象としてだったり奴隷的な扱いであるが。
江戸時代の神隠しの事案も実は人攫いの類も多かったようである。
現代ではこんな会話をしている人はいないだろうし、聞いている人もドン引きだろうが江戸時代と現代では物事の捉え方も性に関しても考え方が全く異なる。
江戸時代は性に関してはあけすけなのだ。
春駒と鶴松は1歳違いでのんびりしているところも似ているところからよく家でつるんではそういう話をしていた。
鶴松には性に関してはまだ未知の領域ながらも年が近い為、春駒には聞きやすかったのだ。
「鶴松!!誰か来ているの?」
「いえ、誰もおりませぬ!!」
姉の声が聞こえてすぐさま鶴松は返事をした。
「もうそろそろ夕餉(ゆうげ)ですよ。準備していらっしゃい」
「はい」
鶴松の友達付き合いは同じ大店の若旦那衆でもなければ、店関係の大人でもなく陰間の人間だったり未亡人であったり長屋の人間だったりで家人も口には出さないが心配していたようである。
時折、このように鶴松の居住区に来ては心配そうに干渉して来ていた。
鶴松はふらふらしているがやはり大店の人間なのである。
変な虫がついては敵わない、と家人は思っていた。
「僕もそろそろ戻るよ。旦那がまた怒って探しに来るから」
「うん。またね」
鶴松はニコニコ笑って手を振ったが、春駒が気を利かせてその場を後にしたのは知らなかった。
春駒のような人間が家に遊びに来ていると家人に知られたら鶴松が迷惑するだろう、と春駒は身を隠すようにしながら家を出て行く。
春駒が家を出て行った姿を物影から見ている者がいた。
染芳である。
染芳は春駒が鶴松の家を出たのを見届けると鶴松の家の玄関へと立った。
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