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6 文化祭
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⚠ちょっと暗めです⚠
結局、俺は余りの衝撃に口ごもってしまった。
りゅうはとりあえず帰ろう、と言って俺の手を取り、持ってきてくれたらしい俺のカバンとりゅうのカバンをサッと持つと、何も言わずに歩き出した。
そして、俺はそのままりゅうの部屋に連れてこられ、部屋の真ん中のテーブルを挟んで向かい合って座った。
そういえば、りゅうの部屋に来るのは初めてかもしれない。
いつも俺の部屋でご飯食べてたし。
いつも寝坊しかけてたら起こしに来ててくれたし。
なんかそう思うと緊張してきたな、、、
「純。」
「ハ、はい!」
やばい、声裏返った。
はずい。
「俺の知ってる光さんと純の知ってる光さんは違う。」
「え、違う人なの?」
「いや、お互いが光さんの知ってる部分と知らない部分があるってこと。そして、俺は光さんを知りたい。だから教えてくれないか、純のことと、光さんのことを。」
俺の知らない兄さん。
それで何かわかるんなら知りたい。
俺は深呼吸をして、口を開いた。
「俺さ、昔からほんとに今日みたいなこと多くて。顔のせいってことは自覚してるんだけどな。まあさすがに教師は初だったけど。でも、いつも兄さんが迎えに来て一緒に登下校してくれて、何かあったらいつも助けてくれて、中学まで何も無かったのは兄さんのおかげだと思う。兄さんは、顔よし頭よし性格よしで、ほんとに自慢だった。」
俺は兄さんのことを思い出して思わず笑顔になった。
りゅうは黙って聞いてくれた。
ここからは、あまり思い出したくないが、かなしいことに自然と思い出してしまう。
「小学生の時さ、母さんが病気で死んだんだ。父さんは母さんのことが大好きで、大好きで、、、そのことを受け入れられなかった。次第によく顔が似ている俺のことを母さんの名前で呼び出した。兄さんは、危ないと思って、叔父にすぐお願いして、叔父名義で叔父が住む福岡に2人で引っ越して、アパートに住み始めた。俺が小5のときだから、兄さんは丁度高校1年の時かな。それから2人で暮らしてたんだ。変なやつに付きまとわれる以外はなんの問題もなくて、、そのまま俺は中3になって、兄さんは大学2年だったけど、何かやりたいことを見つけたって言って大学を辞めようか考えてた。」
結局何がやりたかったのかそういえば俺聞いてなかったな。
兄さんが決めたことだし、なんだって応援する気だった。
「そんな時だった。バレたんだ、父さんに居場所が。えっと、俺実は叔父の店でこっそりバイトしてて、兄さんと交互にバイトの日程入れてたんだよ。ある日、俺はいつものように兄さんと家に帰って、兄さんはバイトに行った。俺は1人で家で待ってたんだ。兄さんが帰ってくる時間いつも同じ時間帯だったからさ、俺、外から靴の音が聞こえてきたらいつもドアを開けてお迎えするのが習慣で。でもその日扉を開けた先にいたのは、父さんだった。」
もうそこからは、正直記憶が曖昧で。
俺は頭が痛くなるのを抑えながら話し続けた。
「父さんは母さんの名を呼びながら、一緒に死のうって叫びながら、俺の首を絞めた。でも、兄さんは家まで叔父に送ってもらって、すぐに異変に気づいて、部屋で俺の首を締める父さんを殴ったんだ。父さんは懐から包丁を取り出した。ほんとに死ぬ気だった。兄さんは、外に逃げろっ、おじさんの車にすぐ乗り込め!って俺を殺そうとする父さんを押さえつけながら俺に言ってくれた。でも、俺は兄さんを置いていけなくて。兄さんは父さんを殴り倒して、俺に後ろから覆いかぶさりながら走ってくれた。でも、、、」
少しずつ、大丈夫という声が辛くなっていくのも、呼吸が荒くなっていくのも、嫌ってくらい体と脳が覚えていて。
俺はあの時の兄さんのように、呼吸が荒くなった。
りゅうは俺の横に移動してきて、黙って俺の背中を撫でてくれた。
「叔父は警察を呼んでくれてて、俺と兄さんが外に出たら、警察の人が到着したばかりだった。俺と兄さんは2人で階段を降りて叔父と警官のとこまで走った。後ろから父さんが追いかけて来たけど警察の人が父さんを捕まえてくれて、俺は一安心した。でも俺を後ろから抱きしめる力が緩くなって、人が倒れる音がして。振り返ったら、兄さんは背中から血を流してた。、、、兄さんは刺された状態で走ってくれたんだ。」
俺を守り抜いて死んだ兄さんのことは大好きだ。
でも、兄さんは俺のために死ぬべき人じゃなかった。
俺がこの顔で生まれたことで始まった悲劇は、最悪の結果をもたらした。
「兄さんは、病院に運ばれたけど、救急車の中で死んだ。俺の手を握りながら死んでいった。父さんは勿論捕まったけど、精神異常ってことで、強制入院中。そこからは、もうよく覚えてない。何週間か学校休んだら、その間によくわからない噂が広がってて、学校にも居場所がなくなった。もうあの土地から離れたくて、元々ここに来る気ではいたけど、俺は寮生活を選んだ。」
俺は一通り話し終え、ゆっくり隣のりゅうを見た。
りゅうはじっと俺の事を見つめながら背中をさすり続けてくれた。
「つまり、俺のせいで兄さんが死んだっていうことだ。俺はもう話すことは無いよ。」
俺はりゅうに話を促した。
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