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フィルター掃除のしかた(1)
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今日は休日。昼過ぎまで寝て、パンツ一枚でだらだらとテレビを見る。しょうもないがお気に入りの休日の過ごし方だ。
ピンポーン
お菓子を食べながら再放送のドラマを見ていたら、玄関のチャイムが鳴った。そして同時に沢口からラインが来た。遊びに来たらしい。
若干めんどくささを感じながらもドアを開けると、タッパーを持った沢口が立っていた。沢口は俺を見るなり吹き出した。
「なっ……なにそのかっこう」
「え?パンツいっちょ?俺の休日スタイル」
「それは別にいいんだけど、パンツの趣味がひどい」
「そうか?可愛くない?」
今はいているパンツは、織田信長がデカデカとプリントされているボクサーパンツだ。盛り上がっているところに信長の顔があるため、そこだけ立体的に見えるところが気に入っている。
「あの世で信長が泣いてるぞ」
「まあ、とにかく入れよ」
沢口は家に上がると、俺にタッパーを持たせた。
「何これ?」
「シフォンケーキ。午前中暇すぎて作ってたんだけど、余っちゃって」
「お前、休日にケーキ作ってんの?女子かよ」
「お前のパンツよりはいい趣味だろ」
「うるせー」
「ていうか、目のやり場に困るから、上に何か着てくれない?信長の主張が強すぎる」
「はいはい」
シフォンケーキを机に置いて寝室に向かい、テキトーなTシャツとステテコを身につけた。
戻ってくると、沢口はまこちゃんの水槽を眺めていた。
「だんだん可愛く見えてきたわ、なまず」
「あー…そうだな。言われてみれば」
人間になったときのインパクトが強すぎて、なまずの時の見た目はあまり意識してなかった。
でも大きい口やすべすべしてそうな真っ黒な肌を見ると、たしかに可愛い。
「なまずって何年くらい生きるの?」
「えっ?!さあ…ひげ生えてるから長生きしそう」
「いい加減だなー。まあ、そもそも大平のペットなんだしな」
「ああ…うん」
せっかく持ってきてくれたから、シフォンケーキを取り分けて皿に盛った。ひとくち食べてみると、ふわふわの食感と優しい甘さが口の中に広がる。
「うわー、これ美味しいよ!店で売ってるやつみたい。沢口すごいな〜」
「ほんと?よかった」
沢口は嬉しそうに笑った。
「会社で配ったら、女子が喜びそう」
「配らないよ。津島が食べてくれれば十分」
「あ、そう?」
それならば、と遠慮なくむしゃむしゃ食べることにする。
「お昼あんまり食べてなかったから、お腹空いてたんだよね。ありがたいわ」
「そうなの?なんで食べなかったんだ?」
「やー、作るのも買いに行くのもめんどくさくて」
「………」
沢口は無言で少し考えるそぶりをした後、口を開いた。
「俺が作ろうか?」
「…は?」
何を言ってるんだこいつは。
「いや、俺は昼作ってるし。どうせ作るなら1人も2人も一緒だし。それなら食うかなーと思っただけで」
沢口は妙に早口で言い訳をしだした。
「別にいいよー。迷惑だろ」
「余ったときとか、持ってくよ」
「そう?ありがとう…」
なんで?という感じはするけど、美味しい昼食が食べられるならいいか。
シフォンケーキを食べ終わって食器を片付けていると、沢口に呼びかけられた。
「なー、もしこのまま大平が帰ってこなかったら、どうするの?」
「どうするって?」
「大平の荷物どうするかとか、このままここに住み続けるのかとか、そこのなまずどうするのかとか」
「あー…」
誠がこのまま帰ってこないなんて、思いたくはないけれど。
「家とか荷物とかはわかんないけど…なまずは俺が飼うよ。飼い主代理だし、責任があるからな」
「ふーん…」
沢口はその後ひとしきりごろごろした後、洗濯物を取り込むとか言って帰っていった。なんて家庭的なやつなんだ。
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