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フィルター掃除のしかた(4)
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外出するにあたって気になることが1つある。まこちゃんが急になまずに戻ってしまったりしないか、ということだ。
「まこちゃんはいつも、どんなタイミングでなまずに戻ってるの?」
「いつもは用事が終わったら自主的に水槽に戻っていた。言いたいことがあるときに人間になれるが、言い終わったら強制的になまずに戻るわけじゃない」
「ふむふむ。じゃあその辺はあんまり気にせずに外出していいのかな」
とりあえず財布でも取ってこようかと寝室に向かおうとしたら、まこちゃんに腕をつかまれた。
「待て。今気づいた。距離だ」
「え?」
「お前が離れると、ほんの少し息苦しく感じる。目安はわからないが、おそらくお前が遠くに行きすぎると、俺はなまずに戻るだろう」
「なるほど…ちょっと不安だね。うーんじゃあ、外では手をつないでなるべく近くにいられるようにして、念のため水の入ったバケツを持って行こうか」
「それはありがたいが…水の入ったバケツを持ち歩くというのは、人間界でよく見られる行動なのか?」
「なわけないでしょ」
「そうなるとお前は不審者となってしまうが…」
「気にしないでよ。俺は別に」
「つしまのことは気にしてない。不審者と一緒にいると俺が変な目で見られるだろう」
「えっそっち?いいじゃんどうせなまずだし…」
「なんだとう!」
ごたごた言っているまこちゃんの手をつないで外に出た。
「まぶしい…」
まこちゃんはパチパチと瞬きしている。
外では綺麗に晴れた青空が広がっていた。
「まこちゃん、夜行性なんだっけ?」
「そうだ。明るいところは好きじゃない」
「じゃあ…川沿いを歩いてショッピングモールに行って、帽子とご飯買って帰ろうか」
「帽子?」
「え、知らないの?日差し避けるやつだよ。あー、俺も誠もかぶらないから、見たことないのか」
「む…」
「あ、じゃあショッピングモールは知ってる?お店がたくさんあるところで…あ、お店っていうのは…」
「馬鹿にするな!俺は常識溢れるなまずだぞ!それくらいテレビで見て知っとる!…わっ!」
憤慨しているまこちゃんの横を、車が通り抜けた。
「まこちゃん、危ないからこっち来な」
手を引っ張って車道の反対側を歩かせると、まこちゃんはより一層ふくれっつらになった。
「むむむむ…」
「まこちゃん、いくらテレビで知ってても、外を歩くのなんて初めてでしょ?怖かったらすぐに言ってね」
「怖くなんかないぞ!」
「そっかそっか」
そう言いつつ、何か見るたびにこっそりビクッとしているまこちゃんが、なんだか可愛い。
そうこうしているうちに川の近くまで着いたので、河川敷を歩くことにした。
「川だな…」
まこちゃんは水面を無表情で見ながらつぶやいた。
「まこちゃんが生まれた川もこんな感じだった?」
「いや、全然違うぞ。もっと深くて大きかった」
「ん?ちなみにどのへんで生まれたの?」
「ペルーだ」
「ペルー?!」
「俺はグローバルななまずなんだ」
どこか誇らしげにまこちゃんは言った。
「そっかー。川に来たらまこちゃんの仲間に会えるかなと思ったけど、さすがにいないかぁ」
「なんだ?俺だけじゃ不満か?」
「違うよ!まこちゃん、小さい頃からずっと1匹って言ってたし。仲間に会えたら嬉しいかなーと思って」
「俺別に、仲間に会いたいとか思ってないぞ。つしまがいるから寂しくはないし」
「でも俺、生殖はできないよ?」
「は?!何の話だ?」
「いやだって、前に生殖したことないって…」
「デリカシーのないやつめ!」
まこちゃんは俺の頭をパシッとたたいた。
「痛いなー」
「ふん!」
まこちゃんが不機嫌になっちゃった。俺が悪いのか?
…悪いか。
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