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ヒーターの導入(2)
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『無理に話さなくてもいい。俺はお前たちの味方だ』
まこちゃんが何を言いたかったのか、結局まだわかっていない。でもおそらく、まこちゃんは気づいている。誠がいなくなったことも、その理由も…。
「津島」
「えっ?」
沢口の声が聞こえ、ふっと我にかえった。沢口は心配そうな顔をしている。
「津島、大丈夫か?なまずの水槽、じっと見つめてさ」
「あ、うん…。ちょっと誠のこと考えてた」
「……そうか」
沢口は日本酒をぐっと喉に入れた。
ペースが速い気がするけど、大丈夫かな。
「なあ沢口…お前なら、どうする?ずっと仲良かったやつに、これまでの関係を根底から覆すようなこと言われたら」
「…大平の話?」
「いや…もし、っていう話」
「例えば、どんなこと言われたら?」
「えーっと…例えば…か、加藤さんに、実は自分は宇宙人なのって言われたら」
「病院に連れて行く」
「あはー、そうなるわな」
グラスに入った日本酒を見つめ、ため息をついた。水面が揺れて、世界がぼやけて映っている。
「じゃあ、津島だったらどうする?」
顔を上げると、沢口がじっと俺を見つめていた。
「例えばもし俺に、好きだ付き合ってくれって言われたら?」
「…えっ?」
心臓がドクンと音を立てた。
「それは…例えなんだよな?」
「例えだよ」
「あー、えっと…」
返事に困ってグラスに口をつけると、沢口は吹き出した。
「あはは、冗談だよ。俺飲み過ぎたかなー」
「な、なんだ…」
沢口は、ぽーっとした表情で机の上にゴロンと頭をのせた。
「俺はー、大平の代わりになってるのか?」
「…何言ってるんだ?」
「だとしたら、大平が帰ってきた時、どうすれば俺はこの位置にいられる?」
沢口は俺の人差し指を握って軽く引いた。
「どうすれば、お前の隣に居続けられる?」
「あ…あはは…沢口、変だよ。誠がいてもいなくても、沢口は俺の友達だろ?」
「………」
沢口が持っていた栗が、コロンと手から落ちた。
どうやら寝てしまったらしい。人差し指をそっと引き抜く。
酔ったうわごとかもしれないけど、でも、もしかしたら沢口は…
「まこちゃん、どう思う?」
俺が話しかけても、まこちゃんは水槽の底で、静かに泳いでいるだけだ。
俺のことなんか、もう見ちゃいないんだろうか。二度と話しかけてくることもないんだろうか。
「まこちゃん、俺は…寂しいよ…」
沢口は誠の代わりじゃない。
でも、まこちゃんは?
世間知らずで、子どもみたいにはしゃぐときもあって、だけど俺の話をちゃんと聞いてくれて、なんだかんだ優しいまこちゃん。そういうところは俺が…俺が好きな、誠によく似ていた。
…なのに、俺は。
「そんなところで寝てると、風邪ひくぞ。最近肌寒くなってきたし」
机に突っ伏している沢口の肩を軽く揺すってみた。しかし起きる気配はない。
「仕方ないな…」
誠の布団を引っ張り出してきて寝かせた。隣でその寝顔を見ているうちに、俺は眠りについていた。
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