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ヒーターの導入(5)
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まこちゃんはマイペースに話を続ける。
「最近少し肌寒くなってきたな」
「そうだね。秋だもんね」
「するとだ!水槽の水温も下がるわけだ」
「魚は水温の変化に弱いんだっけ」
「その通りだつしま!」
まこちゃんは満足そうに俺を指さした。
なんだかちょっと楽しい。
「それで、水槽用のヒーターが必要になるわけだ。まことも買ってたはずだ」
「んー、見てみるね」
まこちゃんの世話道具が入っている棚を開けると、ヒーターと書かれた箱の中にコードが繋がった円柱状のものが入っていた。取り出すと、まこちゃんはうんうん頷いた。
「そうだ。それがヒーターだ。コンセントを差して温度を設定して丸いのを水にドボンすれば、その水温を自動的に保ってくれるぞ」
「何度くらいにすればいいの?」
「俺は28度が好きだ」
「ちなみに電気代ってどれくらい…」
「俺が知るわけないだろう。なんだ?高かったら設置しない気か?」
「いやするけどさ」
まあ…きっとそんなにはかかんないよな。こんなちっぽけなヒーターだし。
温度を28度に設定し、ヒーターを水槽の中にセットした。
「…これだけ?」
「うむ。以上だ」
「………」
「………」
レクチャーが終わり、俺もまこちゃんも黙ってしまった。ここはやっぱり、俺が話さないといけないのかな。
「…誠のことだけど」
「うん」
「海外に行ってるって話は嘘だった。ごめん」
「謝らなくてもいいぞ。つしまの優しさだったんだろ?」
「まこちゃんは…どこまで知ってたの?」
気になっていたことを聞いてみた。まこちゃんはきっと俺の嘘に気づいていた。そうすると、あの夜のことも…
「俺は全部ここから見ていた」
「全部?」
「まことのことも、つしまのことも、全部見ていた。全部知っている」
「…じゃあ、俺のこと軽蔑してる?」
「つしまはどうするんだ?」
まこちゃんは質問を質問で返してきた。
「どうするって何を?」
「さっきの告白だ。どうして時間をもらったんだ?」
そこを聞かれるとは思わなかった。
気分がさらにずんと重くなる。
「上手な断り方を考えたいんだ。…沢口を傷つけないような断り方を」
「そうか」
「ねえまこちゃん、俺のことどう思ってる?誠のことを傷つけて、何も行動できない俺のこと…」
すがるようにまこちゃんを見ると、まこちゃんは濡れた手で俺の手を握った。
「俺はお前たちの味方だ」
「お前…たち?」
「つしまとまことの味方だ。世話をしてもらった恩は忘れないぞ」
「うん…」
「つしまは、自分が後悔しないように行動すればいい。自分の気持ちに正直になれ」
「自分の気持ち…」
「俺はつしまを軽蔑なんてしない。過去にしたことも、これからすることも、全部肯定する」
まこちゃんは手を握る力を強くした。
「俺はただ、つしまとまことが幸せに生きていてほしいんだ。それが俺から飼い主への願いだ」
「…ありがとう」
ザバン
まこちゃんはするっと手を離し、水槽へ戻っていった。
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