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「さすがだね」
ハァハァと息を切らしてゴールした俺に、最初と変わらない爽やかな笑顔で褒めてくれたのは部長
だ。
なんとか5週を走りきった。
「ハァ、ハァ部長にはやっぱ敵わないっす」
俺よりも先にゴールした部長はもちろん一番。部長以外はまだ誰もゴールしていない。他の部員は俺の後ろを走っていたから当たり前だが。
「そんなことないよ。僕だって気を抜いたら追い越されるとこだった」
そんな事いいつつも涼しげに笑う部長には余裕が見えた。今はまだ悔しい気持ちよりも流石だと尊敬の気持ちのが強かったりする。
でも、やっぱりいつかは追い越してやりたいと対抗心にまた一つ火がついたのを感じた。ライバルがいると燃えるタイプなのだ。
「あ、山本くん。あれってさ山本くんの友達だよね?」
ふと部長が指差したのは、グラウンドを囲むようにあるフェンスの向こう側で、ぴょんぴょんと跳ねながら両手で大きく手を振る俊哉の姿だった。多分、俺に向かって手を振っているのだろう。
「くそっ、あいつ、また! すいません! 目障りですよねっ、俺注意してきますっ!」
あぁ!もう!大人しく座って見とけって、いつも言ってんのに!本当に、どこにいても恥ずかしいやつだな!
と、慌てて走りだそうとした俺に部長はストップをかけた。
「ううん、いいよ。ただ、いつも一緒にいるの見るから気になっただけだよ」
そう言って、ジッと俊哉を見つめる部長。その横顔はどこか微笑んでるように見えた。
「部長…?」
「友達、かっこいいよね」
にっこり笑いながら俺に向き直ると、何故か頭を撫でられた。クエスチョンマークが頭に浮かんで部長の顔を見上げる。これまた部長も身長が高いので致し方ない。爽やかなイケメン顔を見つめると部長は、さらに笑みを深くした。
「ま、まあ、顔だけが取り柄? みたいなやつっすよ……」
俊哉は甘いマスクのイケメンだけど部長は白い歯が似合う、ガムのCMに出てるような爽やかなイケメンなのだが、そんなイケメンに撫でられてる平凡な俺って惨めすぎないか?俊哉が撫でてきたら手をつねってやるが、流石に先輩には出来ないので大人しくする。
先輩は俺が困っている事に気づいたのか撫でていた手を下ろした。
「ねぇ山本くん、今日の帰り時間ある? 話したい事があるんだけど」
「話したい事ですか…?」
チラッと俊哉の方を見る。俊哉と帰る約束をしているから余り遅くはなりたくないのだが部長の誘いを断れるほどの図々しさは持ち合わせはない。どうするか……。
少し黙って悩んでしまう。そんな俺に気づいたのか部長は、あぁと俊哉に視線を向けてから俺を見た。
「ごめんね、5分だけだから」
「5分だけなら、大丈夫です」
俺が承諾したのを見て礼を言う部長。と、同時に他の部員が続々とゴールし始めたので俺たちの会話は終了した。
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