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部長と付き合い始めて2週間が経とうとしていた頃。
「ところで、潤ちゃんよ」
「……なんだよ」
「まだ何も言ってないのに睨まないでよ」
「じゃあ、怒らせるような事言うなよ?」
「大丈夫だって~」
今は昼休み。俺の席と前の席であるクラスメートの席を真っ正面からくっつけて、ご飯を食べているのは俊哉。自然と向き合う形になるのだが男同士で向き合うのはどうかと思うので俺は横向きに座る。
俺の背中には窓があり、その下の壁に寄っ掛かるのが俺のスタイル。
毎度この席の形にする張本人は、さっきから何処かワクワクしている。毎日毎日ワクワクしながら部長との事を詳しく話せと言ってくるのだが、それとはまた違う雰囲気に、とりあえず嫌な予感しかしない。
「今、部長さんと一緒に帰ってるじゃん」
「…そうだけど」
「今日もだよね?」
「まぁな」
俊哉はフムフムと顎に手を置いて考える。そして、いつものニヤニヤ顔に変わったなと思った同時に嫌な予感が確信に変わった。
「何、考えてんだよ!」
「ナニってなnイタッ!」
全部、言い終わる前にメロンパンを俊哉に投げつける。変態相手にだけ許される事だから、よい子は真似しないでくれ。
「早く言え」
「横暴!」
「お前の考えてる事は、いつもえげつないんだよ」
「そんなぁ、ナニも考えてないって」
じゃ、そのニヤニヤ顔を止めろ。横目で睨むとそれが伝わったのかゴホンと咳払いをする俊哉。白々しいやつだ。
「あ、そういえば、もうすぐ大会でしょ? 応援に行っていい?」
俊哉が唐突に話題を変えた。変な事を考えていたのが確定したが、ここで追及するべきか悩む。俺に被害がなければ変な妄想も悪巧みも、どうでもいんだが。
話しを変えたのが、かなり怪しい。が、まあ今回は俊哉の話しに乗ってやるか、とメロンパンを拾って袋を開ける。
「別にいいけど、去年のは止めろよ」
思い出されるのは、でっかい横断幕に『山本潤は世界一!』と書いてあるのを、他に来てた人達に持たせていた俊哉。あれは本当に恥ずかしかった。だいたい周りの人達に迷惑だ。
「えー、今年も持って行こうと思ったのに」
応援してくれるのは嬉しいが、なんせ何処でも目立つやつだ。チアガールが使うようなボンボンを振り回し、ところ構わず腐男子発言を大声で叫ぶから、さらに注目され応援されてる俺まで注目されてしまうのだ。
何しに来たんだ、と何度も思った。あんな経験、二度としたくない。
「あと今年は一切喋るな」
「がんばれも?」
メロンパンにかじりつこうとしたが一旦、止める。
普通の応援だったらして欲しい。誰よりも俊哉の応援が力になる。
だが、一切喋るなと言ってしまった手前、いいとは言いづらい。
「………それは許す」
精一杯の返答だ。居心地が悪くなってしまい、俯く。
「ふはっ、かわいー! 今のムービーに撮っておけば良かった!」
「は?」
しまった!と言わんばかりにスマホを取り出す俊哉。意味が分からない。いや、コイツを理解できるやつはいないのだが、流石に今の言葉は理解不能すぎる。
「潤ちゃん、今のめっちゃ可愛かった~! そんな潤ちゃんを今すぐ部長さんに差し上げたいっ! って潤ちゃんは部長さんのか。ふはっ、さぁ潤ちゃん! 今のもう一回っ」
興奮した俊哉が周りを気にせず普通の声量で話すもんだから、慌てて辺りを見渡すが、近くに人はおらず安心する。
「お前さ、あんま大きな声で部長の事、言うんじゃねぇよ」
やはり、バレない事に越した事はないし、自分の気持ち的にもまだ胸を張れる事ではないのだ。2週間そこらで、俊哉への気持ちが無くなる事はない。
「えー、気にする事ないのに。俺はいつでも潤ちゃんの味方だからね。誰か何か言ってきたら俺に任せてよ」
「………とりあえずお前からはバラすなよ」
「はいはい。分かったから、さっきの続きして?」
「あ? なんだよ続きって」
そういえば、さっきからスマホを俺に向けているが続きとは……。意味が分からなくて、俊哉をじっと見つめる。
「だから、さっきみたいに伏し目がちで、それは許すって言うのっ。ちゃんと唇尖らしてね! いくよー」
はい、スタート!と言って、こっちに向けてるスマホがピカピカと点滅し始めた。なんなんだ、こいつは。ぜんぜっん似てない俺の物真似らしきやつにもムカつくが何より唇尖らした覚えはねぇ!
「意味わかんねぇ」
呆れてパックに入ってるミルクティをズーズー音を立てて飲む。その音は無くなる合図。さらに腹が立った。全部、変態のせいだな。
「ストローをちゅーちゅー潤ちゃん! それもいいよっ! きゃわわ!」
「さっきから、うるせぇな! きゃわわってなんだよ! お前は女子か!」
目立ちたくないのに思わず叫んでしまい、ちらほら教室にいるクラスメートから注目を浴びてしまった。
しかも立ち上がってる、俺。
「………くそっ」
顔真っ赤ー、と目の前でクスクス笑う俊哉にぷるぷる身体が震えた。俊哉の手元には、未だにピカピカ光ってるスマホ。むかつくな。スマホに罪はないが、このままでは怒りが収まらない。無防備だった俊哉の手元からスマホを奪い去る。簡単に俺の手元へ移動した。
「ぎゃっ!?」
「……」
「待って待って! お願い! ジュース奢るから!」
「……………ミルクティ」
「潤ちゃんには似合わないやつね! はい、ただいま!」
「一言、多いんだよ!」
急いでバタバタと俊哉は教室を出ていった。本当に嵐みたいなやつだ。
まあ、それもそのはず。俺の手元にある俊哉のスマホは窓の外。俺が手を離せば地面へと、まっ逆さまだからな。
「はぁ。ーー俺の、味方か」
俺の手元でピカピカ光ってるスマホの動画停止ボタンを押して俊哉が座っていた机の上に置いた。
それから5分後に主人の手元に戻って行ったスマホを見送り、ズーズーとミルクティを飲む。スリスリと頬を寄せる主人を持った事をスマホに同情する俺だった。
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