アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10
-
「黙ってるって事はしたんでしょ?」
頭の中で、ぐるぐる考えている間、黙っていた俺に痺れを切らしたのか俊哉は言う。なんだか浮気がばれて問い詰められてる感じだ。
「なんなの、お前……」
キスしようとしたのを止めたり、なのに俺が誰かと付き合う事を願ったり、なにがしてぇんだよ。
あーもう、どうなろうが知らねえ。
「はあ、たかがキスの1つや2つ減るもんじゃないだろ。男がいちいち気にしてられっかよ」
もし、されていても、俺にとってそれに意味はなかった。第一歩だと思えばいいと、そう思っていただろう。
「………そう…ほんと潤ちゃんにはガッカリだよ」
そう言った俊哉の顔に表情はない。怒ってもいなくて、本当に無表情だった。整った顔が無表情になるとマネキンみたいだなと場違いな事を思い普段どれだけ俊哉がニコニコしているのか実感した。
「悪かったな、期待に沿えなくて」
ガッカリって……お前の思い描くBLってやつの筋書き通りいかなければ俺はガッカリされるのか。…馬鹿みてぇ。お前にとって俺は、そんなもんだったのか。せめて友達でいれたらって、でも、そこの立ち位置さえ居れてなかったのか俺は?
胸が痛くて、何でこんな事になってるのか分からなくて、空を見上げた。
涙が出そうになるのをふせぎたかった。
「……だったらさ、部長さんとキス出来るなら俺ともできるんでしょ?」
「……はっ?」
なんて、言ったーーー?
「お、お前、本当にどうしたんだよっ? まじで具合でも悪いんじゃねぇか?」
こんな事を言うのは熱があるのかもしれない、そう思い手を伸ばす。目的は俊哉の額を触る為。だが、それは叶わず俊哉に手首を掴まれる。
「ね、キスしてみる?」
間近にある見慣れた顔。誘惑するような言葉にドキリと胸が鳴った。何度も考えた。俺が女だったら、お前が女だったら…、こんなに近くにいても問題ないんだろう。
だけど、もしそうだったら俺は俊哉を好きになる事はなかったんじゃないかって思うんだ。お前と友達になって近くにいたから、さりげない優しさとか下らない事ではしゃぐお前を好きになったんじゃねぇかって。
誰もを魅了する笑顔を俺だけのものしたいって思った。
でも、それは無理だろう。だから、それが叶わないのなら友達として側に。
「お前とだけは絶対にしたくない」
真っ直ぐに俊哉を見つめる。
お前は誰よりも大切で、自分の気持ちを隠してまで側にいたくて、それを守る為に前に進もうと部長と付き合った。
すべてはお前との友情が大事だから。お前の隣に居たいからだ。
「部長と出来ても他の男と出来ても、俺はお前とだけは絶対に出来ない」
なぁ、お前が大事なんだ。
俊哉と俺の間には崩れない壁があり、友達という俺には怖くて崩せない壁が何より大事なんだ。
じゃないと、お前は側にいてくれないような気がして。
「だから、はなせよ…えっ……」
掴まれた腕を引くと反対の方向へ思いきっり引っ張られた。驚きで見開いた目の前には長い睫毛。唇に柔らかな感触。俊哉の匂い。
―――キスしてる、と理解するのに1秒もかからなかった。
「……っや、めろ!」
「…ッ!痛いよ、潤ちゃん」
「ふざけんな!」
俊哉の胸板に手をつけ押せば、力が強すぎたのか俊哉は尻餅をついた。謝るよりも先に沸々と沸き上がる怒りを抑えられなくて、見上げてくる俊哉を睨む。
「なにしてんだよっ!?」
「たかが、キスでしょ? なに怒ってんの」
よいしょ、と立ち上がりお尻についた砂を叩きながら俺がさっき言った言葉を笑いながら言う。
ふざけんなふざけんなふざけんなっ!
「俺、言ったよな!? お前とだけはしたくないって!」
「なにムキになってんの?」
馬鹿にしたような言い方。泣くな、俺っ。
「っ!俺はなぁ!」
お前のこと好きだから、とでも言うつもりか。
言ってどうなる?俊哉は俺の事を好きじゃないから、たかがキスなんだ。分かってたつもりなのに結構傷つくんだな。胸が痛い。
でも俺が部長にしようとしてた事と一緒で俺は怒れる立場じゃない。なんだこれ。
ばっかじゃねぇの。
「……はは」
「なに笑ってんの?」
いきなり笑った俺に俊哉が不思議そうに見てくる。
だってさ、
「最低だな、俺もお前も」
茶番だ、こんなの。そう思うだろ?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 12