アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
contact-1
-
「…………」
空が薄らと明るくなる。
まだ昇りかけの朝陽は姿を見せないが、
俺が座る向かいの山に隠れている事から東の方角を知る事が出来た。
「アイルさん。おはようございます」
朝の静寂を邪魔しない澄んだ声に名を呼ばれ、俺は木の幹に凭れたまま横目だけを向ける。
「おはよう、イオリ。随分早いな。まだ起きる時間じゃないのに」
正確には時間なんて分からない。
だから俺達は薪が燃え尽きる早さで時間を定め、昨夜は交代で見張りを立てた。
…とは言っても熟睡できるような状況じゃない。
目は閉じていても、ほんの少し仮眠が取れたかどうかといった状況で、一番最後の見張り役だった俺は早めの交代を勝手出た。
「アイルさん…あまり寝ていませんよね。後はボクが見張りますから、少し休んで下さい」
「え…、いいよ。どうせ眠れそうにないし」
「でしたら体だけでも休めて下さい。気が高ぶったままだと心身共に保ちませんから」
俺の隣に腰を下ろしたイオリが静かに笑う。
昨夜の俺の様子を知ってるって事はこいつもろくに眠れてなかったんじゃないか?
そう思いながらも俺はイオリの申し出を受け、地面に腕枕をして寝転がった。
頭に下に敷いた腕が所々痛む。
「あんたと俺って…もしかして知り合いだったのかな」
「なぜ…そう思うんですか?」
「ただ何となく。他の二人と話す時はちょっと緊張するけど、イオリはそんな事ないから。……あ、なんか図々しい事言ってたらゴメン」
「謝らないで下さい…!その……嬉しいです。そう言ってもらえて…」
はにかんだ笑顔に釣られて俺も口端を上げる。
こいつは本当に不思議な奴だ。
警戒心というものが全く見えず極自然に人の心に入り込める。
それはこいつが持って生まれた天性の才能なのかもしれない。
「なぁ、俺に敬語なんか使わなくていいよ。多分年も近いだろうしさ」
「でも……この方が話しやすくて…。ダメ…ですか?」
「いや別に駄目とかじゃなくて…。ま、あんたが話しやすいならそれでいいけど、本当に気は使わなくていいから」
「はい」
こいつと話している内に緊迫した心が大分落ち着きをみせ、俺はゆっくり瞼を閉じた。
そのまま少し眠ったらしく、イオリの柔らかい声で目を開けた時にはすっかり朝陽が昇り、出発の時間を告げた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 9