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「はぁ…、はぁ…」
「お前さ、さっきからハァハァうるせーんだよ。呼吸くらい静かにできねーのか」
「し、仕方ないだろ!?ってか、なんであんたらは平気なんだよ!」
朝陽が登ると同時に俺達は小高い山を登り始めた。
頂上まで登り、辺りを把握してから目的地を定めるという事になったんだが…。
「平気じゃないですよ?でも、呼吸を乱すと余計に体力を消耗するので…」
「だから!この状態でなんでそれが──」
「うるせぇって言ってんだろ!無駄口を叩いてんじゃねぇ!全員きついに決まってんだろうが!」
「っ……」
アラン、イオリに続き、等々痺れを切らせたソウマが声を荒らげた。
ひとまずの目的であるはずの山頂は未だ見えず、鬱蒼と生い茂った斜面をただひたすら歩く。
終わりの見えない前進はこんなにも辛いものなのか。
全員体中に痣や傷があるにも関わらず、俺だけがまるで付いていけない状態だ。
「…なぁ。まさか迷ったりしてないよな?」
「無い。太陽の方角へ歩いてんだ。その内辿り着く」
ソウマは視線を向けるでもなく素っ気なく俺の不安を蹴散らした。
それからどの位登り続けたのか。太陽がもう少しで俺達の真上までくるという頃、ソウマがやっと足を止めた。
「頂上が見えた。ここからは二手に別れるぞ」
「え?なんで別れる必要があるんだ?」
終わりが見えた安堵もそこそこに、声を上げたのはまた俺だけだった。
「頂上ってのはな、周りからよく見える上に、襲撃されれば逃げ場がないだろ?だから二手に別れて、どちらかが襲撃されればもう片方が援護する。もしくは敵さんが複数いた場合、分散させる効果もある。そうすれば勝ち目はあるかもしれねーだろ?」
「へー。なるほど」
「…。」
珍しく丁寧に説明をしてくれたアランは、呆れたと言わんばかりに半笑いになった。
「無駄話をしてる時間はねぇ。さっさと行くぞ。先行は俺とイオリ。アランとアイルは5分後に来い」
「はいよ」
「…」
俺は開けかけた口を閉じた。
本当はイオリと行く方が気が楽だったし、時間も分からないのに5分後と言われても…と言いたかったが、ここで口を挟めばまた小言を言われそうだ。
俺の無言を同意と察したのか、ソウマとイオリは目配せだけをし、俺達から離れて行った。
「…」
「…」
気まずいのはお互い様だろう。
だけど俺が聞きたいことは、アランも聞きたいことだ。そしてその答えは互いに持っていない。
俺達はただ、二人の後ろ姿を無言で見送っていた。
「…お前さ」
手持ち無沙汰な時間を終わらせたのは、以外にもアランの方だった。
「なに?」
「んー。なんというか…」
「だからなんだよ?」
「……なんで俺達と捕縛されてたんだ?」
「は?」
意味が分からない。
捕縛されてた理由が分かるなら、この状況を脱する大きな手がかりになる。
けど分かるわけがない。何も覚えてないんだ。
俺だけじゃなく全員が。
「あー、気を悪くするなよ?お前ってさ、俺達と全てが違うじゃん?あそこに監禁されてたって事以外は」
「そうだな。俺も不思議で仕方ないよ」
「運悪く巻き添えを食らったとか?またまた見ちゃいけねーものを見たとか?」
「だから知らないって。そんな感じなのかもな」
答えようのない質問が面倒になって適当に返してると、アランはふと真剣な目をした。
「──本当は"スパイ"とか?」
「…」
一瞬、俺の頭の中を何かが過ぎった。
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