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awakening-1
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言葉少なく先行を行くソウマとイオリを見失わないよう、俺とアランは歩き続けた。
道無き山肌は、やけにシダが足に絡んで尚更重く感じる。
時折感じる緩い風を頬に受け、じわりと額に浮かんだ汗を冷やし、肌寒さを感じた。
「──!!」
"なんだ…?"
突然耳鳴りが響いた。
「──」
俺の様子がおかしい事に気がついたんだろう。
アランが顔を覗き込み何か言っている。だが俺には何も聞こえず、彼から目を逸らし辺りを伺った。
(何かがおかしい)
木々を揺らす音も、先頭をいく2人の足音も何も聞こえない。
────パキッ
とても細く、本当に小さな小枝が折れる音だったが、それが頭の中に響き渡った。
「アラン」
小さく囁くと、彼は俺の視線の先を追った。
(いた…!)
周りの景色とカモフラージュした色のヘルメットに戦闘服。その手には重々しい黒色の銃を持っている。
目的は単純明快だった。
だが一つだけ幸運な事があった。
(俺達に気づいてない…)
その二人の男が凝視しているのは先頭を行く二人だけだった。
ここで選択肢は2つ。
このまま気付かれない様、徐々に距離をとって俺達だけで逃げるか、どうにかして前の2人に合図を送るかだ。
だが後者の合図を送れば、逆に俺達が襲撃されるかもしれない。
(一体どうすれば…)
迷ってる間も俺の鼓動がどんどん大きくなり、呼吸が浅くなる。
しかし不思議と頭の中は落ち着いていた。頭が冴え渡るとはこの事だろうか?
俺の答えはもう決まってる。
何も案は無いのに、何でも出来そうな不思議な感覚に陥った俺は、巻き込んでしまうであろうアランに視線を映すと、彼は得意げな顔で片手で石を遊ばせていた。
「──。」
アランも恐らく同じ考えだ。
そう直感した俺は黙って彼に頷いた。
でも、合図を送った後はどうする?
身を隠すか散り散りに逃げるのかまだ決められないまま、とにかく俺は木に身を隠した。
すると、アランは俺の様子を見届け、上体を大きく振るかぶり出来るだけ遠くに石を投げた。
石はあんなにゆっくり飛ぶものだっただろうか。とてもゆっくり、それは綺麗な弧を描いて離れていく。
それは2人と男達のちょうど間をくぐり、その遥か先にある木に当たった。
───カーンッ
その音が辺りに響いた瞬間、前を行く2人は振り向く事無く咄嗟に身を隠し、音の方向を振り返った男達は標的を見失い、慌てて体勢を高くした。
それを見たのを最後に、俺の目の前の景色が突然、早送りのように流れた。
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