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awakening-2
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「──!」
しばらく気でも失っていたんだろうか?
徐々に視界が鮮明になり、少しずつ音が戻ってきた。
「──い!アイル!しっかりしろ…!」
「はっ…、はっ…」
息が苦しい。何がどうなったんだ?
必死に俺の肩を揺するアランに視線を向け、ただ呼吸をする事で必死だった。
「アイルさん…」
側にはイオリとソウマの姿もある。
だがその顔は心配をしていると言うより、むしろ訝(いぶか)しげな表情を浮かべていた。
「2人とも無事だったんだな…!」
「ハッ!無事も何もてめぇが…」
ソウマはバツが悪そうに顔を背け、イオリは取り繕うように笑って見せた。
「アイルさん。とにかくソレ、離しませんか?」
「"ソレ"…?う、うわぁああ!!」
イオリにつられて視線を落とすと、俺の右手に1本の枝が握られていた。
ただそれは、中腹から先端にかけべっとりと血塗られ、少し粘ついた赤い滴が、今も地面に落ち続けていた。
──────
────
ヌルりと肌を湿らせる赤い血は川の水に溶け出し、俺の手はすっかり綺麗になったはずだった。
それでも尚、腹の底から込み上げてくる何かが治まらない。
(本当に俺が…あの二人を…?)
横たわる兵士は確かに死んでいた。
一人は首の後ろから棒状の何かで刺された跡があった。もう1人は詳しく見ていない。
近づかなくても息をしていないのは明らかな程の鮮血を流していたからだ。
そしてその一人に使われた凶器は、俺が持っていた木の枝だった。つまり俺が殺した…。
3人からいくら説明されても全く思い出せないが、さっきの現状がそれを物語っていた。
溺れそうな程の息切れと、べっとり血塗られた俺の右手。
そして3人の、俺を警戒する視線。
あの場を直ぐに立ち去った俺達は何とか一つの山を越え、麓(ふもと)を流れる川を見つけ、俺は3人から離れて血を落とそうとした。
塗られた俺の手をぬぐい去る様に水が染まりながらサラサラと流れていく。
だが擦っても擦ってもまだ付いてるような気がした。
「──!おい、アイル!」
「え…?」
突然肩を強く揺さぶる力で我に返ると、そこにはアランの困惑した顔があった。
「無理もないと思うが、それにしたってどうしたんだよ!?手の皮でも剥ぐつもりか!?」
アランの視線を追うと、それは俺の手を指していた。
お世辞にも血色がいいとは言えない肌が、今は所々赤い斑点を作り、真っ赤に擦れ上がっていた。
「…、あんたには関係ないだろ」
「関係ないってお前…」
「俺の事なんか放っとけよ!!俺が…、俺があの2人を…!」
「とにかく落ち着け。いいか?ゆっくり呼吸しろ」
落ち着かせようとしたんだろう。アランは自分の肩に俺の顔を埋めさせた。
ふわりとアランの匂いが俺を包み込む。
「気持ちは分かる…多分。もしかすると、俺も同じ経験があるのかもな。何とも言えねーが。それに、少なくともお前は俺達を救ったんだ」
「…」
耳のすぐ側から聞こえる声はいつもより少し低めに抑えられ、アランの大きな手が俺の背中をゆっくりと摩る。
「もしお前がやっていなくても、俺達の中誰かがやってたかもしれねーし、逆に俺達がやられてたかもしれねーだろ?だったらお前は俺達を救った。それだけを考えとけよ」
なんだか心地いい。
まるで子供をあやすような素振りで少し戸惑ったが、混乱していた頭の中が少し落ち着いた気がした。
だが不意に、それと反比例して熱を帯びる自分に気が付いた。
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