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彼と僕
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そろ~っと廊下に顔を出す。
「あはは、ヤダなぁ」
…彼は女の子五人に囲まれ、楽しそうに話をしている。
よし、今なら大丈夫そうだ。
僕はカバンを抱え込み、そっと教室を出た。
気配を消し、息を詰めて、静かに足音を立てずに廊下を歩く。
「一人で帰るなんてつれないなぁ。せっかく待ってたのに」
「ひっ!」
しかし十歩も歩かないうちに、彼に気付かれてしまった。
僕はゆっくりと振り返り、彼を見る。
「いっいや、そのっ、かっ彼女達と楽しそうに話をしているから…」
「うん、だって遅いんだもん。待ちくたびれちゃったよ」
彼は肩を竦め、女の子達に微笑みかけた。
「じゃあ待ち人来たから、オレは帰るね」
途端に女の子達は不満そうな声を上げる。
「またおしゃべりしようね。バイバイ」
しかし彼はスッパリ切り捨て、僕の元へ来た。
「遅かったね、掃除当番」
「うっうん。ちょっとふざけている男子がいて、遅く…」
ハッ! 言ってはいけないことを口にしてしまった。
慌てて口を押さえるも、彼はニッコリ微笑んだ。
「…へぇ? 誰、そのふざけたヤツ?」
僕は口を押さえながら、首を左右に振った。
「言えよ。そいつのせいで、遅くなったんだろう?」
口を塞ぐ手を、無理やりはがされた。
僕は震える声で、その人物の名を告げた。
「ふぅん…。随分調子に乗ってるな」
すると彼の眼が鋭く光る。
「いやっ、でも、少しの間だったし…。女子に注意されて、すぐに止めたし…。そっそれにホラ、今日は週末だろう? だからちょっと浮かれていたんじゃ…」
「でも時間はかかった。そのせいでオレは余計に待たされた。―思い知らせてやるか」
何を?とは聞けなかった。
聞かなくても、彼の今後の姿が頭に浮かんだからだ。
「さて、待たされた詫びはどう償ってもらおうかな?」
…そして他人事ではなかった。
「ゆっ夕飯は僕が作るよ」
「それだけ?」
「あっ後片付けもする。おフロ掃除もするから…」
「そこら辺はやってもらっても嬉しくないなぁ。やっぱりオレを喜ばせるには…」
彼はニヤッと笑い、僕の耳元でとんでもないことを言った。
「セックス、だろう?」
「っ! がっ学校ではそういうこと、言わないでよ!」
声を潜めながら怒鳴っても、彼は笑うだけ。
「アハハ。顔、真っ赤」
「~~~っ!」
僕は囁かれた耳を、手のひらでゴシゴシ擦った。
誰かに聞かれたらどうするという僕の心配を、彼は笑い飛ばす。
「あっ、夕飯は肉じゃがが良いな。あと塩シャケとあさりの味噌汁」
「わっ分かったよ」
でも僕は何一つ、彼に逆らえない。
それどころか反論することさえ、ままならない。
彼こと新真しんま紗神さがみは、そのぐらい強い。
黒い髪に、黒い眼。どこか野性味のある雰囲気だけど、一言で言えばキレイな人。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能。
その上、親戚が何人も政治家になっていて、彼のご両親は世界にいくつも店を持つ企業家。
彼自身もまだ高校二年生なのに、会社の仕事を任せられている。
…それにパソコンを使って、いろいろ遊んで稼いでいる。
お金にも人にも何一つ不自由しない人の側にいるのが、何故か僕。
僕の名前は大祇たいし永河えいが。
彼と同じ黒い髪と黒い眼をしていても、顔の作りは平凡で地味。
と言うより、目立たないタイプだ。
生まれてこの方、目立とうと思ったことは一度もなかった。
勉強も運動神経もそこそこで、平凡で地味に生きるのが一番良い事だと、高校二年にして悟っていた。
なのに…彼に眼を付けられてしまった。
彼と出会ったのは高校に入学してすぐ、同じクラスになった。
でも最初はお互い、普通のクラスメートとして接していた。
特別、親しいわけでもない。必要最低限しか会話もしなかった。本当に普通だったのだ。
しかしある日、彼の住むマンションに連れてかれて…無理やり体を繋げられた。
訳の分からない彼の行動に、僕は思いっきり抵抗して暴れたけれど、勝てなかった。
その後、強制的に彼のマンションに住むことになった。
元々、この高校に通う為にアパートで一人暮らしをしていた。
けれど彼が僕の両親を騙し…いや説得して、二人暮らしになった。
両親は一人暮らしをするより、セキュリティのしっかりしたマンションで二人暮らしをしてもらった方が安全だと思ったんだろう。
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