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『あ!二葉さ〜ん!』
『おはよございます〜!一限から会うなんて初めてですね!』
『今帰りですか?俺も……あ!ちょ!早!?』
、
あの日の放課後から
しばらく経った頃
俺の日常は昨年とは違っていた。
毎度毎度飽きもせず会う度に声をかけられた。
一人の時もあれば誰かと一緒に居る時も
一緒にいる奴を放って金井は俺の元へやってきた。
いい加減鬱陶しいなんて思いながら
初めて会った時ほどの険悪感が無くなっていることに気づいて
不思議な気分になる。
と、
「二葉さ〜ん!いま帰りー??」
少し遠い所から間延びしたあほっぽい声が聞こえてくる。
この頃は以前より金井の話し方も砕けていて
俺自身も本人には言わないが名前を呼ぶようになっていた。
だからといって、普段なら声に反応することも無い
のだが、
珍しくこいつの声に返事をしてしまったのは
その時の気分がそうだっただけで特に意味なんて、ない
「お前、よく飽きないな」
「!」
わかりやすく花が咲いたような表情に
俺は何をやってるんだろうと考える。
「…んだよ」
「初めてちゃんと返事してくれたと思ったら嬉しくて!!!」
めんどくさいと無視することが正解なはずなのに
返事をしてしまった自分に内心戸惑う。
本当何してんだ、俺
ぼーっと考えていると金井の後ろから
友人らしき人物がやってくる。
「翔太〜?何してんだよ」
現れたのは俺とそんなに変わらない背丈の男だった。
「邪魔すんな佐伯!いま俺は貴重な時間を堪能してんだから!」
「はー?…って食堂ん時の美人さんじゃん!なに!?お前あんなので仲良くなれたのかよ!?!?」
目の前で言い合いを始める二人
ふわふわ頭の金井と
前髪を結んだ文字通りアホそうな佐伯と呼ばれた男
身長差がある分ゴールデンレトリバーとポメラニアンの吠え合いみたくなってる。
こいつどっかで…?
つか、食堂の美人さんってなんだよ
……思い出した。
こいつ、前に食堂で金井が迷惑極まりない告白を
してきた時に一緒にいたアホ二号か
なんて考えてると、また一人誰かが近づいてくる。
「あれ?二葉くん」
「小森」
爽やかな笑顔で話しかけてきたのは見知った顔だった。
「この前の課題はありがとう」
「いや、俺の方こそあの資料すげーわかりやすかった」
同じ文学部でいくつか講義が被ってることもあり
グループワークで知り合った小森
金井の友人だったのか
「え、」
「ん?」
「あぁ、あれ使えたならよかったよ」
「使えるどころかすげー助かった」
俺たちのやり取りに何故か困惑の色を見せるアホ二人
反応もタイミングもバッチリだった。
ちょっとだけ面白かった、なんて
「ちょ、小森、なんで二葉さんとそんな親しげなんだよ!?」
「いや、なんでも何もいくつか講義被ってるし」
「俺話しかけて貰えるまでちょーかかったのに!?」
そんなに日は経ってないはずだが本人的にはそうらしい
騒がしく声を荒らげる金井
俺の目の前で再び繰り広げられるコントに
帰りたいと思ったのは当然のことだと思う。
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