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「ねえねえ、伊澄くん!告白されたってほんと!?しかも男の子に!!」
ねえねえねえねえ!と興奮気味に詰寄る彼女を他所に
一つ気になる点がある。
……俺、告白してきたの男って言ったか?
「告白してきたの男なんて言いましたっけ」
「いんや?でも何となくそーなんじゃねえかなって」
なんでこの人こんな時だけ鋭いんだ。
村前さんに無視か!と軽くパンチされるが
ため息をつきたい気持ちを我慢して苦笑いしながらそれを軽く受け止める。
「友人が〜なんて切り出しで、告白されたことをあんな嫌そうにしてるってことはワケありの子かなんかだろ〜?んでもってお前が女の子相手で悩むことないはないっていう俺の名推理よ」
「……」
俺自身の事情を知られている分
否定も肯定もしずらい
「もー!店長うるさい!だからオッサンって言われるんだよー!!」
「あんだとー!」
「そこは何も言わずに察すればいいのです!それが若者なんだよ!良き聞き役なんだよ!!まったくも〜これだからオッサンは!……それでそれで!伊澄くんに告白してきた子ってどんな美人さん!?」
「お前のが突っ込んでんじゃねーか!しかも、男だって言ってんだろ〜?」
「あ!そか!じゃあどんなイケメンさん??」
俺の心配も他所に言い合いを始める二人に頭が痛くなる。
この人たちはほんとデリカシーってのをどこかに忘れて来たんじゃないのか
というか、持っているのかすら怪しい……
そういうところに助かることもあるけれど
こういう時は本当に嫌になる。
はあ、と自然と出てきたため息に目ざとく反応する二人
「え、そんなため息つくほどブサイクさんだったの?」
「あー、そりゃ断るわな」
「いや、別にあいつ顔は悪くな……」
言いかけた言葉にハッとする。
くそ、これはまずい
ここだと気が抜けていつも言わなくていい事とかが無意識に零れてしまう
「へえ〜〜〜????」
「ほぉ〜〜〜????」
にやにやにやにやと二人して気持ちが悪いほど笑みを浮かべてる。
「そーなんだそーなんだ!伊澄くんが悪くないって言うくらいだから相当イケメンだよね!なにそれやばい!紹介して!!!」
「ほーう、お前そうなのか、へえ〜??」
めんどくさい
面倒くさいことこの上ない
俺も俺だ、気を抜きすぎだ。
早くご飯だけ食べて帰ろう
「でもでも!伊澄くんくらい綺麗なら全然男同士でも気にならないんだろうねえ〜、このご時世だし!」
「……」
村前さんの言葉に肩が跳ねた。
男同士でも、気にならない?
いや、違う
それは違うだろ
『気持ち悪い』
声が響く
そう、違う
これは文学じゃない
答えがないものではなく答えは初めから出ている。
男同士なんて間違いだ、普通じゃない
普通じゃ、ない
「……?伊澄くん?」
「おい、伊澄」
努めて冷静に、そして笑顔を貼り付ける。
「………本当に、そんなんじゃないよ。男同士でもなんて、"普通"に考えてありえないよ。」
忘れてはダメだ。
普通でないことがいけないことだと、散々教えられただろ
普通以外は全ておかしくて、異常だ。
異分子は要らないってちゃんと教わった。
間違えたことを忘れるな
自分の間違えを忘れるな
その人がいれば幸せだ、なんてとんだ絵空事なのだから
好きだ、大好きだ、愛してる
そんな雑音もういらないだろ
そんなものもういらない
耳を、塞いでしまえ
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