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そんな話をして校舎に入ると
ここ暫くでよく耳にするようになった名前が聞こえる。
「おーい、翔太〜!今日暇か!?」
「あーごめんっ!今日サークルに顔出さなきゃ締められっからパス!」
「まだ暇かしか聞いてねえよ!」
ちらり、声を視線で追えば案の定
金井の姿を見つけた。
噂をすれば何とやらってやつか
「噂をすればなんとやらだね」
小森も同じことを思ったのかそういわれて素直に頷く。
少し離れた位置で騒いでいる金井と知らない奴
あいつ、どこにでも知り合いがいるな
と、
ぱちり、視線が交わった。
どうせいつものように話していた奴のことを放って駆けてくるか
大きな声で呼ばれるかだろうと少し身構える。
そうだろうと思っていた、のだが
「あーっと、俺もう行くわ!じゃな〜」
「は?おい、翔太まだ話し終わってねえよ!」
目が合ったのは間違いではないが
顔色ひとつ変えずくるりと踵を返した金井
いや、気づかなかっただけ、か?
そんな時もある、よな
もやっとしたなんともすっきりしない感覚が胸の内側を埋める。
「……?」
モヤって、なんだそれ
「へえ」
「どうした?」
胸に覚えた違和感を隠すように平然を装い
声を漏らす小森に目を向ける。
「いや、面白いなって」
「?」
何がかは理解できなかったけれど
小森が楽しそうならまあいいか
、
数日後
「あー!ふたばん!よっすよっす!」
「お、俺!用事思い出した!」
「は!?おい翔太!?!?」
「…。」
、
また数日後
「おい、」
「二葉さん!?あ、俺サークルに顔出さなきゃなんで!」
「は?あ、おい!」
「それじゃまた!!!」
気のせいだと思っていたこと確信に変わるまで
そんなに時間はかからなかった。
、
胸につかえたものはいつまで経っても収まることはなく
『俺帰らなきゃなんで!!!』
『ちょっと呼ばれてるんで!』
『おーっと、今日はちょっと急いでるって言うか…』
『ふ、ふたばさん、!!あー!忘れ物した!!!』
何日経とうが変わらない
いや、より酷くなっていく金井の態度に
苛立ちという形で俺の中で何かが膨れ上がっていた。
、
講義室に向かってる途中
今日の空はしとしとと雨を降らせていた。
教室の前でたまたま小森に会った。
なぜだかひどく久しぶりの感覚がする。
「今から講義?」
「あぁ、」
「そか。ねえ、なんかあった?」
「……いや、」
別に、と続けようとした言葉は形にはならない
代わりにというようにぐらりと揺れた視界
出会ってから、これが日常であると錯覚するほど聞いた声
そして、俺の顔を見る度に逃げられるここ一ヶ月の現在
さすがに腹が立ってきた。
なんでこんなにイライラしてるのか自分でも分からない
けれど、なにか言いたいことがあるなら直接言えって話だ。
気づいたら季節は移り替わり梅雨
毎日雨雨雨、雨、雨…
頭痛と寝不足で普段に増してイライラしてるのに
なんで他人のことでも腹を立てなくちゃいけないんだ。
俺にとって雨の時期は精神的にも体力的にも辛いものがある。
毎日のように見る悪夢に眠れない日々
そして得体の知れない苛立ちは積もるばかりで
行き場のないそれを大量の煙草で発散していた。
「顔色最悪だけど大丈夫?」
「別に、寝不足なだけ、だか、ら、」
「え、ちょっ、二葉!?」
なんだこれ
頭の中がぐるぐるぐるぐる回ってるような
目の前がチカチカと点滅する感覚
頭では倒れる、と分かっていてもそれの対処は全く浮かばない。
そーいや、最近ろくに寝てなかったな
何かをしてないと思い出してしまいそうで
ひたすらバイトに明け暮れていた。
なかなか寝付けず寝ても日が昇る前に目が覚めてしまう
雨の日は、ダメだ。
目を瞑ったらまた夢をみてしまうから
『私も懐かれて困ってたんですよ。本当に、気持ち悪い。』
俺は前に進んでる。
そう自分に言い聞かせてはいたけれど
実際は前に爺さんに言われた通りだった。
そう思い込んでいるだけだ。
本当はずっとそこに縛られて身動きなんて取れずにもがいてるだけ
あの時から前になんて、一歩も進めてない。
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