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ひねくれ者の、
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「ハル、」
「話しかけようか悩んだんだけどあんまり可愛い顔してるから」
「っ、やめろそういうの」
変なの、前だったらハルを見ただけで胸は高鳴って
痛くて苦しくて辛かったのに
今は全然平気だ。
それは、ハルがちゃんと俺の思い出になったってことなのかな
こうしてまた普通に話せると思っていなかったから
この関係は少し擽ったい…
「こんな所で何してるんだ?」
「ただの会議だよ、にしてもこんな暑いのにお前よくそんなカーディガンなんて着てられるな」
「っ、別にそんな暑くない。それを言えばハルだってスーツじゃん」
「そりゃ俺は会議だったからね」
「あっそ」
「可愛くないな〜」
「ちょっ、やめろ!」
わしゃわしゃと頭を撫でられて髪が乱れる
念入りにセットとかしていないけど今から人に会うんだぞ!?
でも、懐かしいな
昔に戻ったみたいで、また、ハルにこうやってふざけて撫でられることがあるなんて
これも全部、金井と出会わなかったらありえない事なんだよな…
そう考えると頬の熱が増す
俺の思考は全部金井に繋がるらしい
一緒にいない時でも頭の中の大半を占めるアホ
思い出すだけで気が緩む
「…ふむふむ」
「なんだよ、わざとらしい」
「いや、伊澄はほんとに恋をしてるんだね」
「っ!」
「あはは!顔真っ赤〜可愛いね」
「っ!!!うるさっ…うわっ」
恥ずかしくなってうるさい、と言おうとした途端後ろから引っ張られた
強い力に驚いて間抜けな声が漏れる
「な、に…金井か」
「……」
引っ張っていたのは金井だった
後ろから抱きすくめられる
「こんにちわ」
「どうも、」
まだ状況がよく理解出来ていない俺に対して二人は俺の頭上で挨拶を交わす
くそ、少し俺よりでかいからって…じゃなくて
「金井、ハルがいるから、やめろ」
「…」
見られているのにこんなの恥ずかしいじゃ済まない
けれど金井は緩めるどころかぎゅっと力を込めた
「…かない?」
なんか、怒ってる?
「俺の伊澄さんに何か?」
「ん?これなんか目の敵にされてる?伊澄たすけて」
「は!?」
俺の伊澄さん、という言葉に何言ってるんだ!?と赤くなるも急に話を振られて戸惑う。
とにかく、なんとかしなきゃと思い金井の腕をゆるく叩いた
「金井、とりあえず離せ」
「やだ」
「は?」
より一層強まる力に少し苦しくなる
やだってガキじゃあるまいし…
しかもここは駅近くで一通りも多い、なんだと野次馬の如く通り過ぎていく奴らに見られるのは結構こたえる
「そっか、やっぱり君が伊澄の"今の"カレシくんか」
「っ」
わざと今を強調させる言い方にまずい、と思う
ハルは高校の時から見た目と名前は爽やか教師なんて言われていたけれど、実際はそうじゃなくて
ただのイタズラ好きのガキみたいな大人だった
「おい、ハル」
「ん?」
「…(んじゃ、ねーよ…)」
本意じゃなかったとしても振った相手の今の恋人にちょっかいかけるとか相変わらず性格悪いというかなんというか
変わっていないことを喜んでいいのかなんなのか
「あー、俺一旦学校戻んなきゃだからここら辺で。またね、伊澄、金井くん」
「…なんだったんだ」
「…」
またね、なんて思ってもいないくせにうそも下手くそ
からかうだけからかって駅の中に消えてく背中を眺めた
何も言わない金井
かける言葉も見つからない俺は約束通り家まで連れていくことにした
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