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ひねくれ者の、
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「別に責める気とかそれを知ってどうにかしようとか本当に思ってないからそんな顔しないでよ、俺が翔太に怒られちゃう」
「どうして、」
「それは何に対してのどうして?」
いつもと何も変わらない様子の小森に安心する反面、不安が拭いきれない。
「逆に聞くけど、」
「っ」
ちらりと俺を見てまたあの悪戯な笑みを見せた
「あれで隠せてると思う?」
「え、」
「あーんな、デレッデレの顔の翔太とか初めて見たし。距離は近いし、二葉も前より雰囲気すっごい柔らかくなってるし!いっつも一緒にいて気づかないのなんて佐伯くらいでしょ」
「そ、うなのか」
「そーなの」
面と向かってそんなこと言われるとなんだかいたたまれない
そんなにわかりやすいのだろうか…
自身の頬をつねってみるが全くわからない。
「それで、俺は二葉の口からちゃんと聞きたいんだけど」
「…一応、こい、びと…たぶん…」
「一応?たぶん???」
恋人、と第三者に話すのなんて今までほとんどないからどもってしまうのは仕方ない。それに、今はなんていう、自信が無い。
「…」
「んまあ、そこは置いといて…あーースッキリした!」
「っ、ちょ、声でけえ」
「いやいや、ほんとあんだけ大学でイチャイチャしといてバレてないって思う方が不思議だし!俺の気苦労とか返して欲しいよ!まあ、ちゃんと知れてよかったけど!!」
「な、なんかすまん…」
小森って、こんな感じだったか?
ストレスから解放されたのか吹っ切れた顔して大きな声を出すもんだから反射的に謝ってしまう
「はあ、もういいけどね、ほんとスッキリしたし」
本当にスッキリしたのかさっきよりも清々しい顔をしている気がする
それはそれと、バレてしまっていたのならもう仕方ないとして
気になることはある
「小森は、その…」
「ん?」
「…」
気持ち悪くないのか、その言葉が口から出ない。
高校生の時、クラスメイトからの散々言われてきた言葉
俺にとって、悪夢にも見る嫌な記憶…
その一言は未だに俺を蝕んでいる、簡単に口にできるほど俺は強くない
「気持ち悪くないのかって?」
「っ、」
思っていたことを当てられて肩が揺れた訳では無い
次に来る言葉に怯えている訳でもない
ただ、せっかく小森とは仲良くなれたのに失ってしまうかも知れないのが怖いだけ。
「気持ち悪いわけないじゃん」
「え」
「まあ、さすがに驚いたけどね。みんながみんな受け入れるものでもないと思うけど俺は気にしないかな。さすがに自分が当事者になったら分からないから半端なこと言えないけど。それでも、二葉も翔太も俺の大事な友達に変わりはないよ」
賑やかな店内とは対照的に、小森はとても穏やかにそう言った。
「しかも大事な友人と友人がそういう関係で幸せなら応援する他ないじゃん?」
ニッ、っと悪戯に笑う小森を見た時
頬に温かいものが流れた
「ちょ、二葉!?」
「あ、悪い、わかんな、いけど…」
「情緒不安定かよ〜」
はは、と笑って流してくれる優しさが染みる
そうか、こういう道もあったのか
ずっと諦めていたことが報われた訳では無いけれど
またひとつ、前に進めた気がした。
こんなどこにでもあるようなファミレスで馬鹿みたいに泣くとは思わなかったけど…
「落ち着いた?」
「…悪い、」
「あーあ、これじゃほんとに俺が翔太に怒られちゃうよ」
「そうか?」
「そうなんだよ」
だんだん先程の自分がダサすぎて恥ずかしくなってきたけれど
もう、今更か…
「ってか、むしろ俺は慣れてるんだよね」
「何が?」
「男同士とかそういうの、」
「身近にいるのか?」
「身近っていうか…マリが、彼女が、腐女子なんだよな」
「あー、なるほど」
「うん…」
腐女子、か。今どきまあ珍しくもない、らしい
小森の表情から察するにその事で色々あったのだろう
「えと、なんていうか、お疲れ」
「あー、うん。まあ…ありがとう」
疲れの色を孕んだ表情に少しだけ同情した。
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