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「…お前さあ。」
(え…。なに。このまま、データ記録した後に『昼休憩行ってこい』とか熱い展開になる感じ…??)
期待する部下の胸中を知ってか知らずか。我妻は冷めた表情で、カーソルを動かす。
「ここと、ここ。まず、日付が違う。こっちは、数値。ちゃんと見ろよ。こんなん、今時新人でも間違えねぇようなミスだぞ。」
(前言撤回ィィィッ!!)
クソ上司、と本心で罵りながら、口は勝手に『アリガトウゴザイマス』とお礼を述べている。
汚いわ大人って…、落合の瞳が絶望の色を帯びる。
そんな落合を横目に鬼上司は続ける。
「…あと、今晩、俺は定時で帰るから。」
さっきも聞いたわ、とナマハゲ顔負けの憤怒面になる部下の肩を叩いてから、落合はぼそりと呟く。
「…お前、けっこう身体、筋肉ついてんじゃん。ムカつく。」
(俺はアンタの偉そうな指示に日々苛ついていますが…??)
我妻は何食わぬ表情で、デスクに戻っていく…。
「ふん。…なるほど。大筋は悪くない。だが、やっぱり詰めが甘いな。…いいだろう。今回は、俺が手を加えて上に提出してやる。感謝しろよ??」
明日にでも修正点のレクチャーをする、と言い終えて、顔を上げ…我妻は初めて気がついた。
「お前、何でそんな虫の息なんだ。」
ゼェゼェ言いながら、落合はデスク前で跪いていた。理由は簡単。定時、問答無用と言わんばかりに革鞄をデスク上に引っ張り出して、本気で帰宅しようとする上司にコピー機から吐き出された出来立てほやほやの書類を手に、全身全霊でダッシュしたからだ。
「我妻さん、定時で帰るって…。」
「はァ??」
我妻は素っ頓狂な声をあげて、小首を傾げてみせる。…心底不思議そうだ。
「そらそうだろ。仕事は慈善事業じゃない。」
(部下にくらい慈悲かけろよ、アンタは…。)
落合を見下げる視線は、冗談じゃなく氷柱を思わせる鋭さがある。
「…よくできたな、落合クン??」
「へいへい。」
(思ってもねぇことをスラスラ言わなくてもいいんですケド…。)
へたりこんでいた体勢から立ち直った落合に、上司はさらりと告げる。
「褒美に、俺と二人で飲みに行かないか。…いい店があんだよ。」
「…へ??」
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