アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
19
-
瞬間、落合は席から立ち上がる。…だがコンマ数秒早く、上司が落合の服の裾を掴んだ。
「待て。逃げるな。ステイ。」
凍てついた眼差しで命じる上司に、落合は涙目で頭を左右に振る。
「イヤです…。その話題はイヤです…。」
怯える後輩を見た我妻は、相手の服の裾をいっそう強く握り締める。落合は何事か、上司の顔色を伺おうとした。二人の視線が一瞬、絡み合う。
今にも泣き出しそうに歪んだ我妻の顔を視界に捉え、後輩は息を呑む。数秒すると、ややぎこちない動きで落合は席に戻る。我妻は安堵の表情を浮かべ、再び話し出す。
「昨日の夜、お前は俺に『好きなだけ束縛しろ』と抜かしたな。」
「は、ハイ…??何ノコトデ??」
小声で切り抜けようとした後輩の前…卓上にデンと我妻の両脚が置かれる。反動で、テーブルがブルブルと震えた。
「ひィッ!!」
縮み上がる落合に、上司は追及の手を緩めない。
「…言ったよな??」
上司の、猛禽類そっくりの双眸で睨まれ、小心者はこくこくと首を縦に振る。
「俺は、慰謝料を請求するとも宣言した。」
「…あ~。」
流れで頷きかけていた落合は、すぐさま頭を左右に振る。
「けど、あれは!!行きずりの一夜だったっていうか!!お互い、酒飲んだ後だったっていうか??いっ、いいんじゃないですかね、お互いに落ち度があったってことで!!」
微苦笑を浮かべ、丸く収めようとする部下に…我妻は冷ややかな眼差しを向ける。
「落ち度??」
「…は、はい。」
我妻が席から立ち上がり、前のめりになって俯き加減の後輩と無理矢理目を合わせようとする。落合は必死に目を背け、縮こまっていく…。
「双方合意の上でシャワーを借りて、丸腰の俺に酔っ払って襲いかかってきたのは、どこのどちらさんでしたっけ…??」
胸の内でひー、と叫びながら落合は答える。
「…俺です。」
我妻は地の底から轟くような声で続ける。
「嫌がる俺を力で押さえつけて、抱いたのはどこのどちらさんでしたっけ…??」
「…俺です。」
二の句も告げられない落合だった。
「皆まで言わせないでくれよ、落合。」
くすっと無邪気に微笑んで、鬼上司は落合に向かって片手を差し出す。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 103