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今日はやけに蒸し暑い気がする。空調に異常でもあったのか。落合が首筋をボリボリと掻き毟っていると、背中でばさりと音がした。
(…??)
振り向くと、我妻がジャケットの上着を片手にかけ、空いた手でネクタイの結び目を緩めている。暑さに憔悴しきった表情。火照った頬。とろり、と焦点のぼやけた瞳。扇情的な光景に、意図せず落合の喉仏が上下する。
ジャケット下、Yシャツから見える腰の細さ。肩の狭さ。小ぢんまりとした身体は、落合が数日前に手を出してしまったものでもあり…。
(色っぽいんだよなぁ…。)
落合の目は上司の身体が…一瞬だけ、あの日見た剥き出しの透き通った裸と重なる。認めてしまったら、最後。我妻の身体は、生々しく艶かしく部下に映ってしまう。
「…っ我妻さん!!」
落合の目に、毒だった。大勢の目を、集めたくなかった。誰にも触れさせたくない。例え、自分であっても…。無我夢中で、落合は自身のジャケットを脱いで上司に羽織らせた。落合の上着にすっぽりと覆われた相手は、やや鋭い目つきで部下を睨む。
「…んだよ。あちィ~から脱いでんだよ。上から余計なもん、着せんな。あと、デカいんだよ、お前の上着。何だ、ガタイを自慢してぇのか。俺がちっちゃい嫌味か。」
落合は上着の左右の襟を引き合わせて、譫言の如く呟く。
「我妻さん…。だめです、だめ…。み、見えちゃうじゃないですか。」
「はァ!?」
我妻は、不愉快そうに眉を寄せる。
「何言ってんだ、上着の下が裸じゃあるまいし。脱ぐぞ。」
「う、うう…でも…。」
食い下がる落合に、渋々といった体で上司が応じる。
「…わかったから。上着は外さない。…ただ、せめて俺のジャケットを着させてくれないか。」
所々上擦った声を発する上司は、いてもたってもいられないという風に小さく体を揺らす。
「…俺のジャケットじゃ、ダメなんですか??」
落合がぽつんと訊ねると、上司はきっぱりと断る。
「ダメだ。」
そわそわしている後輩は、最後まで気がつかない。…平静を装いながらも我妻の耳は、真っ赤に染まっていた。
「お前のジャケット、くせぇんだよ。」
「えええっ!!」
オフィス中に、落合の悲鳴が轟いた。間髪入れず、うるせぇっと上司の怒号が飛ぶ。
落合が周囲に『俺臭い??臭い??』と訊き回っているのを横目に、上司は次の指示を命じて、自分の席に戻っていく。
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