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(違う場合が怖ェんだよ。)
我妻は嫌々ながら、忠犬の席に目をやる。すると、やはり落合と視線がかち合った。落合は即座に顔を明るくし、ウィンクを寄越してくる。
(思い間違い…じゃ、なさそうだ。)
上司はデスクの影で、一人寂しく頭を抱えた。
数時間後。落合は逐一腕時計やパソコンの画面で時刻を確認していた。…答えは簡単である。
昼休憩になったら、さっそく我妻を食事に誘うのだ。
(そして、朝五時起きで作った俺の手料理を食べてもらう…っ!!)
デスクの下で密かに片拳を作り、落合は繰り返し頷く。…我妻ほど料理は上手ではないだろうが、真剣な気持ちは伝わるに違いない。
(酔った勢いで我妻さんと関係を持ってしまったとはいえ、漢・落合、責任はきっちりとらせてもらいます!!)
一度手をつけてしまったのだから、本人が望むなら当分は付き合って交際するかどうか確かめたいし、金銭面でも愛情面でも足りないものがあれば与えてあげたい。…あと、自分に惚れてくれたら約月五万の方を減額して頂けると大変助かる。
(…まあ、あの人が俺に絆されるなんてありはしないだろうけど。)
やらない内から結果を出すのは早いだろう。…だから連日、落合は頑張った。こっそり残業の差し入れ作戦、だとか。一緒に帰宅作戦だとか、手料理で胃とハートをがっちり掴もう作戦…だとか。
不本意ながら責任感に追われて作戦にのぞむ内、落合の中でも幾つかの発見があった。考えていたほど、鬼上司は非道な人間ではなかった。
(…というか、むしろカワイイ…なんて思い始めている自分すらいる。)
酔っ払うと実はボロボロ弱音を吐いちゃうところ。実は快楽に弱く流されやすい。ポケットに手ェ突っ込んだだけで顔を赤らめ…色恋方面になると思春期の青年を思わせる、初々しい反応をしてくるところなんか…思い出しただけで落合はくらくらしてくる。急いで、落合は両頬を軽く手で叩く。
(しゃんとしろ、俺。…相手はあの鬼上司・我妻さんなんだぞ。)
ほぅ、と一息ついていると、意識している我妻がちょうど向かいのデスク織戸の横を通り抜けていくのが目に映った。すかさず、部下は我妻を呼び止めてしまう。
「あれ、我妻さんどこに行くん…。」
皆まで聞かず、上司は不服げに鼻をふんと鳴らす。
「便所。」
色気の欠片もないドスにきいた声で返され、落合は、はあ…と無難に返す他ない。
我妻が去っていったのを確認して、前方の織戸が腕組みする。
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