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「寒い冗談か何かだと思っていたんですか。俺、他にも言ったのに。」
『俺のこと、好きになってくれませんか??』
落合は真顔で、相手は息を荒くしている。二つの繋がった手は、力の引き合いによってプルプルと小さく震えていた。
「俺、我妻さんに俺の身体を好きになってほしいわけじゃないです。」
ぽつぽつと降り始めの雨の如く、落合は続ける。
「俺、誰が相手でも抱けるってわけじゃないです。我妻さんを、我妻さんだからこそ、好きになりたい。アンタにとっちゃ詰めが甘い寝物語かもしれないけど、二人共、互いを好きになってから、身体の関係を持ちたい。…最初から、チャンスを台無しにしたのは俺です。順序を間違えたのも俺です。でも…だからこそ、思いを通わせる”次”がないなんて思わせないで欲しかった。」
「落合…。わか、った。わかったから…。」
途切れ途切れに喋る我妻に、荒んだ眼差しの部下は語る。
「金渡したら、一晩身体開くとか。そういうふしだらなの、正直興味ないです。」
落合は真っ向から上司に睨みをきかせ、一声叫ぶ。
「…体のいいセフレ探すんなら、他所でやってもらっていいですか??」
我妻は、罰が悪い表情で視線を彷徨わせる。冷めた目つきで、ところで、と落合は続けた。
「手にも感じる場所があるって、聞いたことありますか??」
過剰に肩を聳やかした我妻は焦ったように空いた手で、部下に捕らえられた片腕を取り戻そうとする。落合は至って涼しげに、上司の手を握りこむ。肉を蹂躙し、際どい線を指先ですぅーっとなぞる。指の一本一本、肌の一箇所ずつ余さず、揉んで叩いて撫でて…。落合は堪らず、気になっている男の手首を掴んで自分の唇に運んでいく。ぷっくりとした男特有の形をした指を一本ずつ、丁寧に接吻を落としていく。
「…っ」
今や、我妻の横顔に余裕はなかった。
「恋って、気持ちだけでするもんじゃないですよね。恋をすると、ちょっとした好きな人の表情の変化とか匂いとか敏感になっちゃいません??」
「し、知らね…けど。」
俺は欲張りだから、と落合は上司の手をとって、自らの頬に添わせる。相手の掌にゆっくりと頬ずりすると、落合は恥かしそうに微笑んでみせた。
「俺は欲張りだから、もちろん気持ちだけじゃ足りません。相手の五感も満足させたい。身体も心も、両方欲しい。でも、相手にも同じくらい欲しいって思ってもらいたい。んで、求められるのと同じくらい、与えて癒してあげたいです。」
落合がようやく手を離すと、上司は慌てて腕を引っ込める。
「だから、俺、決めました。我妻さんに認められる、惚れられるような立派な男になります。んで、我妻さんをいつも笑顔にしたい。」
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