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「良いんじゃない、今のところ女性の影ないらしいじゃん。織戸の好きな人。確か…。」
我妻は、天敵に出会った亀のように首を引っ込める。…そんな真似をしても、会話は耳に届いてしまう。
「…落合君、だっけ??」
ややしてから、織戸の答えが聞こえてくる。
「そうよ。」
インスタントコーヒーの缶が開けられたらしい。きゅぽん、という愛らしい音が我妻の耳に酷く醜く響いた。
「私の、好きな人。」
女性社員三人組の滞在時間は五分程度だったのに、我妻はすっかり疲れきってしまった。少しだけ、テーブル下で一休みして、そこから這い出ようとする。が、目測をあやまり、我妻は頭を派手にテーブルの角でぶつけてしまう。
「痛ッ!!」
頭を抑え、四つん這いの格好で丸くなる。生理的なものか、目尻に涙がじんわりと浮かんでくる。
(しっかりしろ、俺…。)
我妻が前を向こうとした、瞬間だった。
「…我妻さん!?」
聞き慣れた部下の声が近づいてきて、我妻の身体をテーブル下から無事救い出してくれる。
「よかった。長い間、デスクに戻っていないようだったから。心配になって、あちこち探し回っていたんですよ。」
へらっと笑う落合に、上司は複雑な心境になる。
「落合…っ」
名前を呼んで、年下の男を抱き寄せる。突如縋られた落合は、上司の豹変ぶりに驚くばかりだ。ややあって、彼は周囲に目を配り、誰も見ていないのを確認してから相手に抱擁を返す。
「…どうしたんですか、”先輩”。」
二人っきりの時限定の呼び名に、我妻は再び目を潤ませる。
「お前…。」
我妻はそこまで口にして…黙りこくる。まさか、ド直球に『同僚の織戸に好意はあるか』など聞き出せない。
「助けに来んのが、遅ぇんだよ。」
代わりに、我妻は年下の男の首筋に腕を絡め、肌を寄せる。静かに目を伏せ、我妻は心の内で密かに願う
(どうかこの先、一秒でも長く落合と一緒にいられますように…。)
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