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『…で、その部下君とは寝たの??』
『…寝てねぇよ。ついでに、最後までシてない。』
伊月に言われた通り、落合はまだ年上の男の全てを知ったわけではない。彼は元々、女性が好きなノンケなのだ。
…つまり、ここで別れを決めてしまえば、後腐れのない幕引きが出来る。
「ごめん、落合。でも、俺は…っ」
我妻は両眼を閉じて、好きな人に身体を委ねる。
常温ちょい上の、微熱の身体。服越しでもわかる、しっかりとした体躯。自分を支えてくれる、全身の筋肉。明るい声。煌めいて眩しいくらいの笑顔。ころころ変わる、少年みたいに無垢な表情。気づけば彼の全てを、我妻は手放し難くなっていた。
すすり泣きだす我妻に、年下の男はオロオロとするばかりだ。とりあえず、と両腕が動いて、おずおずと頼りなく、我妻の身体を抱き返す。我妻の背に回した手で、何度も肌を柔らかく撫でる。まるで子供をあやすような動きに、我妻は恍惚と瞳を眇めた。
「…先輩、不安がらないで。焦らしちゃうけど、俺は我妻先輩を中途半端な気持ちで抱きたくない。最初こそ間違えてしまったけど、だからこそ、これからはきちんと恋人としての段階を踏んで、両思いになりたい。俺が、我妻先輩をかけがえのない人だと思えるようになるまで…待っていて欲しい。」
そろりと頬に涙の筋が残る顔を上げた上司に、落合はニカッと輝かしい笑みを向ける。続けて、落合は屈み込み、相手との視線を合わせ、ゆっくりと告げる。
「先輩に惚れたら、俺は自力であなたをものにしてみせます。」
落合の分厚い手が、年上の男の片頬をぎこちなく拭って、綺麗にする。
「だから先輩は、俺の先でどんとかまえていてくれなきゃ、困るんです。」
落合は笑顔を保っているものの、内心では悶々と葛藤していた。
(いや、本心はそりゃ抱きたくって仕方ないですよぉぉぉ??)
予習復習総復習全てオールOKさ!!…だが、である。しかし、だ。
(我妻先輩、どう見てもいつもと違うし、言いなりになって抱いたら…。結局、この間の『俺は、やっすいアンタのセフレになんかならんですばい』宣言は一体どこいったんだって話でしょ~が!!)
落合が年上の男を抱きたいのは、あくまで恋人として、だ。思いが通じていないのに、互いがよく知りもしない内から寝る関係になりたくはない。…罪を犯した後の早朝に、落合は嫌というほど思い知らされた。双方合意して身体で繋がる関係は、体力と悦楽を引換に味わう擬似スポーツのようなものだろう。だからきっと、両方の心身が交わった時は、身体が蕩けるような夢の中の意識で思いを受け止めているような、もどかしい快感が待っている。
まっ、要は…。
(嫁入り前に手を出しちゃいけないでしょ、って話ですよ。)
できちゃった婚等の言葉が生まれている昨今、頭カチコチですね~、とにこやかに評されそうな化石化した貞操概念かもしれないが。
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