アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
66
-
サーッと急速に青ざめていく落合を横目に、鬼上司はくるりと背を向け、自らの席へと優雅な足取りで進んでいく。
「…今日は飲みに行くぞ、落合。」
一拍遅れて、ええっと背後で素っ頓狂な叫びが聞こえてくる。
我妻は上機嫌で、腕組みをして頷きを繰り返す。
「お前が大ッ好きな仕事熱心な俺の美学を聞かせてやろうじゃねぇか。耳かっぽじってよく聞けよ??講義代は…そうだな。代金お前もちで勘弁してやるよ。」
「ちょっと、我妻さん!?勘弁して下さいって、我妻さぁぁぁん!?」
同期の断末魔を聞いて、水越は頭を斜めに倒す。
「…あれ。」
気のせいか、我妻と同期の距離が近すぎる気がする。普段は面倒がってちゃらんぽらんぶっている水越だが、その実、人の機微を見抜く才能には長けている。
「おはよ、水越君。…落合君、今日も我妻さんにべったべただね~。」
あらあらと肩を竦める織戸に、水越はぎくりと身体を緊張させる。
(やっば…。)
水越は若干俯く。…隠しているつもりだろうが、水越から見れば織戸が落合に恋をしているなど一瞬で見抜ける。
「お前、さ…。」
「うん??」
織戸の眼差しが水越に向けられる。水越は前髪をかきあげ、頭を回転させる。
(何でもいい。とにかく、織戸からあのバカップル二人を引き離さねば…。)
「…今朝は一段となんかこう…。」
(あ~、もう。俺別に女の子にそこまで興味ないし、そんな急に気ィ使えったって無理だってば…。)
言いよどむ水越に、織戸は怪訝そうな表情になる。
「ええ~。ちょっと、もう何??私、水越君のいい加減なセリフを流暢に聞くほど暇じゃないのよ??」
迷った末、水越は言い切る。
「けッ、今朝は一段となんかこう、お前ブスだな!!」
「なぁ~んですってぇ~!?」
(だから、俺こういうのは下手クソなんだよ!!)
全く関係ないところで、風評被害こうむりまくりの水越であった…。
火曜日。朝一でやりたい仕事があり、落合は少し早めに会社に到着した。エレベーターのボタンを押すと、かごが届くまで鉄扉の前に佇むとする
落合は腕時計を眺め、時刻を確認する。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
66 / 103