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「もしかしなくても、期待しているでしょ??」
「わ、悪ィか。」
俺だってお前が好きなんだ、と我妻はすらっと爆弾発言を投下する。
「…今だって、職場で遠巻きに眺めるのも何の意味なく名前を呼ぶのですら心拍数上がる。」
我妻が顔を上げる。双眸が…物欲しげに潤んでいる。落合はごくりと唾をのむ。自制出来そうにない。
「我妻先輩。」
どちらともなく、額を擦り合わせる。互いに、体温と呼吸が上がるのがわかった。
落合が上司の頬に手を添えると、彼はか細い声をあげる。
「…こんなところで、お前と初めてのキスとか、嫌だからな。」
落合はゆっくりと頷いた。
「…わかっています。でも、せめて階段は上がりたい。鼻チューさせて下さい。」
「は、はなちゅー??」
上司が復唱すると一気に可愛げが出てくる。落合は笑わないように必死で顔面の筋肉を抑制する。
「鼻と鼻を擦り合わせるんです。…キスには叶いませんけど、距離がぐっと近づくんですよ。」
「ふぅん…。」
無関心な相槌を打った癖に、部下を見つめ返す我妻の目は乗り気さが隠しきれていない。
「まあ??お前がしたいんなら??してやんないこともねぇ、けど??」
「…ふふ。」
微笑みながら、落合が鼻先を近づける。我妻がギュッと目を瞑る。互いの鼻先がぺったりと引っ付く。…瞬間。
不意に鉄扉が開いた。驚いて、我妻はビクッと全身を震わせ、硬直する。かたまった我妻の後頭部を部下はやや荒く引っ掴んで、無我夢中で引き寄せていた。
(バレたら、華金に我妻さんとあう約束が帳消しになる…っ!!)
落合を急かしたのは、たった一つ。逢引の約束だった。
ごちっ、と鈍い音がして双方の額がぶつかった。額に走る鈍い痛みに、我妻は眼前がちかちかした。新たにエレベーターに乗り込もうとしていた女子社員の前で、落合は…上司の額と自分のものを擦り合わせていた。
「…我妻さん、これやっぱ熱ありますよ??」
「…。」
我妻からの返答はない。あまりの出来事に理性がぶっ飛んでしまったらしい。
「…我妻さん、朝一の会議は休んだ方がいいかもしれませんね!!」
ぽかんと口を開いている女子社員達の前で、まだかいな、とでも言うように自動の鉄扉が閉まっていく。再び動き出したエレベーターの中。腕の中でくったりしている上司を支えながら、一息つく落合に地獄の底から轟くような声が聞こえてきた。
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