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「何だ、それなら安心…。我妻さん、さっき食堂で注文の列に並んでいたのを見かけたよ。」
落合は横を通過する合間に、織戸の肩をぽんと軽く叩いて、食堂に向かっていく。
「サンキュ!!…助かった!!」
食堂に消えていく後ろ姿を見て、同期はふぅと短く息をつく。
「…落合君。いつか、我妻絡みの情報提供者としてじゃなくて、私自身を見て欲しいなぁ。」
恋する乙女の溜息は、深刻だった。
食堂に足を踏み入れた落合は、ご主人の匂いを探知する犬にも負けず劣らずの俊敏さで、鬼上司を見つけた。…彼が座るテーブルの向こう側に大学時代の友人であった赤沢が腰掛けているのも認識する。
(えっ??は??…何で、赤沢が!?)
考えかけて、落合はすぐさま思い出す。そういえば、赤沢と再会した場に偶然我妻は居合わせたのだった。
(まあ、いいや。とりあえず今は、我妻さんに書類OK貰わないと…。)
落合は二人の席に近づいていく。手前側にいる我妻は、食事をしている。トレイの上をじっくり見なくても、忠犬はわかる。…我妻が食べるのは、いつも日替わりB定食。肉より魚が好きなのだ。
赤沢は丼ものを頼んだらしいが、すでに器の上に割り箸が置かれているところからペロリと完食したのだとわかる。机を上で腕を組んで、頻りに我妻に話しかけている。
(あ~、やっぱり気になるな。我妻さん、なんで赤沢の奴と一緒にいるんだろ。)
後で聞けばいいか、と落合は考え直して、間近になった上司に声をかけようとした、刹那。
「…あ。我妻さん。ほっぺに、ご飯粒ついている。」
「え??…どこだ??」
二人がやりとりしているのが見え…そして、赤沢と我妻の距離が一気に縮まる。忠犬が声をかける間もなかった。落合には、赤沢が上司の頬に口づけたように見えた。頬に唇が触れた部分までは見えなかったが…そのくらい至近距離まで、赤沢が進んでいったのはわかった。
更に、トドメとばかりに赤沢は明るい顔で相手に告げる。
「ご馳走様、我妻さん!!」
(キスをご馳走様ってことかよぉぉぉ!?)
一瞬にして嫉妬の炎と化す落合の目の前で、意外にも上司の笑い声が聞こえてきた。
「…バカ。気にすんなって。」
(俺というものがありながら、キスを事故扱いとして不問にするんですか、我妻さぁぁぁん!?)
落合は不満でいっぱいだったが、いつまでも上司の近くに佇んでいたんじゃラチがあかない。…渋々、自分から声をかける。
「あの、我妻さん。」
落合が声をかけると…鬼上司は、まさかの出来事に…急いで席から立ち上がる。
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