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落合は微笑んで、はいと穏やかに頷いてみせた。
一方の手で顎を固定され、残った逞しい腕が店のナプキンで我妻の口元をゴシゴシと拭う。
(荒い…。)
てんで見当違いな範囲までも、力任せに拭われて、我妻は大きく眉根を寄せる。けれども、手荒いお節介もまんざらではなくて、年上の男は無自覚に薄く微笑む。
ナプキンタイムが終わったところで、落合は開いている瓶を軽く持ち上げてみせる。
「…では、二杯目といきますかっ!!」
「望むところだ。」
不敵に微笑んで、我妻も瓶に手を伸ばす。グラスにビールを注ぎながら、我妻は向かいの席にいる部下を確認する。
落合は、純粋に勝負を楽しんでいるようだ。グラスに、どんどんビールを注いでいく。彼を眺めながら、年上の男はふんと鼻を鳴らす。
(…コイツ。)
我妻が引っかかっているのは、赤沢との会話で明らかになった年下の男の恋愛遍歴だった。
『え??落合の学生時代??ん~、まあ普通??ってか、ぶっちゃけ、あれは遊び人でしたよ~。』
赤沢は、親子丼片手に熱く語る。
『落合、ああ見えて外面いいんですよぉ~。だから、無垢な女の子にすぐ好かれちゃって!!大概、女子から落合は告られて、フリーだしって押し切られて付き合うみたいな形がほとんどでしたよね~。』
赤沢は羨ましい奴め、と箸先を前歯でギリギリと噛み締める。
『えっ??落合のタイプゥ~??あ~…。なんか言っていたな。ええ~っとぉ…。確か??小柄…。160前でツインテールの女の子とかが良いって言ってなかったっけ。合コンだったか、ゼミだったか。はたまた雑誌で”この子タイプだわ”の指差しだったか。』
赤沢は箸をブンブン上下に振りながら、喋る。
『落合、あいつね。熱血漢なところあるじゃないですか。だからかな。英雄とか勇者みたいな立ち位置に憧れるらしくって。だから、やっぱり庇護欲そそる女子が良いんだと思いますよ。あくまで俺からすると、ですけどね。』
思い出して、我妻は肩を怒らせる。
(…落合の癖に遊び人とか。落合の癖に小柄な女子がタイプとか。落合の癖に英雄気取りとか。落合の癖に庇護欲そそる系清楚女子が好みとか…っ!!)
「せせせ、先輩っ!?ビール、注ぎすぎですって!!」
不穏な炎を背後で燃やす上司に、落合が焦った声をかける。…我妻は、瓶を傾け過ぎて、グラスからビールを溢れさせていた。
「我妻先輩っ!!」
落合の手が上司の瓶を持つ腕を掴み、引っ張り上げる。瓶からは酒は注がれなくなったものの、瓶から滴らせた冷たい雫が何滴か。我妻のスーツの袖、手首から腕へと伝い落ちる。
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